第16話 JK×エルフ×旅立ち




 私の理性が崩壊して数日がたった。


 理性というタガを外してしまったが結果的にマリィとより親密になれた。

 それまではどこか遠慮がちだったマリィが素直になったのは喜ばしい。


 スキンシップも増えて、もう可愛くってしゃーないんです。


 手を繋ぐと笑顔を見せ、ぎゅって抱きつくとほっぺたをくっつけてスリスリしてくれるし、しまいにはちゅーもしてくれる。


 毎日、『夜のスキンシップ』はかかしていない。




 もう誰にもマリィはやらん! マリィは私のだ!!




 そんなこんなしていた影響で更に数日かけて私たちは旅立つ準備を進めた。


 マリィには薬草などの素材を集めて貰い、私はその薬草を使って回復薬を量産した。


 作製にあたって魔法袋に残っていた回復薬に【賢者の叡智】を使って必要素材、作製方法を調べた。薬草を磨り潰したり、魔力水とかが必要だったけどそこはよろしくチート能力。【創造魔法】で無問題もーまんたいだった。


 他にもこの家の護りを【創造魔法】で創った魔道具を使って強化した。


 チヒロさんが設置したであろう結界の内側に、創造製魔道具でもう一つの結界を張った。結界というよりも私的にはバリアかな?


 この場所はマリィにとって特別な場所であり、私にとってもマリィと出会った特別な場所だからね。護りは万全にしとかないと。



「あとは、これを設置してっと……よし」


「お待たせしましたです!」



 最後にをリビングに設置し終えるとマリィがやってきた。


 荷物はマリィに渡したスマホの中、『異空庫』アプリの中に入れているので手ぶらだ。



「準備オッケーみたいだね」


「はいです! では一緒にお師匠様に挨拶にいきましょう」


「了解」







 私たちはチヒロさんのお墓に挨拶にやってきた。


 チヒロさんのお墓は家の裏にある大樹の傍に建てられていた。マリィの半分程の石の下に彼女は眠っているそうだ。


 墓石の周りにはたくさんの花が咲いていて、特に目を引いたのは『月涙花』という花だ。


 【賢者の叡智】で見てみると最上級回復薬の素材になる『月命草』が月の光を浴びて開花した花らしい。


 花全体が僅か青白く発光しており、花の中心から生成される魔力を含んだ水が花弁を伝い、涙のように零れ落ちる。以上の事と成長の仕方が名前の由来らしい。




 二人でお墓に向けて手を合わせる。



 この世界の作法はわからないから日本式。マリィも知らないとの事なので私に合わせた形だ。


 御参りを終え私たちは立ち上がったが、マリィは『月涙花』の傍でもう一度しゃがみ込むと「数輪程もらっていきましょう」と言って『月涙花』を摘んでいく。



「え、摘んじゃって大丈夫なの?」


「はい! ここならすぐに生えますし、それにいくら魔法第一で私生活の事は後回しで食に無頓着な大雑把魔法バ……大好きお師匠様でも、旅立つ弟子にこれくらいはしてくれるはずですので!」



 酷い言われようである。


 でもなるほど。魔法第一の人ならば寝るだけのような家や調味料が塩しかない事など納得出来ることは多々ある。



「本当に魔法のことばっかりで、たくさんの魔法を教え込まれました。亡くなる直前まで魔法の話をしていて、召喚魔法もその時に渡されて、でも……使ってはダメだと……結局使って、しまいましたが」



 マリィにしては珍しく次々と文句を並べていたが、段々と言葉を詰まらせていく。


 うっすらの涙を浮かべているようだがマリィはお墓の方に向き直し話を続ける。



「そんなお師匠様でしたが、ずっと一緒にいてくれたです。里で落ちこぼれだったマリィを一生懸命育ててくれたです」



 落ちこぼれか……。マリィの昔の話は聞いていない。知りたい気持ちもあるが、今聞くべきではないな。マリィが話してくれる時を待とう。



「お師匠様。マリィはここを発ちます。いつになるか分かりませんがいつか必ず戻ってくるです。その時は成長したマリィをお見せしますので楽しみにしていて欲しいのです!」



 最後に深くお辞儀をしてこちらにやってくるマリィは涙を零しながらも晴れやか表情をしていた。


 私はそんな彼女の表情を曇らせないよう努力することを心でチヒロさんに伝えた。



「お待たせしたです。それでは出発しましょう! 西に向かうのですよね?」



 マリィが言っていたように私たちは今日、出発する。その報告も兼ねてここにやってきていた。それが終了したのでいよいよ出発だ。


 スマホのマップアプリを確認する。



「そうだね。『辺境都市レイムーロ』が目的地だね」



 この森を西に抜けて最も近い『アルカンシエル王国』の都市の一つ、『レイムーロ』を最初に向かう場所に決めていた。そこ以外だと山を超えたり、単純に遠い事もあり必然的にそうなった。



「まぁ、何かあってもすぐに転移で戻ってこれるから気楽に行こう」








「………………はい?」



 マリィが固まって聞き返してきた。そういえば説明してなかったな。異空庫から二つの魔道具を取り出して説明する。



「ほら、さっき私がリビングにコレ置いてたでしょ? コレが目標地点になってて、これを中継機として道中置いていけば私の転移でも戻ってこれるの。まぁ、複数回『短距離転移』するようなもんだから魔力消費は大きいけど……ってマリィ??」


「むぅぅ〜〜〜!!」



 マリィは真っ赤になってはち切れそうなくらいほっぺたを膨らませてこちらを睨みつけていた。


 ナニコレ、カワイイ……そういばチヒロさんにいつ戻れるか分からないって言ってたな。


 ふむ。私説明してないや。



「あ〜……ゴメンネ」


「むぅぅ〜! もうセツナ様とは一緒にお風呂に入らないからいいのです!」


「ぇぇー!? それは嫌だ! ほらほら新しいアヒルのおもちゃ創ってあげるから!」


「ふ、ふーん! 知らないのです!」


「ち、ちょっと待ってよマリィ! マリィィィーーーーーーーーーー!!!?」



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