第10話 名
「∌⊃∑∈∑⊃≥?∃≥∆∌€≧¢∌≥∌∆≥∈∇≧⊃」
(何て言ってるか分からない…少なくとも敵意は無さそう…)
零治はこれまで培った経験で、相手にこちらに対して敵意が無い事が分かった、しかしながら言葉が通じないので意思疎通が出来ない
(これあれだよな?魔法使い的な何か…)
零治はファンタジー知識はほぼゼロだが流石に魔法使いは知っていた、子供の頃に読んでもらった絵本にも出てきたし、有名な映画等テレビで放送されたものはよく食事時に見ていた
そんな数少ない知識で相手の服装や見た目で、この老人が魔法使いではないかと思うのだった
「∈∌≥¢≧∇€⊃…『ιθχφξφΙωφννξο』ΨΩΘΞΦΥΡ」
老人は何か呟くと今度は更に聞き取りづらい言葉を高速で唱えた、すると老人の眼前に何やら不可思議な文様が浮かび上がる、零治は警戒を緩めず更に注意深く老人を見ていた
老人の前に現れた文様が描き終わると光り輝く、そして文様の中から鎖が現れ高速で発射される、零治は当然回避しようと動く、しかし高速で迫る鎖は零治を追って動いた
(なっ!?やっば!)
当たる寸前に転げ回り避けようとしたが、それでも避けられず零治は胸を鎖で貫かれる
(や、やられた…今回の死因は何だろう…刺殺?うさぎに続き二回目か…)
零治は既に自分が死ぬと思い今回の死因を考え始めた、しかしそこで不思議に思う、痛くないのだ、貫かれた胸が全く、しかし確かに鎖は現在進行系で胸を貫いている
「少々手荒になったがこれで意思疎通が出来るじゃろ、改めて言うぞい、お主は一体何じゃ?」
零治が現状を飲み込めず硬直していると不意に老人から声が掛かる、それも零治に分かる言葉で
(な、何で話せるんだ…てか、お前は何だって本日2回目の質問なんだけど…)
突然会話出来る様になって更に驚く零治、そして聞き取れた老人の言事は先程出会った狼と同じ内容だった
「何じゃ?2回目?儂と同じ様にお主に聞いた者が居ったのか?」
(え…俺何も言ってないのに何で分かったんだ?)
老人は零治が頭の中で考えた事を何故か言い当てる事が出来た、次から次に分からない事が出てきて頭がパンク寸前な零治、それを察してか老人は零治の目を見て落ち着くように促す
「まぁまぁ、落ち着くんじゃ、お主の混乱も分かる、説明してやるから一先ず落ち着くんじゃ」
そう言われ零治は取り敢えず従って気持ちを落ち着かせて頭を整理して一先ず全ての考えを放棄した
「よしよし、分かってくれて助かるの、先ず自己紹介から始めよう、儂の名はアガレス、アガレス・フォレンドじゃ、見ての通り魔道士をしておる」
老人改めアガレスは丁寧に落ち着いた声で零治に自己紹介をする、対する零治も自己紹介しようと口を開く
「ァ…グッ…ガ……」
(な!?名前を言おうとすると何故か言えない)
何故か零治は自分の名前を言おうとすると声が全く出せなかった、そんな慌てる零治を見てアガレスがまた話し出す
「落ち着くのじゃ、お主は今自分の名を言おうとした、しかし言えなかったんじゃろ?それは魔物ゆえ仕方の無い事なのじゃ」
(え?魔物?それに仕方ないって一体…)
「いいか?魔物にとって名というのは大きな意味を持つ、名が有ると無いとでは雲泥の差が生じるほどにの、それは何故かというと、魔物は名を持つ事によってその存在を確固たる者と世界に結び付けることが出来るからじゃ、分かり易く言うとと、存在の格が上がるのじゃ、それにより魔物は更に力を付ける事が出来るのじゃ」
アガレスが説明をしてくれるが零治には全くちんぷんかんぷんであり、それと何が声が出ない事がどう結び付くのか分からず更に困惑していた
「お主はさっき自らの名を言おうとしたのじゃろ?それは自らに自らの名を名付けるのと同義じゃったと言う事じゃの、魔物にとって名が存在の格を上げる物とするならば、名付ける際にそれ相応の対価が生じる、お主はそれがなかった、だから名を言う事が出来なかったということじゃの」
そこまで言われて零治はやっと理解する、何故自分の名が言えなかったのか、現在自分は明らかに前の人間だった頃の体ではない、そうすると前の体の名はこの体の名ではない事になる、アガレスの言う名付けになる、そう思い至る
「うむ、理解してくれたのじゃな、ふむ、お主の考えてる事が事実だとするならば、お主は転生者と言う事じゃの〜、儂も長く生きとるが転生者に合うのはこれが初めてじゃ♪」
アガレスは零治が転生者だと気付くと何処か楽しそうに声を弾ませるのだった
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