第25話 JK×回想×〇〇様
「でっか……」
「ですぅ……」
模擬戦の翌日、私とマリィはとある豪邸の前に来ていた。
その豪邸はこの城塞都市レイムーロの領主であり、シンシアの実家である『レイムーロ辺境伯』の家である。
何でこんな事になったのか。昨夜、アリアンヌさんに用意してもらった宿でマリィに聞いていた。
──事は模擬戦終了直後に遡る。
「……凄まじい戦闘力だったな」
「ふふーん。ルナイトになったセツナ様は最強なのです! まだルナイトよりも最強がありますが秘密なのです」
「ほぉ、そうなのか? いつか見れるのを楽しみにしておこう」
模擬戦終了のコールの後、アリアンヌさんが呟くとすかさずマリィが反応した。
小さな胸を張って私の事を自慢したみたい。カワイイ。
「ふふ、そうですね。戦闘前にある程度聞いていたとはいえ、想像以上でした。【創造魔法】の評価を改める必要がありますね」
【創造魔法】は元々この世界にも持っていた人はいたらしいが、大した物は創れなかったそうだ。おそらく魔力量と想像力の差が関係しているのだろう。
それに比べ私には尋常ならざる魔力と日本のオタク知識があるからね。
「ん? セツナ君とシンシア嬢が何か話しているようだな」
「そのようですね……な、シンシア様……そこまでしても『神樹の森』に?」
「ああ、一体何故……っセツナ、くん!?」
シンシアが問題発言をして私がブチ切れた時だ。シンシアの声はここまで届いていたみたいだ。
──バチィィン!
「な、何をやっているんだ!?」
「え、っと、お尻を叩いているようですね、早く止めに行きましょう」
「その必要はございません」
「ふぇ!?」
三人の前に突然一人の女性が現れた。
メイド服を着たジト目無表情の女性だ。髪の毛は暗い青色でショートカット、胸も大きかったらしい。
「お初にお目にかかります。私はレイムーロ家に仕えるメイドのシャッテと申します」
「レイムーロ家のメイドがなぜこんな所に……それにアレを止めなくていいのか?」
「まず後者についてですが、アレは馬鹿げた事を言ったお嬢様の為になさっている事なので。……それにきっとお嬢様は悦んでいるでしょうから」
観覧席にまで届く引っ叩く音とシンシアの悲鳴、というか
「……なんか、漏らしたみたいだぞ?」
「それはいいですね。また私のコレクション増えるので有り難い限りです」
「そ、そうか……」
アリアンヌさんはこの話をこれ以上するのはやめて口を噤む。代わりにエレンが話を続けた。
「……それでここに来た理由はお答えいただけるので? この部屋は立入禁止なのですが」
「勿論、その為に参りましたので。結論から申しますとお嬢様は『月涙花』を探しておりました」
「『月涙花』……です?」
「はい。何故探しているのかはまだお伝えできませんが『神樹の森』の許可証を求めていたのはその為です」
『月涙花』は希少な薬草である『月命草』が開花した物でより伝説の花らしい。市場には出回っておらず『神樹の森』に自生している情報だけがあるようだ。
「あ、あの……」
「なるほど……確かに『月涙花』を求めるなら『神樹の森』を探すしか手がないか」
「はい。『月涙花』を探している事を公にできなかった為、冒険者ランクの高いお嬢様が『神樹の森』にどうにか入れないかギルドマスター様にお願いしていた次第です」
「あの、アリアンヌさま……!」
「そうだったんですね。しかし例えシンシア様に許可を出したとしても見つけられるか……」
「はい……この度公表できる運びになったので許可証を持つ冒険者に依頼出来ないものかと」
「依頼は可能だ。だが見つけられるかは別問題……マリィ君どうした?」
三人の間で両手を上げて存在をアピールしていた。両手を上げる事で何とか三人の視線に入ったみたい。
「持ってるです!!」
「ん? 持っているって、何をですか?」
「『月涙花』です! マリィ達、『月命草』も『月涙花』も持っているのです!!」
静寂が訪れる。聞こえるのはお尻を叩く音とシンシアの悲鳴だけ。だがそれは一瞬の事でエレンさんが最初に反応を示した。
「伝説の花を持っている……いえ、貴女方の事を思い返せば何もおかしくはありませんね」
「あ、あぁ……」
「し、失礼ですが、それをお譲りして頂くことは可能でしょうか!? いくらでもお支払い致します!!」
アリアンヌさんとエレンさんは納得し、シャッテさんは元の無表情とは打って変わって動揺しつつもマリィに詰め寄る。
「え、えっとセツナ様に聞いてみないとマリィでは……」
「では確認をお願い致します! 私はこの事をレイムーロ家に伝えに行きますので後のことはお嬢様とお話して頂けますか?」
「わ、分かったのです!」
──という事があったらしい。
それで『月涙花』を提供してくれた私達にお礼がしたいと、使いの人が朝一で宿にやってきたのだ。
「とりあえず『月涙花』を一輪しか渡して無かったけどよかったのかな?」
「あの後何も言って来られなかったから大丈夫なのですよ」
「そうだね」
話している間に到着した。門の前には噂のジト目メイドとシンシアが二人で出迎えてくれた。
「お待ちしておりましたわ『お姉様』♡」
……なんて?
シンシアの顔はまるで熟れた林檎のように真っ赤になっていた。
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『スパ○ボ30』が楽しみ過ぎて情緒不安定な、私です。
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