第9話 老人
「グギャル?ギャルグギャギャ?(魔力?なんですかそれ?)」
何度も言うがファンタジー関係の知識がゼロである、聞くもの見るもの全てが初めての経験、そんな現代日本人として稀な零治に魔力の事など分かる筈も無かった
『ん?あぁ、ゴブリンに魔力の知識が有る訳が無いか、うむ、魔力について教えてやろう』
白銀の狼は零治からの何も分からないという反応に自己完結で納得する、狼の言葉を汲み取って考えるのであれば零治の種族のゴブリンは相当知識が低いようだ、先の話の中でもそのように言っていたので間違い無いだろう
『魔力とは何か、それはこの世界を織り成す根幹の1つだ、この世界の至る所に魔力は存在する、草や木、川や海、大地にも空にも、そして生き物の中にも当然存在する、魔力とはその者の生命力を表す物なのだ』
(生命力…そんな物が俺の中に?いや、生きてるのだからあって当然なんだが、何だろういまいち想像出来ないな)
狼からの説明では要領が得られず更に頭を悩ませる事になる零治、しかし狼の方は完璧に教えたと思っているようで、こちらを「どうだ?」というドヤ顔で見ていた、ここで分からないと言うと機嫌を損ねそうだったので取り敢えず話を合わせることにした
「グギャグ、グゴガギャルグオ?(分かりました、それでその魔力が変って?)」
『ふむ、普通魔力とは、その者が産まれた瞬間にその者の形になる、しかしお前の魔力は何やら歪に歪んでいる、まるでお前とは別の者の魔力が入っている様な、借り物のようなそんな不安定な魔力だ』
「?????」
零治は全く分からなかった、歪?不安定?借り物?身に覚えのないもの、ましてや自分で見ることも出来ないものがどのようになっているのか等分かる筈も無かった、取り敢えず分かる事は自分の魔力は普通とは違うということのみ
『ふむ、お前自身も分かっておらんようだな、まぁ気にするな、魔力の形が歪だからとて何か不都合があるわけではない、せいぜい私の様に物珍しく思うだけだろう』
「グォ、ギャルガギャル?(はぁ、それなら良かったです?)」
零治は取り敢えず納得する、これ以上聞いても分からない事は分からないからだ
『長く引き止めてすまぬな、お前はどこに行こうとしていたのだ?』
「グギャグギャ、ギャオングガァ、グルルグギャギャ(いえいえ、別に大丈夫ですよ、ちょっと水場がないか探してたところなので)」
狼から引き止めたことに対して謝罪を受けそれを許す零治、そしてどこに向かっていたのかを説明する
『何だ、水が欲しかったのか、それならそこの獣道を真っ直ぐ登っていけば湖がある、そこで喉を潤すといい』
「グギャグガァ?グルギャオン、グガグギャ(そうなんですか?教えて頂きありがとうございます、行ってみます)」
目的地を聞いた狼から的確な場所を教えて貰い水場の目処がたった零治は一安心と胸を撫で下ろす
『うむ…そうだ、これも何かの縁だ、お前に私の加護を与えよう、また会える様にな』
「グギャ?(加護?)」
最後に狼が零治に対して何かを授けるという、そして狼の体が仄かに光り始め、その光が零治に流れ始める、すると暖かさが全身に広がり零治を包む
『次合う時にお前が更に成長している事を願う』
狼が最後にそう言うと忽然と姿が消えた、後に残されたのは零治のみで、その零治も何がなんだか分からずその場に立っている事しか出来なかった
【神狼の加護を獲得しました、能力値に補正が掛かります】
【衝撃的な機会に遭遇しました、ロード地点を自動変更します】
(へ?神狼の加護?ロード地点?何の事だ?)
追い打ちを掛けるように頭に響く声に零治は更にパニックになり、その場で棒立ちになっていた
(……喉乾いた…行くか…)
それから少しして落ち着いた零治は喉の乾きに促され、教えてもらった湖に行くべく獣道を真っ直ぐ進んでいく、そして暫く進むと微かに水の音が聞こえ音を頼りに突き進んだ
(おお!!綺麗な湖だ!)
獣道を抜け開けた湖の辺に着いた零治が最初に思ったのは湖の美しさだった、日本の都会に住んでいた零治にとってこれ程澄んでいる湖を見た事が無かった、それ故の驚きだった
(うまっ!こんな美味い水初めて飲んだ!)
手に掬った水を一口飲むと、その余りの美味さに驚きの声を心の中で叫ぶ零治、そこからは喉を潤す為に湖に顔を突っ込みゴクゴクと飲んでいく
(ぷはぁ~うんめぇ〜)
ある程度喉を潤すと仰向けに寝転がり空を見る零治、頬を撫でる風が心地よく暫く零治はその場で寛ぐ
そんな零治に近付く影があった、零治は瞬時に気配に気付きその場から飛び退く、そして相手から距離を取りその姿を見ると、灰色のローブと尖り帽子を被り白く長い髭を生やした老人だった
「∌⊃∑∈∑⊃≥?∃≥∆∌€≧¢∌≥∌∆≥∈∇≧⊃」
老人が何を言ったのか零治には全く分からなかった
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