第20話 JK×エルフ×冒険者
「け、結局【鑑定】じゃないですか……」
叫び声は心の中だけに留め、至って冷静に反応する。
「取り繕ってもさっき叫び声が漏れていたぞ?」
マジで?
「はいです!」
マジだった!
この街に来て私テンションおかしいぞ。クールな私に戻れ、そ~クール。
「まぁ、答えはエレンが言った通り、彼女の【鑑定】で見たからだ。エレンを迎えに行かせたのもそれが理由だな」
「な、なるほど……」
「加えて説明しますと、【鑑定】の事を引っ張ったのは貴女方に危機感を持って欲しいと考えたからです」
「危機感です?」
「ああ。【鑑定】も珍しい固有魔法だが、デカい組織には必ず一人は使い手がいると言ってもいい。いなかったとしても【鑑定】の魔道具なんてものもあるからな」
「冒険者ギルドに関して言えば、各支部に簡易的な装置は必ず置いてありますからね」
言われてみればその通りだ。私自身、自分のステータスを確認したのもチヒロさんの家にあった魔道具を使ったのが最初だ。
一応警戒していたつもりだっけど、用心が足りなかった。そのせいでマリィに余計な不安を与えてしまった。
「【鑑定】を無闇矢鱈に使うのは失礼だ! なんていう方々もおりますが、【鑑定】は私達にとっては一番の武器なのです。使わない選択肢はありません」
私が【創造魔法】を戦闘に利用するのと同じだ。エレンさんにとって【鑑定】は攻撃なんだ。
マリィの為にもしっかりと対策をとろう。
ステータスを偽造する装備とか鑑定を阻害する装備……は逆に怪しまれるかな?
「ご忠告ありがとうございます。でも、なんでそんな事まで教えてくれるんです?」
ずっと気になっていた。ついさっき出会ったばかりの私達になぜここまで良くしてくれるのか。
単なる親切心と言われても……まぁ納得できる事はできる。
これまでの言動だけでも彼女達が良い人だと判断するのに十分過ぎるから。
「ふむ……下手に引き延ばすとまた誤解をさせてしまうか」
「そうですね。もう少しセツナ様をからかいたかったですが……」
ナンテ? ハッキリとは聞こえなかったけどろくでもない事を言ってそうな気がするんだけど?
「相変わらずのSっ気だな……さて、理由だが勿論、親・切・心が第一だが、狙いはある」
エレンさんSなのか。マリィと気が合いそうだからあまり近づかないように言っておこう。
アリアンヌさんは親切心を強調しつつ指を二本立てる。その内の中指を畳み人指し指を残して説明を続ける。
「一つは……」
──ゴクリと自分の唾を飲み込む音が響く。
「スカウトだ」
「……スカウト?」
「そう。なんと言っても異世界人とハイエルフだ。そんな貴重な人材を持ち、その上で君達が活躍してくれればレイムーロ支部の評価はうなぎ登り! 中央でふんぞり返っているジジイ共に一泡吹かせる事が出来るという訳さ!」
めちゃくちゃ俗物的な考えじゃん!! 緊張して損した。
両手を広げ力説している横でエレンさんもうんうんと頷いている。
「どうかな? 冒険者になってくれればレイムーロ支部マスターの名で君達を守る事も出来るし、現金な事を言えば、君達が『神樹の森』を越える来れる程の実力ならば大金を稼ぐ事も容易なはずだ」
確かに何かしらお金を稼ぐ方法を見つける必要はあった。きっと『冒険者』と言うものがあるだろうからと、選択肢に入れていた。
それにレイムーロ支部、というよりアリアンヌさんが後ろ盾になってくれるなら安心もできる。
……できるよね?
マリィはどう思うかとそちらの方を見ると、マリィは「冒険者……!」と目を輝かせながら何度も呟いている。
「ふぅ……分かりました。その話に乗らせて貰います」
「おお! それならば早速登録『ただし!』む?」
「条件があります。表に出すのは私が異世界人ということだけにしてください。マリィはハイエルフではなく、エルフで通してください」
「セツナ様……!?」
これだけは譲れない。少なくとも今は。
マリィは何か抱えている事がある。それが何なのか私には分からない。解決出来る事なのかすらも。
だから私はマリィを守る事を貫くだけだ。
「セツナ様……ありがとうなのです」
「どういたしまして。その代わり、今日の夜は期待しちゃうよ?」
私の言葉にマリィは真っ赤になり俯いてしまう。しかし僅かに頷くのを私は見逃さなかったぞ!
ふふふ、夜が楽しみだ。
私達が夜にナニをしているのか、わざわざ言う必要はないだろう。
「……仲が良いとは思ったが、そういう関係だったのか」
「はい。だからマリィには手を出さないでくださいね?」
「ああ、分かってるよ。条件もこちらとしては問題ないなエレン?」
「はいマスター。それでは早速お二人の冒険者登録を……」
──ドタドタドタドタ!!
エレンさん声を掻き消す程大きな足音が聞こえてきた。
「はぁ〜……またあの娘か」
「そうでしょう。受付を突破してここまで来ようとするのは彼女くらいです」
どうやら女の人がこちら向かって来ているらしい。二人の反応を見るに、歓迎できる人物ではないようだけど。
──バタァァン!
扉が壊れる程の勢いで開かれる。
そこには綺羅びやかなドレスを着た『金髪ツインドリルの幼女』が仁王立ちで現れた。
「失礼致しますわ!!」
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