第5話 急成長
どうも皆さん、ご無沙汰しています、零治です。
只今、私は森の中に立っています。
はい、分かります。
こいつ開口一番一体何を言っているんだと御思いですね、分かります。
御説明いたしますので、今少しのご静聴をお願いします。
そう、あれは今から数時間前の事……
零治は6度目の不慮の事故から立ち直り、再度大人しくする事を決意し、ずっと動かずに我慢する
身動きをせずに我慢するというのは想像以上に辛い、それも半日以上ずっとだ、生半可な覚悟では到底なし得ない事なのだ
(つ、辛い、動きたいけど我慢しないと、また死ぬ!)
持ち前の忍耐力で何とか耐える零治、それから更に時間が経ち約1日が過ぎようとしていた、そんな零治に思わぬ出来事が起こる
「ぐぎゃ!ぐんぎゃ!?(ぐわ!な、何だ!?)」
激痛、途方も無い激痛が零治を襲ったのだ、動かない様にする事など出来るはずもなく、その場でもだえ苦しむ、零治は自身に何が起こっているのか分からない
【対象の死を確認……ロードを開始します…】
【対象の死因“ショック死”と断定…】
【対象の行動パターンを分析…行動に沿うスキルを獲得します】
【一定以上の行動抑止を確認、スキル不動を獲得します】
【一定以上の忍耐力を確認、スキル我慢を獲得します】
【一定以上の無心を確認、スキル瞑想を獲得します】
【急激な成長を確認、スキル成長促進を獲得します】
【痛みによる死を確認、スキル痛覚耐性(小)を獲得します】
【セーブデータを確認……セーブデータがありません…初期地点をロードします……】
(またか…今度はショック死?確かに、あの痛みは耐え難かった、でもそれだけで死ぬとは…)
零治は再度突き付けられる自身の脆弱性に落ち込む、しかしすぐに立ち直り今度はあの激痛に対して疑問を抱く
(この声の通りだとするなら、急激な成長、そして激痛、もしかして…成長痛か?いやいや、ありえんだろ、成長痛で死ぬって…)
導き出した推察が信じられず頭を振ってその考えを振り払う、成長痛とは成長期の子どもの足の痛みの総称として広く使われている物だ、そんな物で死ぬのはありえないと零治は考えていた
(はぁ、今考えても仕方ないか、取り敢えずまたじっと我慢するしかないよな)
そうして零治は再び時間がすぎるのをひたすら待つ、だが不思議な事に前回より辛さを感じずに居られる、そして辛さを感じない事で集中力も高まり自然に無我の境地に到達する
(ん!?また来た!)
集中していた零治に再び痛みが走る、しかし前回と異なりその痛みは軽く耐えられる程度だった
(んー、痛いには痛いがさっきよりマシだな、これがあの声が言ってた痛覚耐性ってやつか?)
零治は痛みに耐えながら思考する、死んだ後に頭に響く声、その声が言っていた事を思い出して考える
(確か一定以上だったか規定値以上だったか言ってその行動に合うスキル?を獲得したって言ってたか…スキルって言えば英単語で技能って意味だが、何かの技能を身に着けたって事でいいのか?)
スキルの意味を少し理解した零治は1つ成長した、そんな事をしていると痛みが徐々に引いていく、感覚的に約10〜20分程の痛みだった、完全に痛みが引いた零治は恐る恐る体を動かす
(うお!?何だこれ!?)
何ら苦労する事なくすんなりと立つ事が出来た、少し前までハイハイしか出来なかったのが立つ事が出来るようになったのだ、驚くなという方が無理があった
(って!俺裸!?)
いきなり普通に動けるようになった体を確認していると、現在自分が何も衣服を着ていない事に気が付いた、それだけでなく手足が以前より短く細い、身長もだいぶ縮んでいる事に更に驚く
(どうなってんだ?いや、輪廻転生を俺がしたって言うなら何もおかしく…いや、やっぱおかしいわ)
輪廻転生ならばたった1日で普通に立って歩けるようになるとかありえないと零治は考える、思案しながらも辺りを見渡し何かこの状況のヒントがないか探す
(ん?周りが見える?)
そう、零治は以前と違い薄っすらと周りが見えるようになっていた
(どうしてだ?前の時は暗すぎて周りなんて見えなかったと思うが、ん~、ん?そういえばあの声で視覚強化がどうのって言ってたような…)
零治は少し考えると思い当たる節があった、6度目の死の時いつも聞こえてくる声がそれらしい事を言っていた
(取り敢えず…パンツ探すか…)
考え事ばかりで自分が今全裸という事を失念していた零治だったが、ふと思い出し恥ずかしくなっていそいそと下着を探すのだった
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