第15話 JK×その後×これから ②




「ふ〜……」


「はふぅ〜……」



 マリィと一緒に湯船に浸かる。



 今は夜の八時ぐらいだろうか。速攻でお風呂に入ろうと思っていた私だったが、家に帰り着くなり、マリィのお腹が可愛くきゅ〜と鳴ったので先に晩ご飯を食べたらこの時間になった。


 先の宣言の通り、マリィに体を洗ってもらった。文字通り隅々まで。


 普段私がマリィにしている時と同じように洗ってきたので大変だった。理性を保つのが。

 マリィは私の胸が好きなのか執拗に洗うんだもん! もう充分だと悶えながら必死に訴えても「いえいえ、まだまだです〜」と笑顔で断るのだ。


 あの時のマリィの笑顔はちょっとヤバかった……マリィってSなのかな……アリだな!



 ──ゴホン。



 湯船に浸かりながら今後のことを考える。


 風呂場は大衆浴場程とは行かないが、貸し切りに出来る家族風呂くらいの広さがあり、浴槽も二人で浸かってもまだまだ余裕があるサイズなので足を伸ばしてのんびり出来る。





 【名 称】神崎 雪奈

 【年 齢】16

 【種 族】人間

 【L v】31

 【職 業】JK


 【生命力】400/400

 【魔 力】960700/103000

 【物 理】15

 【魔 法】15

 【防 御】15

 【俊 敏】15

 【技 量】142

 【器 用】318


 【属性】時空

 【固有】創造魔法 

     賢者の叡智


 【称号】異世界人





 ここ一ヶ月で変化した私のステータスだ。【称号】の『成長速度上昇』のおかげでレベルアップ自体は早いのだがステータスの伸びは絶望的。


 まぁそれはいい。私には『ルナイト』と『ジェイカイザー』があるから。


 『ルナイト』と『ジェイカイザー』は“そういう存在”として創り出したのでレベルアップによるステータスの変化はない。



 重要なのは【時空魔法】だ。


 ステータス上ではどれだけ成長したのか判断出来ない為、細かく練習と検証を続けてようやく実用的なレベルで使えるようになった。



 まだまだ自由に長距離の転移は出来ないが目視できる範囲での『短距離転移』は出来るようになってきた。このまま行けば私の望む魔法も使えるようになるかもしれない。




 ……よし。



「マリィ、こっちにおいで?」


「はい? わわわわっ!?」



 私に呼ばれて寄って来たマリィを私は膝の上に乗せ、後ろからマリィに抱きつく。



「ど、どうされたのです?」


「……私ね、やっぱり元の世界に戻りたいんだ」


「っ!?」



 覚悟を決めてこの世界で生きると決めたくせに何という心の弱さだ、と思うだろう。

 だって召喚魔法があるんだから希望を持っちゃうじゃん。ただし、もう一つを破るつもりは毛頭ない。



「あぁ、勘違いしないでね? マリィと離れるって意味じゃないよ?」


「……ふぇ?」



 涙目になったマリィが私を見る。



「私はね、【私の世界】と【こっちの世界】を行き来できるようにしたいんだ」


「セツナさまの世界と行き来……!」



 涙目から一転。目をキラキラと輝かせながら食いついてきた。



「そ。マリィを家族に紹介したいし、向こうには美味しい物や楽しい物がいっぱいなんだよ?」



 私はマリィに日本の事をたくさん伝えた。


 日本のアニメや漫画はもちろん、ファッション、メイク、そして家族の事など。それら一つ一つにマリィはかなり興味を示してくれた。



「わぁ~~、すごいです! すごいです! マリィ、セツナさまの世界に行ってみたいです!!」


「ふふふ、ありがとう」




 かなり長話しをしてのぼせそうになったので、二人で露天風呂に移動して浴槽の縁に腰掛けている。


 夜の冷たい風が心地いい。



 「それでね、どうせだったらこの世界の観光とかしながら色々調べられたらな〜って思ってるんだ」


「観光です?」



 この世界の事を私は知らない。それこそずっとこの森に住んでいるマリィも知らないはずだ。


 日本が恋しくもあるが、私だってオタクの端くれ。せっかくの異世界を満喫しなくてどうするよ。


 異世界の食べ物、アクセサリーなんかも気になるし、何よりエルフがいるのだ。他にも悪魔っ娘とかケモミミとかお姫様とかと出会いたい!! あわよくば……ね?



「??」



 マリィが不思議そうに首をこてんと傾けていた。あ、危ない危ない……マリィには見せられないヤバい表情になりかけてた。……なってないよね?



「えぇっと、この世界にだって美味しいもや楽しいことがいっぱいあるはず。だからさ、一緒に探しに行かない?」


「はいです! マリィはセツナさまを守るって約束しました、だからマリィからは絶対セツナさまから離れないです!」



 小さな胸の前で小さな手をギュッと握るマリィ。ふんす〜と鼻息が聞こえるほど気合を入れている。



「〜〜っとカワイイなぁマリィは!」


「はぷっ」



 私は堪らずマリィを抱き寄せ、マリィのほっぺたにスリスリする。プニプニツヤツヤで気持ちー。



「よし、ちょっと冷えちゃったからもう一回温まったら上がろうか」


「はいです。早く温まるようにマリィがぎゅ~ってするです! ぎゅ~〜」


「え、あ、ちょ、マリィ!?」



 ホントに何なのこの娘!? なぜにこうも的確に私の理性をガリガリ削ってくんの!? こんなの、私、私は────あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。









 その日、私は一つ大人になった。

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