第23話 雨に紛れて泣き叫びたい

「ふんッ」


「ざまあねえっすわ! ――こんな男は放っておいて行きましょ、初鹿野先輩!」


「そうだね」


「うおッ⁉」


 すっかり意気投合した雪菜と藤井さんは、最後にも一つとうずくまる俺を踏んづけてから去っていった。


 うう……なんで、俺がこんな目に…………じゃなくて――千夏はッ?


 俺としたことが雪菜と藤井さんに絡まれていたせいですっかり千夏の存在を忘れてしまっていた。


「ち、千夏……」


 その姿はすぐに見つかった。千夏は酷く冷めきった表情で俺を見下ろしている。


「……すみません。どちら様でしょうか?」


「んなッ⁉」


 千夏の他人行儀な返しが槍となって俺の心に突き刺さる。


「――千夏あああッ! 行くよおおおおッ!」


「あ、うん! 今行くッ!」


 藤井さんに呼ばれ、千夏の表情は瞬時に明るさを取り戻した。


「……続きはしないから」


 そして千夏は俺の心を砕く言葉を小声で残し、二人の後を追いかけて逝ってしまった。


 ――うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!


 雨に打たれながら叫ぶ女子高生の気持ちが、なんとなくわかった瞬間だった。


     ***


 心ここにあらずな午後を終え、放課後を迎えた。


 ――ダメだ、やっぱどうしても諦めきれないッ!


 俺の心は完全には死んでいなかった。


 続きがしたいッ! したいしたいしたいしたいッ!


 鞄を手に取り校則違反など構うものかと俺は猛ダッシュで学校を後にした。


 ――――――――――――。


「――千夏ぁッ!」


 家に帰るなり俺は千夏の名を叫ぶ。がしかし返事はなく、あるのは静寂のみだった。


「千夏ッ、どこだ千夏ッ――どこにいるんだッ!」


 リビング、キッチン、浴場、トイレ、千夏の部屋、家中ありとあらゆる場所を探すがどこにも千夏の姿が見つからない。


 もしやまだ帰ってきてないのでは? そう思いもしたが家の鍵が開いていたことから、俺は千夏が家にいない可能性は極めて薄いと結論付ける。


 ……待てよ? まだ確認してない部屋が一つあるじゃねーかッ!


 思うが早いか俺は階段を駆け上り〝自室〟へと向かった。


「――千夏ぁッ!」


「……………………」


 扉を開けた先に回転式椅子に座っている千夏の後ろ姿を見つけた。


「ど、どうして俺の部屋に――」


「とまって」


 千夏の抑揚のない声によって俺の足は制される。


「そして――ひざまずいて」


 くるりと椅子を回転させ体の前面をこっちに向けてきた千夏は、ゴミを見るような目を俺に向け、そう命じてきた。


――――――――――――

どうも深谷花です

突然ですがこの作品のタグの〝微エロ〟から微を取って〝エロ〟にしようと思います。対戦お願いします。

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