第17話 未知
「儂の歳か?そうじゃのう…確か…256…いや、255じゃったな!」
(本当か?何か途中でサバ読まなかった?)
「失礼じゃの、歳など誤魔化さんわそんな事よりもこの食事どうするかのう」
アストルからの懐疑的な視線を受け流し話題を変えるアガレス、アストルとしてもそこまで掘り下げる事でもないのでそのまま次の話題に移る
(せっかく作ったものなんだから食べないと勿体ないな)
「確かにそうなんじゃが、あまりに不味くて食う気がおきん…そうじゃ、お主のスキルにこの状況にぴったりな物があったじゃろ」
(この状況にぴったりなスキル?そんな物あったか?)
残った失敗作の料理をどうするか考えているとアガレスがあることに気が付く
「お主の持つ【暴食】と言うスキルじゃ」
(暴食?確かにあるけど…まさか読んで字の如くこの料理を暴食しろと?)
アガレスの言わんとする事に気が付き戦慄する
「そのスキルの複合元を思い出してみよ、悪食と喉越しじゃろ?まさに今回の問題にうってつけじゃないか」
(確かにそうだけど…多分味の解決にはならないと思うんだが…)
「そこは諦めるしかないの」
他人事だからかアガレスの返答は軽い物だった、そんな事でアストルが納得するはずもなく渋る
「これは師匠命令じゃ、スキル暴食でこの料理を食べなさい!」
(こんな時に師匠面するなよ…はぁ、仕方ない食べ物を残すよりましか…)
アガレスの発言に呆れながらも必要な事と自分に言い聞かせてスキルの発動に集中する、そしてスキルが発動するとアストルの目の前に大きな口が現れる、その口は人の物とは大きくかけ離れていて見るからに凶悪な牙がずらりと生えていた
(な、なんだこれ…)
「儂も初めて見る、もっとこう食べるスピードと量が増すだけのスキルかと思っとった」
アガレスとアストルは予想外に具現化したスキル暴食を暫く唖然と見上げていた
(で、どうすんだ?てかどうすればいい?)
先に正気に戻ったアストルがアガレスに判断を仰ぐ、この世界に来て間もないアストルは比較的この出来事への衝撃が少なかったからと言えた、逆にこの世界の住人で賢者と呼ばれる程知識が豊富なアガレスからすればまったくの未知なスキルだった、それ故久しく感じなかった知的好奇心が刺激された
「せっかくじゃ、使ってみなさい」
(いいのか?明らかに普通じゃないけど…)
そう言いながらアストルは待機状態だった暴食に食卓の上にある料理を食べるように指示を出した
バクンッ
刹那、大きな咀嚼音と共に食卓にあった料理は食卓ごと綺麗に無くなっていた、中央に大きな食べ跡を残した食卓はめきめきと音を立て崩れていった
「一応離れとって良かったわい、あのまま座っとったら儂まで食われていたな…」
床に崩れた食卓の残骸を見て背筋に冷たい物がつたう、額に汗を滲ませて何とか安堵の声を出したのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます