第29話 蒲焼き
ドンッ
突如現れた土の壁に空中にいた蛇は避ける事叶わず激突する、辺りに響く衝撃音の後地に落ちた蛇は堪らずその場でのたうつ
『オルト!今の内に攻撃しろ!!』
『わ、分かった!』
驚きその場で固まっていたオルトに指示を出す、それに素直に従ってオルトは蛇に向かい再び攻撃を仕掛ける、すると先程とは違い今回の攻撃は蛇にしっかりと効いていた、当然その理由はアストルにある
「強化魔法、それから武装魔法【
アストルが魔法を唱えるとオルトの両手に土が纏わり付く、その土の手は指先が鋭利な刃物の様になっており容易く蛇の体を切り裂いた
「ギシャァァァァ!!!」
蛇は余りの痛みに悲鳴を上げてさらに激しく暴れる、狙いを付けずただただ暴れているだけなので避けるのもままならず距離を取るオルト、すぐさまアストルは次の手を打つべく魔法を唱えだす
「
今度の魔法は蛇の居る場所を瞬時に沼に変えその体を沈める、そして体の大半が沈んだのを確認してさっきとは逆に沼を固める、体の殆どを地面に飲まれた蛇に最早成す術は無く外に出てる頭で必死に威嚇するのみ
『さぁオルト、とどめ刺しちゃって』
『うん』
オルトは躊躇なく腕を振りぬき蛇にとどめを刺した、蛇は何度か痙攣をした後動かなくなり完全に死んだことが分かる、アストルは死んだ蛇に近づき無属性魔法の【箱】を使い蛇の死体を亜空間にしまう
『この蛇の皮で装備が出来そうだな、このままだと流石に危ないしな』
『ソウビ?』
『身を守れる服の事、あぁ今考えるとトカゲを食べたの勿体なかったな、あいつの鱗とかでもいいのが出来そうなのに…まぁ緊急事態だったし仕方ないか』
オルトに装備の簡単な説明をしてから暴食で倒したトカゲを思い出して倒し方で悔しがるアストル、そんなアストルを見ながらオルトも余計な事を言わないように黙る
『はぁ、過ぎたるは及ばざるが如しって言うし仕方ない諦めるか』
そう言いながらおもむろに蛇の死体を取り出す、そして先程オルトに使った土爪を自分に使い蛇の解体を始める
『本当なら木に吊るしたり穴を掘ってその中にいらない臓物なんかを捨てて処理すれば綺麗に解体できるんだけど、こいつ地味にデカくて面倒だからこのままやっちゃう』
『カイタイ?』
『そっか、解体知らないか、普通ゴブリンてそのまま生で食うかぶつ切りにして火で炙るしか無いもんな、まぁ簡単に言えばいる物といらない物を分けて軽くするんだ』
『成程、分かった』
オルトも納得した所で解体作業を始める、まずは腹の部分を大きく裂いて中から臓物を取り出す、蛇の体から余計な物を全て取り出すと今度は器用に皮を剝いでいく、そして残った肉と骨も綺麗に分け解体作業を終える
『血抜きは魔法でチャチャっと済ます、本当に便利だよな魔法って…師匠に教わっといて良かった』
そう言って水魔法を使い蛇の肉から血を抜いていく、4~5分程で肉の中から血を全て抜き出す
『血抜き完了、腹も減ったし早速食べてみるか』
そう言って更に魔法を駆使して調理の準備をする、手頃なサイズに切り分けた蛇肉を木の枝で作った串に刺し持った土の枠に乗せる、そしてその土の枠の中に火を着け蒲焼きの様に焼いていく
『調味料が一切無いのが残念だ』
『アストル、おいら肉食うの初めてだ…』
調味料が無くただ焼くだけの調理に残念がるアストルとは対照的に生まれて初めて見る肉に、焼かれて漂う香りに口内で大量に分泌された唾液があふれ出し目を大きく開き輝かせていた
『さぁ、焼けたぞ、素材の味を生かした蛇の蒲焼きの完成』
ジュ~と言う肉汁が弾ける音が響き漂う香りが鼻孔をくすぐる、味付けを何も施していないにも関わらず自然と生唾を呑み込む
『それじゃいただきます…』
かぷっ
『う、うぅぅぅぅまぁぁぁぁいぃ!!!!』
一口食べて初めての肉の美味さに声を上げ森の中に響き渡るのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます