第12話 慣れた道を、珍しい組み合わせで3
あ、そうか! 千夏は雪菜を
なるほどなるほどそゆことね! 要するに俺の考えが先走り過ぎていたと。てへ、また俺の悪い癖がでちゃった!
…………でも、それなら尚のこと、「いません」の一点張りで良かったんじゃ。
「え、どんな子どんな子? 名前教えてよ!」
「名前はさすがに…………けどそうですね、頭が良くて運動神経抜群でリーダーシップがあって、とても素敵な人です」
あれれ? おかしいぞ? まったく嘘ついてるように見えないんだけど。恋している女の子発言にしか聞こえないんんだけど。頭良くて運動神経抜群でリーダーシップあるってまるで俺と違うんだけどッ!
「きゃーッ! なにそれもうぞっこんじゃないのそれぇ! 青春してるな~このこの!」
「やかましいです。もう少し声量おとしてください」
「照れない照れない! それで、キッカケはなんだったの?」
「大したことじゃないです。席が隣で話していくうちに段々と……って感じで」
「へぇ、隣の席の子なんだぁ」
「あ――」
「どんな子か見に行っちゃおうかなぁ」
「や、やめてくださいッ! ていうか、ほんと……忘れてくださいよ」
さっきまでの気まずさはどこへやら、千夏と雪菜は好きな人の話で盛り上がっている。
はいはい千夏の隣の席のヤツね……よし! 今からそいつをぶっ〇しに行こいうかッ!
たった今、俺は殺意の波動に目覚めた。
「え~そんな簡単に忘れられないよ――って顔こわッ⁉」
俺の顔を二度見してきた雪菜が驚きの声を上げた。
「千夏……どうしてそのことを俺に言ってくれなかったんだ?」
「いや、言わんでしょ普通」
千夏の代わりに雪菜が答えた。彼女は『なに言ってんだコイツ』と蔑むような視線を俺に向けている。
「どうしてッ⁉ 俺達は兄妹なんだぞ!」
「だからだよ。兄妹で恋バナするなんて変でしょ?」
「それじゃあ男と女としてならどうだッ! これなら普通だろ?」
「そりゃそうだけど……だとしても一成に言う必要なくない?」
「必要ならあるッ!」
「ふぅん? 言ってみ?」
「――俺は千夏を愛しているし、千夏も俺を愛してくれてるはずだから」
躊躇うことなく俺は言い放った。
しばらく目をパチクリさせていた雪菜はやがて盛大な溜息をついた後、俺の右手首をそっと掴んできた。
「どうやら変なのは一成の方だったみたいね。今日は学校休んで安静にしてた方がいい」
「……離してくれ」
「ダメ。正直言って今の一成、目も当てられないくらいおかしいからね? 落ち着いたらちゃんとお医者さんに
「――HANASEッ‼」
俺は手首を掴む雪菜の手を振り解いて千夏の元に駆け寄る。
「気になっている男がいるってのは……ほんとか?」
「……………………」
「俺の気持ちを……
「……………………」
「――ちょっと、なにわけわかんないこと言ってんの一成! 千夏ちゃんが迷惑してるでしょ?」
雪菜の言葉を無視して俺は続ける。
「〝愛している〟のは、俺だけだったのか?」
「……………………」
千夏はゆっくりと視線を移し、そして交えてきた。
「ごめん千夏ちゃん! やっぱ今日の一成かなりおかしいから家に帰そ――」
「初鹿野さんは黙っててくれませんか?」
「え……」
「ここから先は私達の問題なので」
「で、でも……」
「はぁ……部外者にいてほしくないって言ってるんです。それくらいのこと、言われなくてもわかってくださいよ」
そう冷たく突き放すように言った千夏。その言葉の鋭さはまさに研ぎたてピカピカの包丁。雪菜には同情する。
「すまん雪菜。先に行っててくれ」
だから俺は傷口を広げないように優しさを意識して言った。
「……うん、わかった」
力ない声で答えた雪菜は、俺達に背を向けトボトボと歩いて行った。
「お疲れ様でした……初鹿野さん」
そんな雪菜の後ろ姿を見てなにを思ったのか、千夏は
千夏の浮かべる小悪魔のような笑みは非常にエロクティカマグナムで――ついつい俺の〝ビッグマグナム〟から白い弾を射出したくなってしまった。当然、なっただけでやりはしないが。
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