第24話 メキメキメッキメキ
椅子の肘掛けに頬杖をつき、足を組む様はまさに女王。
これはどういうことだ? 今日から非行に走りますという千夏からの意思表示か?
「ねぇ、ウチ、跪いてって言ったんだけど……従ってくれないの?」
千夏の選択を与えてくれてるようで有無を言わさずといった態度に俺はひざを折るしかなかった。
「偉い偉い、兄ちゃんは言うこと聞けて偉いねぇ…………でも、お昼休みの時は悪い子だったよねぇ。両手に花で本当に楽しそうだった」
「ば、馬鹿言えッ! 両手に花とはほど遠い状況だったろ! むしろその花達の両手によって傷つけられたからね? まるで楽しくなかったからね?」
「……ふぅん」
千夏は真意をはかるような目でじっと俺を見つめてくる。
がしかし俺も噓をついてるわけじゃないので、負けじと見つめ返す。
視線が交わること数秒、先に折れたのは千夏の方で、ふふッと静かに笑う。
「それじゃあウチらと鉢合う前に初鹿野さんと一緒にいたのはどう説明するの?」
「あれは雪菜の方が勝手にきて俺の隣に座ったんだよ。一緒にランチしよってな……俺は断ったんだけど聞いてくれなくて」
「……兄ちゃんは悪くないと?」
「ああ。俺は千夏――お前一筋だからな」
「――――ッ⁉」
ここしかない! 俺が想いを言葉に詰めてぶつけると、千夏は瞬時に顔を両手で覆い隠した。
「千夏? どした?」
「…………………………なんでもない」
俺が声をかけて少ししてから、千夏は手をどけた。見せる表情は隠す前と変わらず余裕に満ち溢れている。
「そっかそっか、兄ちゃんはやっぱり偉いんだねぇ…………じゃあいい子いい子してあげなきゃね」
そう言って千夏はゴロゴロと椅子を移動させ――そして、
「――へ?」
黒ニーソに包まれた足が俺の頭にポンと置かれた。
「いい子いい子~」
千夏の足が俺の髪をクシャクシャにする。
しかも、しかもだ。兄の頭に足を乗せて大胆ないい子いい子してる割には、パンティーを覗かせないようスカートをめいっぱい押さえている。まるでピュアな心を持っているギャルのよう。
「どうしたのぉ兄ちゃぁん? いきなりこんなことされて緊張で固まっちゃったぁ? ウチがこんなことするなんて思いもしなかったぁ?」
千夏の足は次第に顔へと侵略してくる。
「ほらほらぁ~、どうなのぉ~兄ちゃ~ん、感想のほどはさぁ~」
器用なことに千夏は足の親指で俺の頬をグリグリしてくる。
「……ちょっと、湿ってる」
「ひやッ⁉」
俺が言うや否や、千夏はスサっと足を引っ込め、膝を抱える形に座り直した。
が、その体勢による
「……黒と白の、ストライプか」
椅子の上で座り直すという中々に危ない行為に意識を割いていたせいで肝心な部分を疎かにしてしまい、結果スカートが役目を放棄しパンティー丸見え状態に。
「――はうぅッ⁉」
遅れて気付いた千夏は再び体勢を変える。
「………………うぅ」
椅子の上で正座している千夏の表情は俯いてしまっているせいでわからない。だが、髪の隙間からはみでている真っ赤な耳や、スカートの裾を握る手が震えているところからして盛大に恥ずかしがっているのは間違いないだろう。
女王様な千夏も良かったけど……俺はやっぱりいつもの千夏がいい。
俺はゆっくりと立ち上がり、メッキが剥がれて無防備になってしまっている千夏に近づく。
「…………兄ちゃんの、馬鹿ぁ」
くぐもった声ながらもハッキリと聞き取れた。
チチチチチ――ボッ!
セリフ、声質、口調、シチュエーション、そのどれもが芸術点高く、千夏の発言は俺のコンロをいとも簡単に点火させてしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます