第12話 小屋

 現在零治はアガレスの後に続き森の中を歩いていた、鬱蒼とする森の中で自分達の進む道だけが開かれながら進む


 最初こそ驚きはしたが、すぐに持ち前の冷静さで落ち着く、そしてこの摩訶不思議な現象も目の前の好好爺の仕業なのだろうと当たりを付ける


「何じゃ、もっと驚くと思っとったんだがのぅ、以前にも見たことがあるのか?」


(いや、初めて見る、別に驚いてない訳じゃない、爺さんのする事にいちいち驚いていたら身がもたないと思っただけだ)


「ホッホッホッ、実に賢明な判断じゃな!そうじゃそうじゃ、この程度で疲れられては今日中に家に着けんからの!ホッホッホッ…まぁ、ちとつまらんが…」


 最後の部分だけ小さな声で言って歩き始める、零治は勿論最後の部分を聞こえていた、若干の不満を抱きつつもアガレスに着いていく


「そろそろじゃ、……到着、ここが儂が住む家じゃ!」


 歩き始めて数十分程でアガレスの家に到着した、そしてアガレスはじゃじゃーんとでも言うように身振り手振りで零治に自分の家を紹介する


(普通の小屋だな)


「んなッ!?」


 そう、零治の目の前にある建造物は、ごくごく普通の掘っ立て小屋であった


「おい!普通とは何じゃ!普通とは!」


(どこにでもあるような、ありふれたものであること。他と特に異なる部分を持ってはいないこと)


「誰が普通の言葉の意味を言えと言った!そうではなく、この素晴らしい儂の家をそんじょそこらの小屋と一緒にするでない!」


 アガレスは軽快なツッコミを入れながら零治に対して如何にこの小屋が素晴らしいかを懇切丁寧に説明しようとする


(あ~、お邪魔してもいいの?それともこのまま外で居なくちゃいけない?)


「!た、確かにこのまま外で話すのも何じゃ、折角じゃから小屋の中で茶でも飲みながら話そう」


 零治の言葉で出鼻を挫かれ落ち着いたアガレスは小屋で話す事を選んだ


 小屋の中は広く、様々な物があった、理科の授業で使うようなフラスコやビーカー、図書室を彷彿とさせる本棚がズラリと立ち並び、色とりどりの水晶の様な物や鉱物と思われる物等で溢れていた


(外から見た大きさと中の広さが合わないんだが?)


「空間拡張魔法を掛けておるからな、本来の大きさでは少し手狭だからの、まぁ、魔導を嗜む者としては当然の嗜み程度のものよ」


 アガレスは自慢げに長い髭を撫でながら語る、上機嫌なアガレスを他所に零治は目の前の不思議な光景に魅入っていた、零治が生きていた世界ではありえない現象


 自然と零治の頬が緩み笑みを浮かべていた、そんな零治を見てアガレスはニヤリと笑う


「どうじゃ?お主魔法を覚えてみぬか?」


(え?魔法って俺でも使えるの?)


 零治はアガレスの提案に食い付いた、予想通りの零治の反応に嬉しそうに微笑むアガレスは頷きながら零治の質問に答える


「当然じゃ、この世界に住む者ならば皆多かれ少なかれ魔法を扱う才能を有しておる、勿論才能じゃから得手不得手があり、魔法を扱うより体を動かす事の方が得意な者も居る」


(俺はこの世界の人間じゃないぞ?そもそも人ですらないみたいだし…)


「ふむ、確かにお主は人間ではない、この世界の魔物と呼ばれる種族のゴブリンと言う者じゃ、じゃがそれが却ってよかったかもしれぬ、魔物と言う種族は魔力と親和性が高い、それ故魔力を使って行使する魔法が人間よりも楽じゃろう」


 アガレスの説明で自分が何者なのか、この世界がどういうものなのか更に深く理解していく

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