第19話 JK×好感度×種族




「──『異世界人』と『ハイエルフ』のお嬢さん方」


「!?」



 食後の口直しに口に飲んでいた果実水を吹き出しかける。


 なんで何も言ってないのにバレたんだ……そうか!



「【鑑定】ですか?」


「いやいや、簡単な推理だよ。君はさっき『いただきます』と『ごちそうさま』と言っただろう? 黒髪黒眼だけでも珍しいが、食事の前と後でそれを言うのは異世界人かその血族だけだ。そして現存する血族の所在は分かっているから必然的に君は新たな異世界人になると言う事だ」



 なるほど……入口からここまで失敗の連続。何だかんだ私も気が抜けていたみたいだ。


 もう遅いかもしれないが気を引き締めて行こう。これ以上マリィに不甲斐ないところは見せられない。



「マリィがハイエルフだって分かったのも何か理由があるんですか?」


「んん!? も、勿論だ。彼女がハイエルフだと分かった理由は、えぇと……『私がギルドマスターに伝えたからですよ』おい、エレン!」



 事務員のお姉さん、エレンさんって言うのか。空色の髪の毛をアップで纏めた眼鏡美女エレンさんがアリアンヌさんの言葉を遮って答えてくれた。


 カンニングかよ。



「ギルドマスター。いくらセツナ様からの好感度を得る為とは言え、見栄を張って嘘をつくのは頂けないですね」


「……そんな事を言ってお前も好感度上げを考えているのだろう?」


「……さぁ、どうでしょうか?」



 詰所の時からそうだけど、なんだこの状況?


 モテ期? 異世界でモテ期到来か?


 せっかく気を引き締めようとしてるのに、美女二人がこんな会話をしていると顔が緩んでしまうじゃない。


 ああ、マリィが少しだけムッとした顔で私を見てくる……踏ん張れ私。



 ちなみにエレンさんの好感度はかなり高いですよ? 唇に下にあるホクロがエロくて最高です。




「申し遅れました。私は当レイムーロ支部一等受付嬢及びギルドマスター秘書のエレンと申します。セツナ様、マリィ様よろしくお願い致します」


「は、はいです……!」



 礼儀正しく自己紹介をしてくれた事務員のお姉さん──エレンさんにつられてお辞儀をしながら返事をするマリィ。



「あ、あの……マリィがハイエルフだと何でわかったのですか? ハイエルフはここにいてはいけないですか?」



 マリィはスカートの裾をギュッと握りモジモジ……というよりも恐る恐る質問している。




「マリィ?」


「あ、ぅ、セツナさま……」



 スカートを握り締めている手に私の手を重ねる。




 【ハイエルフ】

 人口の少ないエルフ族の中でも極めて出生数が少ない種族。ハイエルフが生まれた時は里全体で大切に育てられる。



 チヒロさんの書物でざっくり読んだ内容だ。それ以上は読んでいない。マリィが喋らないということは知られたくないことなんだろうから。


 エルフにとっても大切な存在であるハイエルフ。そんな種族のマリィを何故危険な森の中で育てていたのか……気になりはするが、結局のところ



 何があろうと私はマリィと一緒にいるだけだから。




「……問題があるなら言ってください。私達はすぐにここを離れますので」



 アリアンヌさんとエレンさんにはっきりと伝える。


 初めての訪れた異世界の街だ。興味はあるが、そんな事は二の次だ。



「せつなさま……」


「大丈夫だよマリィ。私はずっと一緒だから」


「はい……! ありがとうなのです」



 力いっぱい握るマリィの手を解きほぐすように両手で包み込む。


 次第に強張っていた表情も和らいでいつもの可愛らしい笑顔が戻ってきた。



「……誤解を招いてしまったようで申し訳ない。かなり珍しい組み合わせだったもので、こちらも興奮して配慮にかけていた」


「私からも謝罪を申し上げます。ハイエルフが街にいる事は何も問題はありません。マリィさん、不安にさせてごめんなさい」



 ギルドマスターにその秘書である二人が深々と頭を下げ、謝罪をしてくれた。


 偉い立場であり年上の人達が、ただ珍しいだけの小娘に頭を下げることに驚いたが、それ以上にかなり好感が持てた。


 この人達は信用しても大丈夫かも。


 さっき好感度がうんぬん言ってたから若干癪に障るけど。



「ま、マリィも早とちりしてごめんなさい。セツナさまも、心配させてごめんなさいです!」


「謝る必要なんかないよ。マリィが笑顔でいてくれたら私も嬉しいからね」


「はい、ありがとうです!」



 やっぱりマリィは笑顔一番だね。



「……君たちはとても信頼し合っているようだな」


「「当然です!」」



 二人で声を揃えて答える。こちとら想いを重ね合ってるんだ。物理的にも!



「改めて誤解招いてすまなかった。だが二人がかなり珍しい事に変わりはない。私達のように人畜無害な人間ならまだしも、悪人なんて腐るほどいるから注意は必要だ」



 ……中盤くらいの言葉にはあえて何も言うまい。それ以外は確かにその通りだから。



「そうですね……それなら結局なんで私たち、マリィの事がわかったんですか?」


「お答えします。それは私の【鑑定】スキルで貴女方を見たからです」



 ──結局、【鑑定】かよォォ!!!!



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