第27話 JK×呪い×顛末


 ちょこちょこ誤字脱字などの修正で更新していますが、中身に変更はありません。


 大きな変更の時は改めてお伝えしますです!


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「我が妻、レベッカが数週間前に『呪い』をかけられたのだ」



 呪い。聞き間違えじゃなかったのか……やっぱりあるんだ。


 日本でも幽霊とか呪いとか、よくテレビでやっていたけど実在したかは分からない。



「【闇属性】に『衰弱化』という魔法がある。そこまで強力な魔法ではなく、疲れやすくなる程度の魔法なのだが、レベッカがかけられたのはそれとは異なる強力な呪いだったのだ」



 呪いは霊的な物ではなく、れっきとした魔法。通常であれば神官や回復術師の光魔法で解除できる筈だったが、できなかったとの事。



 その呪いは『衰弱化』の超強化版のような効果らしい。ニ日で立てなくなり、四日で寝たきりに、一週間で目を覚まさなくなり、昏睡状態になっていたらしい。



「呪いをかけた人物から文が届いたのはその頃だ。呪いを解いて欲しくば、爵位を返上しろとな……私は妻を愛している。だがそれと同じようにこの街を、領民を愛している。このような要求を飲む訳には行かぬ。だからあらゆる手を使って呪いを解こうと行動したのだ」


「その一つがわたくしが『神樹の森』で『月涙花』を探すということでしたの」



 なるほど。


 私の世界でもよく聞くテロリストの要求には応えない、ていうのと同じか。でもだからと言って実の娘をそんな危険な場所に……最悪奥さんも娘も無くすとこだったんだぞ?



「む、無論、俺も反対した。しかしシアの言う分も理解できた。見て見ぬ振りはできないとな」



 私が険しい表情をしていたのを察したのか言葉を付け加えたレオナルドさん。


 まぁ、言いたい事は分かるけど。



「……それで、呪いの事を公表しなかった理由は何なんです? 私達みたいな人がいたかもしれないのに」


「そう、君達みたいな人がいたかもしれないように他国の間者や敵対組織の組員がいた可能性もあったのだ。他にも呪いが解ける手立てが見つかった時にどんな事をしてくるか分からなかったからな……」



 確かにそうか……呪いなんて手段を使ってくるような奴らだ。こういう政治的? な話しは私みたいなJKには分からない世界だ。



「すみません、何も知らないのに偉そうに……」


「いやいや、君が言っている事は間違いではない。話を続けよう。我々はレベッカの呪いを解く方法と共に犯人探しを行っていた。呪いを掛けた張本人は見つからなかったが『依頼』をした人物はすぐに見つかった。隣街の領主の息子が黒幕だったのだ」


「隣街って事は……」


「はい。同じ国の貴族に、お母様は呪いをかけられたのですわ……!」



 マジか……異世界怖すぎでしょ。アリアンヌさん達も言ってたけど、ホント悪人なんて腐るほどいるんだな。



「そ、それでその人はどうなったのですか……!?」


「心配しなくても大丈夫ですよ。その息子はすでに騎士団に拘束されていますので」



 レベッカさんの身を案じるように眉をひそめるマリィ。レベッカさんはそんなマリィを安心させるように優しく返答する。


 マリィはホッと息を吐き笑顔をレベッカに向ける。


 その息子とやらは数ヶ月前に起きた『魔物の氾濫スタンピード』でレオナルドさんに手柄を奪われたのを逆恨みし、今回の騒動を起こしたそうだ。


 家督を弟に奪われそうだったから手柄を欲していたとかなんとか。


 てかその情報を一日も経たずに聞き出すって騎士団ヤバいな。悪い事はしないようにしよう。



「後は犯人から呪い解く方法を聞き出すだけの所に君達が『月涙花』を譲ってくれた、という訳だ!」


「……結局、犯人にも解き方は分からないらしく、貴女方がいなければ私は助からなかったでしょう」


 解き方を知っていそうな闇属性使いは報酬を渡してそれっきりとの事。


 アルカンシエル国としても放置できるような人物ではないので捜査を続けると決まったみたいだ。



「──事のあらましはこんなところだ」



 話し終えたレオナルドさんは冷えた紅茶を豪快に飲み干し一息つく。


 話しには上がらなかったが『月涙花』から精製された回復薬は最上級を超えていて、超級に分類されるらしい。


 呪いを解くだけではなく、レベッカさんが寝たきりで失った体力や筋力まで元通りになった程の効果を持っていたのは嬉しい誤算だったようだ。


 こうして目の前でにこやかに微笑む彼女が何よりの証拠だ。



「さて、説明も終わったところで報酬の話しに戻ろうか。何か欲しいものはないか? 金でも魔道具でも、何ならそれなりの地位を用意してもいいぞ?」


「そ、そう言われても……」



 お金……はあるに越した事はないから貰えるならありがたいけど、この世界の金銭価値がわからないし、アイテムとかは自分で作れるしなぁ。


 地位なんて面倒くさそうなのはまっぴら御免だ。私はマリィと仲良くほのぼのとイチャイチャしながら生活したいんだ!


 マリィ……あ、そうか。



「一ついいですか?」


「おお! いいぞ、言ってみなさい!」


「マリィ、『マリィの事』話しても大丈夫?」



 私はマリィにそう告げる。



「セツナ様がそう決めたのならマリィは問題ないのです」


「ありがとう。ただ、私だって間違える事はいくらでもあるから、その時はちゃんと止めてよね?」


「はいです! セツナ様が失敗した時は『お尻ペンペン』でお仕置きするので大丈夫なのです!」



 ちょーーー! マリィ、ここでその話は!?



「フハハハハハハハ!! これは一本取られたようだなセツナ殿?」


「え、ええ、そのようみたいですね、は、ははは……」



 よ、よかったー! やっぱりこの事で怒られる事はなさそうだ。それはそれでどうかとも思うけど気にしないでおこう。



「はふぅん……♡」



 何でシンシアは顔を赤らめてるの? ちょっと今はやめて、掘り返さないで!



「それで、君の願いは何だね?」



 レオナルドさんに促され、私はレオナルドさんの方を向き直し口を開く。



「──私達の事、護ってくれませんか?」


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