第3話 深まる謎

 二度目の死を体験した零治はこのあり得ない現状と現実に驚き思考が一時停止する、だがそれもすぐに直り再び思案する


(一体どうなってんだ?俺は死んだんだよな?あの体から力が抜けていく感じ、自身の終わりを悟るあの生々しい感覚は絶対に夢なんかじゃない、なら一体何なんだ?)


 思案するも明確な答えを導き出せない、されど時間は過ぎてゆく、次第に先程自分が死んだ時と同じぐらいの時が経つ、するとまたあの足跡が聞こえて来る


「グギャグ!グギャ!」


 先程と全く一緒の声が響き渡る、そして先程の事を思い出し条件反射で体がビクつく、零治は恐怖で一杯になる、未知の状況、あり得ない経験、死の恐怖、それらはしっかりと零治の中にあった


【対象の死を確認……ロードを開始します…】

【対象の死因“心臓麻痺”と断定…】

【対象の行動パターンを分析…行動に沿うスキルを獲得します】

【規定値を大幅に超えた恐怖を確認、スキル恐怖耐性(小)を獲得します】

【規定値を大幅に超えたストレスを確認、スキルストレス耐性(小)を獲得します】

【セーブデータを確認……セーブデータがありません…初期地点をロードします……】


(え?死んだ?)


 零治は過度なストレスと死の恐怖で死んだ、こうなったのには理由がある、1回目の死はトラック事故による一瞬の死、自分が死んだと理解する前に死んだ、だが2度目は違う、毒によってゆっくりと確実に死へ向かう生々しさがあった、それは死を実感するのには十分過ぎるほどであった


(いや、確かに怖かったけどそれだけで!?)


 本人に自覚が無くとも死の恐怖によるストレスは確実にある、現在の零治はそのストレスに耐えるだけの強さが足りなかった、そうして混乱しているとまたあの足音が聞こえてくる


「グギャグ!グギャ!」


 またその声を聞き身を固めた、そしてまたあの生々しい毒死の記憶がフラッシュバックする、だが先程よりも気持ちが軽い


(どういうことだ?さっきと同じ状況なのにまるで違う、先程と変わった事と言うと死んだ事と何やら女性の声でスキルを獲得がどうのと言っていた事だけだが)


 零治は子供の頃から近所の道場に通っていて、中高と部活も始まり日々を鍛錬に費やしていた、他の時間も勉学やら筋力トレーニングなどに使っていて、あまり漫画や小説に触れる機会が少なかった、時々妹が部屋に押しかけて来て無理矢理読まされる事はあったがそれだけ、自分から触れることは無かった、その為この状況もいまいちよく分かっていなかった


(ん~美琴みこと(妹)が読ませて来た小説に出て来た様な、来なかった様な……分からん)


 零治はひたすら頭を巡らすが、答えが中々出て来ない、そして零治は集中し過ぎて現在の状況を忘れていた


「グッギャグ、ギャオ」


「くきゃ!?」


(うお!?忘れてた!そういやコイツが来てたんだった!)


 抱きかかえられる事で自分の置かれた状況にようやく気づく、零治は体を強張らせ身動きが取れなくなる、そしてそんな零治に先程と同じ物が突き付けられる


(これって、さっきの!?)


 零治はまたもや死のフラッシュバックを起こす、だがやはりそれもすぐに治まる、しかしタイミングが悪かった、死のフラッシュバックで硬直したのは謎の人物から謎の物体を食べさせられる時、当然口を開けずに意図せずして拒否する形になった


 人がその行動を拒否した時、その後をどのように行動するか、身動きの取れない者に対して飲食の補助をする、この時相手に飲食を拒否された場合に取る行動は2つ、その場は諦め後でもう一度試すというのが1つ、そしてもう1つは


 一般的に自分で飲食の出来ない者に対して行うのであれば前者が殆だろう、しかし時偶後者を選ぶ者もまた居る、その関係性故か、はたまた知能が低いかのどちらか、今回に限って言えば、後者であった…


 ポキッ


「くぎゅ!?」



【対象の死を確認……ロードを開始します…】

【対象の死因“他殺”と断定〔ゴブリンLv3〕による粉砕骨折を確認…】

【対象の行動パターンを分析…行動に沿うスキルを獲得します】

【規定値を大幅に超えた骨ダメージを確認、スキル骨強化(小)を獲得します】

【セーブデータを確認……セーブデータがありません…初期地点をロードします……】


 また同じ様に繰り返される機械音声、そして気付けばまた同じ様に意識を取り戻す


(一体どうなってんだぁ!)


「くるるぎゃぉー!!」


 零治の叫びは洞窟の奥へ反響するのみであった

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