第2話 二度目の死

(一体何だ今の声は…明らかに俺の声では無い…人の声ですら無かった…今迄に聞いた事の無い類の声だった)


 零治は持ち前の胆力、図太さとも言うのか、平静を保ち冷静に分析する、一体自身に何が起きているのかを


(とにかく、現状どうすることも出来ない、このまま何もせずに居ても良いのどろうか?)


 零治がどう行動すれば良いのか決めあぐねていると、何やら遠くの方から近づいて来る音が聞こえる、どうやら今は以前より耳が良くなっている様だと考える零治


「グギャグ!グギャ!」


 遠くからやって来た者は開口一番奇声を発する、先程聞いた自身の声とどことなく似ている、そんな事を考えているとそのやって来た者が零治を持ち上げる、それにはさすがの零治も驚いた、零治の身長は高校2年になって180を超えている、そんな零治をまるで赤子の様に持ち上げるのは相手が自身より圧倒的に大きい事を示す


 大きさとは単純にその者の力を示す、大きければ相手より広く間合いが取れる、大きければ相手を簡単に押し潰せる、大きければその大きさの力の乗った拳を打てると言った様に漠然としているがしっかりした差がある、その大きさに対抗するために作られたのが武術や武具等だ、だが現在零治は武器はおろか体すらまともに動かない、この状況で自分が勝てるなど短略的に考える程、零治は愚かでは無かった


(取り敢えずはなんの抵抗もせずに居よう、無駄に抵抗してこいつが何かして来たら一溜まりもない)


 大人しくその場をやり過ごそうと決める零治、すると相手は零治を床に下ろす、そして少し離れるとゴソゴソと何かを漁る音が聞こえ、またこちらに近付いて来る、一体何事かと思っていると物凄い悪臭が突き付けられる、相手はどうやらその悪臭の元を食べさせようとしている


(ちょ、待って、流石にこれは)


 零治は勿論必死に抵抗する、明らかに普通では無いそれを食せばどうなるかなど一目瞭然、だが今の無力な零治にこれを回避する事は出来ず、口の中に無理矢理突っ込まれる


「くぎゅ!?(ん!?なんだこ、れ!?)」


 口に入れた瞬間広がる悪臭、口内を粘つく何かがドロッとした液体と共に纏わりつく、零治はそれをすぐに吐き出そうとしたがそんな意志とは関係なく、どんどん奥へとやって来る、喉を通り胃にまで来てそれは起こる、全身を襲う激痛、言いようも表せない度し難い鈍痛、体が勝手に痙攣を始める


「グゥゥ(やばい!どうなってんだこれ!苦しい!)」


 最早声も出ずもがき苦しむ零治、そして徐々に体の力が抜けていく


【対象の死を確認……ロードを開始します…】

【対象の死因“食中毒”と断定…】

【対象の行動パターンを分析…行動に沿うスキルを獲得します】

【一定以上の思考を確認、スキル思考加速(小)を獲得します】

【一定以上の精神制御を確認、スキル冷静を獲得します】

【毒での死を確認、スキル毒耐性(小)を獲得します】

【規定値を大幅に超えた劣化物を食したのを確認、スキル悪食を獲得します】

【セーブデータを確認……セーブデータがありません…初期地点をロードします……】


 暗い思考の海の中、頭の中に鳴り響く機械音声、理解の及ばない出来事が零治を襲う、だが零治には何も出来ない、ただその場を漂い流れに身を任せるのみ


 ピチョン、ピチョン、ピチョン


 仄暗い洞窟の中で水滴の垂れる音を聞いて再び目が覚める零治、次第に朧気だった意識がハッキリし、先程自身に何が起きたのかを思い出す、そして唐突に理解する、自身が死んだ事を、これが夢幻ゆめまぼろしでは無い事を

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