59 境界線

 ぱたりと扉が閉められると、ネルフェットはベッドの上で自分の手のひらを見下ろしているトニアを振り返り、置いてあった椅子に座る。


「気分は大丈夫?」


 手を握ったり開いたりしているトニアの顔を窺うように優しく声をかけた。


「うん。気持ち悪いとか、そういうのも、ないよ。……ちょっと、視界があることにまだ驚いちゃうけど……」


 トニアははにかんでネルフェットを見る。


「ありがとうネルフェット。ピエレットたちの研究を、支援してくれたんでしょう? ラジオで聞いたよ」

「……俺は、何もできてないけど」


 ネルフェットは情けなく笑う。こちらを見るトニアの瞳をいつまでも見ていたい想いが彼の眼差しに滲み、トニアは胸が痒くなって少し顔を伏せた。


「そうだ。トニアに渡すものがあって……」


 ネルフェットはがさがさと内ポケットに手を伸ばし、大事にしまっていた封筒を取り出す。


「? なんだろう……」


 トニアは首を傾げ、ネルフェットから封筒を受け取った。

 文字が見えないので、顔にぶつかるすれすれまで封筒を近づけ差出元を確認する。

 書かれている文字を認識したトニアは、ふいに表情を切なげに崩す。


「試験の結果…………」


 一度自分の中でびりびりに破った夢の証明を思い、トニアは力なく封筒を持つ手を下げる。

 ネルフェットはダーチャから預かった封筒を手にして元気を失くしてしまうトニアを気遣うように封筒に手を添えた。


「開けてみて、トニア」


 結果はまだ誰も見ていない。ダーチャですら開封することを躊躇った。

 トニアは不安そうにネルフェットを見ると、涙で赤くなった目をこする。


「こわい……」


 微かにこぼれた彼女の本音。ネルフェットはトニアの恐れの正体を悟り、彼女を苦しめる恐怖を退治したくて自分の手でトニアの緊迫した指先を包み込む。


「大丈夫」

「……ネルフェット」


 トニアは近づいたネルフェットの顔がしっかりと瞳に映り、強張った表情で口角を下げた。


「わ、私……たとえ、矯正したとしても……また、何も見えなくなるかもしれない。魔法の力は、まだ分からないことが多いから……。だ、だから……結果がどうだとしても、私はもう……この夢は、諦めた方がいいのかもしれない……」


 トニアはぎゅっと指先でネルフェットの手を掴む。


「自信がないの……私……。ぬか喜びをして、また…………そんなの、耐えられない……」


 ネルフェットはトニアの切迫した静かな叫びに胸が痛んだ。彼女はこれからもずっと、魔物の石の呪いの怯えから逃れられない。完全に悪夢が過ぎ去ったと胸を張って言えないことが憎い。しかしネルフェットは彼女の本心が求めていることを知っている。


「トニア。俺、夢を見るんだ。そこは、今まで見たことないくらい緻密な細工が施された、誰もが思わず胸を躍らせるような、素晴らしい劇場。俺はその中央の通路に立って、周りで楽しそうな顔をしている人たちに向かって得意げに言うんだ。ここは、世界でも指折りの建築家が建てた劇場なんだって。俺はその人と友だちで、彼女と知り合えたことは何よりも自慢なんだって。皆が呆れるくらい言って回ってる」


 ネルフェットの夢の話に、トニアは控えめな笑い声を出す。


「夢から覚めると、俺はいつもワクワクしてて。早くその場所に立ちたいって願ってしまう。勢いよくベッドから下りるから、つい転んじゃったりしてな」

「ふふふふ」


 どんよりとした厚い雲に覆われていたトニアの心に聳え立つ山脈。雲の合間から、少しずつ太陽が姿を現し、トニアはほのかに温かい頬を緩ませた。


「トニア。これはもう、トニアの夢じゃない。トニアの道なんだ。君が見つけて、ずっと歩んできた道。自分の道を諦めないで欲しい」


 ネルフェットは彼女に蔓延っていた不安が和らいでいくのをその表情から感じ取り、同じように朗らかに笑う。


「魔法がなくとも、皆、何かの不安は抱えるものだ。俺だってそう。誰だって、完璧じゃいられない。トニア。負い目を感じる必要なんてない」

「…………うん。……ネルフェット……ありがとう……」


 トニアは蘇ってくる鼓動を隠しながら小さく頷いた。彼の指先から力を貰い、トニアは勇気を振り絞って封筒を開ける。

 中に折りたたまれている紙に目を通すトニアをネルフェットは息をのんで見守った。


「…………合格」

「え……?」

「試験……合格、だって」


 紙から顔を上げ、トニアは少し照れくさそうに笑ってネルフェットに合格通知を見せる。


「合格……? 合格だって……!?」


 ネルフェットは通知をまじまじと見た後で、ふつふつと身体の底から湧き上がる歓喜に思わず立ち上がって無駄に凛々しい声を上げた。


「うん。全部の項目で、合格点が取れてる……! これで、ライセンスは、取れた……ことになるよ」


 トニアは自分以上に喜びに舞い上がっているネルフェットを見上げてくすくすと笑った。相手が感情を爆発させていると、案外当事者でも冷静でいられるものだ。そのことがおかしくてトニアは笑顔が戻らなくなる。


「ああ……! 良かった……! 良かったなぁっ! トニア……!」


 ネルフェットは立ち上がったまま頭を抱えてトニアを礼賛した。彼の表情が少し離れてしまったのでよくは見えない。しかし嬉しさと安堵がどうしようもないくらい滲んでいるのだけは伝わってきた。

 トニアは合格通知を眺めてから、ようやく落ち着きを取り戻したのか力なく椅子に座り込んで放心状態のネルフェットに声をかける。


「私、もう迷わない。ようやくスタート地点まで辿り着いたんだから……。きっと、ううん。絶対に……。思わず皆に見上げてもらえるような建物を、建ててみせる」


 ネルフェットは覚悟を決めた彼女の柔らかくも勇敢な眼差しに、ゆっくりと頷いた。


「トニアならなれる。前例のないような、素晴らしい建築家に」

「ふふふ……ハードル、上げないでよ」


 トニアは恥ずかしそうに笑いながら合格通知を封筒にしまった。

 久しぶりに目にした封筒の色に、トニアは騒動の日に見たミハウに渡した封筒のことを思い出す。


「そういえば……ネルフェット……。騒ぎの処理とかで、忙しいよね……? 大丈夫……?」


 ラジオやダーチャが読み聞かせてくれた新聞の情報から、ソグラツィオがあの後どんな状況になっているのかはある程度把握している。けれどもっと細部の、ネルフェットの周りで起こっていることまでは知ることが出来ない。


「ああ。大丈夫だよ。まぁ、てんやわんやだけど……」


 ネルフェットは情けなく笑った後で、言葉を濁してもごもごしているトニアを見やる。

 トニアは会話の続きを待っているネルフェットをじっと見つめ、頭に沸いた疑問を口に出す。


「リリオラさんは……どうしてるの……?」


 トニアの神妙な声に、ネルフェットはぴくりと眉を動かして真剣な表情をした。


「捕まって、投獄されてるって聞いたけど……ネルフェット……は、それで大丈夫なの?」

「え……?」

「リリオラさん……石を失って、今の姿のまま、人間、って言っていいのか分からないけど……元に戻ったんだよね? あの、体質、というか……命は」


 何と言っていいのか分からなくて、トニアはしどろもどろになる。


「そうだな。永遠の命は失った。リリオラとして現れた今の彼女は本来のリリーの姿ではないだろうし、まだ魔物の化石の影響が完全に抜けたわけでもないから、彼女の本来の心が戻ったのかは分からない。すっかり侵食されていたから。けど……もう、悪魔でも魔物でもない。これから俺たちと同じように年を取っていくだろうな。ようやく、時代とともに生きられる」


 ネルフェットは今の時点で分かっていることをトニアに伝えた。トニアはそれでもちらりとした視線でネルフェットを気にかけ、深刻な顔をして俯く。


「リリオラさんは、確かに悪いことをした……んだと思う。だから、投獄も当然の処置、だと思ってる。だけど、気になるの」

「……うん?」

「あの人が、ネルフェットのことを守っていたのは……私、事実だと、思ってて……」


 トニアの言葉に、ネルフェットは自分にかけられていた悪意を跳ね除ける魔法を思い返した。

 彼女は、代えのきかない大切な駒であるネルフェットをただの道具の一つとして重宝していただけだと牢の向こうで吐き捨てるように語った。牢屋でも麗しく姿勢を正し、矢のように鋭い目をしていた彼女の姿がネルフェットの脳裏に浮かんだ。


 あの時彼女は、そう言いながらネルフェットのことを真っ直ぐに見つめていた。

 幼い頃。稀に彼女が見せた眼差しに隠した色と同じだった。

 ネルフェットは心配そうに自分を見つめるトニアに向かって、何かを惜しむように儚く微笑みかける。


「大丈夫だ。彼女は、人間として罰を受ける。しばらくは牢屋にいるだろうが……会えないわけじゃない」


 リリオラが牢から出られる日が来るとは思っていなかった。恐らく、リリオラもそれは自覚していることだ。ネルフェットは彼女自身も知らないうちに宿していた情を想い、魔物に食われる前の彼女の人生を憂いた。


「…………ネルフェット」


 トニアはリリオラがネルフェットの親代わりだったことを気にしている。ネルフェットは悲しそうな顔をしているトニアの心遣いが嬉しくて、心が熱に侵される。


「俺は今回のことでよく分かった。トニアの道が建築家なら、俺の望みは国の平穏と友好を築くことだ。国民たちの幸福を、何よりも願う。まだ……俺は頼りないけどさ。これからもっと、精進していかないと……。まぁ……悠長なこと言ってたら、父に叱られるし、あんまりゆっくりもしていられないけど」


 ネルフェットは参ったように眉を下げて笑った。


「ねぇネルフェット。私、一つだけ分からないことがあるの」

「ん? なに?」


 トニアは騒動の時、彼が舞台で言った言葉を繰り返す。


「ネルフェット、自分は縛られてもいいって、言ってたよね……? で、でも、ネルフェット……前は、自由を失いたくないって、そう、言ってたよね……? ど、どうして、そんなこと、言ったの……? リリオラさんを惑わす、嘘……?」


 ネルフェットはぱちぱちと瞬きをして自分が言ったことを思い返した。そしてすぐに、はははっ、と笑い声を上げる。


「立場や、恵まれた境遇を思えば、ある程度の閉塞感は受け入れてるつもりだ。だけど勿論、自由を求めていた。ある程度のはさ。でも、あの時の俺はもうすでに奪われてたんだよな、そういう”自由”は」

「…………へ?」


 トニアは意味が分からず首を捻る。丸い目をしているトニアをじっと見つめ、ネルフェットはこう続けた。


「もう、トニアに心は奪われちゃってるからな」


 どきりと、強い波動が胸を打ったように錯覚した。いや、錯覚じゃない。トニアは突如沸騰したように容赦なく心臓が鳴り響くのが分かり、その衝撃で硬直する。

 耳は赤く染まり、のぼせたように一気に熱が頭に上ってきた。

 幻だと閉じ込めていたあの日の彼の囁きが胸に流れ込み、トニアは恥ずかしくなって顔を逸らす。

 ネルフェットはトニアがそわそわと居心地が悪そうに目を泳がせたので、椅子をぎりぎりまでベッドに近づけて座り直した。


「トニア。…………あの時は、ちゃんと言えなかったけど……改めて、聞いて欲しいことがある」

「ね、ネルフェット……」


 トニアはシーツを握りしめ、品格を纏った彼の表情に思わず嫉妬を感じる。そんな顔をされてしまっては、目が離せなくなってしまう。


(ずるいよ…………)


 トニアは彼が見せる真摯な眼差しに負けてしまわないように、控えめに瞳を上げて上目で見た。


「あれは俺の本心だ。……トニア、俺は君のことが好きなんだ。君が世界を見ることをしなかった俺の目を開かせた。君の笑うところも、辛いからあんまり見たくはないけど……泣き顔も、ちょっと不機嫌な顔も……建物を見て、我を忘れてしまうところも、全部。トニアのすべてが好きなんだ。傍にいるだけで、これまで知らなかった幸福を、君が教えてくれるんだ」


 ネルフェットは彼女のほのかに色に染まる頬を見て、その愛おしい体温に目元を緩ませる。


「トニア。俺は君と一緒にいたい」


 トニアは彼の素直な言葉に幸福感で限界まで胸が締め付けられる。しかし彼女は砂糖のように溶けてしまう甘い眼差しを振り切るように微かに首を横に振った。


「……ネルフェット…………だ、だめ、だよ……」


 泣き出しそうな細い声。トニアは自分の手を抱きしめた。心臓が張り詰めて裂けてしまいそうだったからだ。


「ネルフェットは、王子、だよ……? いずれ、国王になるの。この国、ソグラツィオの、皆に愛される国王に……。そ、そんなネルフェットの隣に、私はいちゃいけないよ。こ、言葉だって、まだまだ全然だし……目、のことだって、あるし……建築家になりたいとか、言ってるんだよ……? そんなの……そんな我儘な人間が、王になる人の隣にいることを、受け入れてもらうなんて……む、無理、だよ…………。私だって、ネルフェットが愛する皆に、煩わしい思いを、させたく、ないし……」


 びくびくとしながら、トニアは必死に自分に言い聞かせる。

 そうだ。彼の傍に相応しい人間ではない。トニアは彼への想いに重く被せた蓋が緩んでしまわないようにきゅっと口内を噛む。


「トニア、周りのことは考えないで。言葉や視力が完璧でなくとも、トニアが自分の夢を持っていようとも、俺が支える。国民の皆にだって、君の素晴らしさを知ってもらうために、俺は自分の働きでもそれを表す。トニア……君の、君だけの気持ちを、教えて欲しい……」


 ネルフェットの声は落ち着いている。けれど心の中では、弱虫な彼が今すぐにでも逃げ出したくなるほど叫んでいる。ネルフェットは怯えている自分の心すら鬱陶しくなり、ベッドの端を握りしめた。


「…………ネルフェット……」


 彼を見上げるトニアの瞳。彼女が懸命に抑えていた蓋は、もう外れてしまったようだった。

 彼女の眼差しは、葛藤に揺すぶられながらも彼のことを真っ直ぐに見つめる。

 初めて彼女と会った時、ネルフェットは強制的に彼女に約束を押し通した。一方的な秘密の押し付けに彼女が困惑したであろうことは疑いようがない。

 秘密を守ることを強要したあの時とは違い、今度は彼女自身が選択をする番だった。トニアは答えを待っている彼の深緑色の瞳に、あの日に感じた心のざわめきを思い返す。


「わ、私…………」


 胸を抑えていた手を離し、トニアは恐る恐るネルフェットの顔に向かって手を伸ばす。彼の頬に指が振れると、トニアは表情を歪ませて大粒の涙をこぼした。


「ネルフェットのことが、すき……」


 ネルフェットの頬を指先で微かに撫で、トニアはぼろぼろになった顔で笑う。


「だいすき……ネルフェット……」


 トニアの覚悟を滲ませたくしゃくしゃの笑顔に、ネルフェットは心臓が跳ね上がってそのまま彼女のことを抱きしめる。


「トニア……。愛……あいし、て、る」


 耳元で聞こえたのは、不器用なマニトーアの言葉だった。彼女の言葉で愛を伝えたネルフェット。それが嬉しくてくすくすと笑うトニアを彼は力いっぱい抱き寄せた。


「ネルフェット、私も、愛してるよ」


 彼にちゃんと届くように、トニアは流暢な母国語で彼に愛の言葉を返す。

 ネルフェットの背中に腕を回し、ぎゅっと思いのままに彼の体温に触れる。あたたかくて、彼の高鳴っている心臓の音まで聞こえてきそうで、トニアはそのままネルフェットの胸に頭を預けた。

 素直になれたことが嬉しい。彼が同じ気持ちだったことが奇跡のよう。だけど同時に、これからの新たな不安が顔を覗かせる。

 でも今は、この場所で幸福を噛みしめていたかった。ふかふかの想いに包まれて、余韻をいつまでも手放したくない。


 トニアがネルフェットをもう一度強く抱きしめると、彼は力を抜いて、そっと彼女を身体から離す。

 はっきりと顔を認識できる位置に彼の顔がある。トニアはどき、どきと更なる緊張に包まれて彼を見上げた。

 ほのかに色香の漂う彼の瞳が近づいてきて、トニアは堪え切れずにぎゅっと瞼を閉じる。しかしその瞬間、トントン、と扉を叩く音が部屋に響いた。


「ネルフェット様ー! 長官がずっとお待ちです! もう時間押してますよ!」


 二人して扉の向こうから聞こえてくる籠った声に目を向け、ぱちぱちと瞬きをした。


「あと五分だけですよ!」


 痺れを切らしたのか、それだけ言うとドンッと扉に寄りかかる音がして声は途切れた。

 トニアはネルフェットと顔を見合わせて数秒後に互いに吹き出した。


「ネルフェット、護衛、つけたんだね」

「ああ。まったく、まだ慣れないよ」


 笑い合いながら、トニアは少し乱れた服を整えるネルフェットを名残惜しそうに見る。


「仕事、頑張ってね。私も早く、日常に戻りたいな」

「もうすぐにでも戻れるよ。あ、今日はディナーなんだっけ? 楽しんできてな」

「うん」


 トニアは部屋を出る前にネルフェットから頬にキスをされ、不意打ちをした彼を軽く恨めしそうに見た。

 ネルフェットは笑いながら手を振り、扉に手をかけ護衛に開けるからそこをどくようにと伝える。


「ネルフェット」


 トニアが彼を呼ぶと、ネルフェットはすぐに顔だけで振り返った。


「待っててね」


 にこっと笑う彼女は、何か重たいものが吹っ切れたような清涼感のある顔をしていた。


「ああ。待ち遠しいな」


 ネルフェットは照れを隠した凛々しい表情で口角を上げ、彼女の笑顔を瞳に焼き付けて扉を開ける。

 ようやく出てきたネルフェットを待ち構えていた護衛たちが安堵の気持ちからか表情を崩して彼を迎えるのが見えた。

 扉が閉まり、彼の背中も護衛たちも廊下の向こうへと消えてしまった。


 トニアはまだじんわりと緊張が滲む心が、それでもぽかぽかとしていることに気づく。

 護衛たちの立場も複雑なことだと、トニアは予想した。

 王子の仕事も把握して、会議やら何やらで相手を困らせることも彼らは防がなくてはならない。

 今回も、きっと大幅な遅刻をしてしまうと、大らかな長官の機嫌も流石に損ねる。

 まだ新たな役割でもある王子の護衛。これはまた彼らにとってはチャレンジングなことだろう。おまけにネルフェットも常時護衛がいることに慣れていないのだから。


 トニアは先ほどの護衛たちの表情が忘れられなくなる。

 目標を掲げた彼らと同じ挑戦が胸の中でうずき、彼女は待ちきれなくてたまらないのだ。

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