第28話 JK×報酬×報酬


 絶対ケイはかく乱持ってると思ってるPN-2です


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 私はこれまでの経緯を話した。


 私が異世界人である事、マリィがハイエルフだと言う事も含めて。


 アリアンヌさんとは途中でシンシアの乱入があって話せてないから、今度伝えよう。



「お姉様は異世界人でしたのね……それならはあの実力は納得ですわ!」



 実力、というより、あれはルナイトの力だから個人的には引っかかるところがあるんだけどね。



「確かに。それにアリアンヌ殿の言う通り、悪人は腐るほどいる。君達には危険が付きまとう事になるだろうな……うむ! 王国一の武を誇る我ら『レイムーロ家』も君達の後ろ盾となろう!」



 うんうんと顎髭を擦って話しを聞いていたレオナルドさんが胸ドンと叩き、承諾してくれた。


 辺境伯といえば、確か侯爵と同じ位の貴族だった筈。そんな大貴族が味方になってくれるのは心強い。流石に王家なんかが何か言ってきた時はどうなるか分かんないけど……



「たとえ王家が手を出して来ようとも我々が盾となり君達を護ると誓おう!!」



 えぇぇぇ!?


 いやいや、貴方アルカンシエル王国の貴族でしょ!? そんな簡単に……レベッカさんとシンシアもめちゃくちゃ頷いてるし、大丈夫なの……!?


 マリィはよく分かっていないのか狼狽える私の服を摘みながらこてんっと首を傾げている。


 ああ、マリィを見てたら落ち着いてきた。我ながらちょろい。



「まぁ、現王も王太子も聡明な方々だ。そんな事は起こりはせんがな!」



 大口でガハハハと笑うレオナルドさん。王様達は信頼できる人達のようだ。だからそんな事を言えるのか。でも上が良い人なら安心できるかな?



「それで、他には何かありませんか?」



 ほ、他に? 後ろ盾になってくれるだけでもよかったんだけど……そうだ。



「私達、全然知識というか常識を知らないのでそういった事を教えて貰えると嬉しいです」


「なるほど……貴女達の身の上を考えるとそれは必要ですね。分かりました、そちらの手配はお任せ下さい」



 これもかなり有り難い。この報酬の話しだって金銭価値が分からないから悩んでるんだし、何より世界の事を知らないとどこで変な事に巻き込まれるか分からないからね。



「ありがとうございます」


「気にする事はない! そういう事なら金銭の話しを続けても困惑するだけだろう。その辺りは我々に任せてもらっても大丈夫かな?」



 やっぱりそれも貰えるんだ。



「はい。お願いします」


「うむ。では堅苦しい話しはここまでにしようか。実はいくつかは君たちに贈る物が決まっているのだ。付いて来て貰えるかな?」


「?」



 はてなマークを浮かべる私とマリィは案内されるがまま馬車に乗り込み移動する。




 ☆





「ここは……?」



 馬車に揺られて数分後、私達はとある場所で降りた。


 そこにはレイムーロ邸には及ばないが屋敷というには差し障りない建築物があった。



「あのレオナルド様、ここは?」


「ここは数ヶ月前まで商人が住んでいた屋敷だ。家主が商人を引退し故郷帰ることになった際に買い取っていたのだ」



 ほえー。こんな大きな屋敷に住んでたって事は結構稼いでいたんだろうな。


 庭はちょっとした鍛錬やBBQをするには充分過ぎる広さがあるし、しっかりと塀で囲まれているから外から見られるような心配もない。


 どうしてそんな所に? なんていう程私はバカじゃない。……一応確認してみよう。



「もしかして、何ですが……このお屋敷を私達になんて言います?」


「ふふ、察しがいいですわね」


「ああ! この屋敷が君たちに『贈る物』だ!!」



 ま、マジだった!? これは素直に嬉しい。レイムーロに来る道中、毎夜『転移B子』で家に戻るの結構面倒くさかったんだよね。


 短距離転移→完了→短距離転移→完了→短距離転移→完了→……という工程が必要だからね。


 宿に泊まるのも冒険者っぽくて有りかなぁと思ってたけど一晩泊まって分かった。



 無しです!



 別に悪い宿だった訳じゃない。ご飯も美味しかったし──マリィが気に入ったから再びハンバーグを食べた──お風呂もあるし清潔な宿ではあった。その辺りをアリアンヌさんにお願いして取ってもらった高ランクの宿だったからね。



 ただ……微妙ーーに壁が薄かったんだ。



 隣の音がホントに微妙ーーに漏れてるのよ。大きめな笑い声とかいびきとかが。


 この微妙に漏れてるせいでマリィとイチャイチャ(意味深)出来なかったし、逆にいびきが気になって寝付きが悪かった。


 もう聞こえるなら聞こえてくれた方が個人的には助かる。お父さんもいびきしてたし。


 神経質だと笑わば笑えぃ!


 とにかく高ランクの宿でこれなら、森の家に戻ろうと思っていたから渡りに船である。



 私は感謝の気持ちを三人に伝える。



「喜んで貰えて何よりだ。早速中を案内しよう」



 私達は屋敷を案内してもらった。屋敷は二階建てで一階にはリビングにキッチン、お風呂場、客室などがあり、二階に大きな個室が一つと同じ間取りの個室が六部屋もあった。


 家具は当時の物が残っており、そのまま使っていいそうだ。



「ほ、ホントにこんな立派なお屋敷頂いてもいいんですか……?」


「むしろ貰ってくれないと困るな。俺たちの気持ちもだが、この街を拠点にしてもらえれば君たちの後ろ盾がレイムーロ家である信憑性も高まるからな」



 そういう狙いもあるのか。


 それなら遠慮するの必要はないか。



「ありがたく使わせて頂きます」






 一通り各部屋の説明を終えたレイムーロ夫妻は馬車に乗って帰宅された。屋敷を出る前に、先立つ物が必要だろうと言って袋にパンパンに詰まった金貨を貰った。これ何枚あんのよ。


 アリアンヌさんからの報酬もまだ貰ってなかったからめちゃくちゃ助かるんだけど。流石に金銭価値分かんなくても、すっごい大金なのはわかる。


 私は金貨を異空庫にしまい、リビングのソファで一息つく。



 さて残った問題を片付けるか……。



「それで、あなたは何をやってんの?」



 シンシアが残っているんのだ。


 家が近いからちょっと残って帰るとかならまだいいんだけど、シンシアはまた『土下座』をしてるから対応せざるを得ない。



「わたくしを貴女のにして欲しいのですわ!」



 ……なんて?



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