第13話 JK×創造×最強 ③
「……セツナさま?」
雪奈がマリィの前で光に包まれ、その光が弾け飛ぶ。そこには雪奈の黒髪と同じく夜空のように深く黒い装甲を持つ機神が現れた。
【月光変身】アプリにより変身した姿はレオタード型の戦闘スーツ。月の光を放つ青白いラインが刻まれ、首元にはセーラー服のトレードマークの襟が鋼のアーマーとして装備。手足にも胴体同様の発光ラインを持つロング手袋とオーバーニーソックスを身に着けている。
【機神合体】アプリで『戦闘支援機ルナセイバー』と合体。胸部、腕部、脚部に装甲を、背部には大型ウイングバインダーと二振りの刀と剣、最後に王冠を模したアンテナを装備することで完成する。
──その名も『月光機神ジェイカイザー』!!
『グゴァァァァァァ!!』
突然の光に一度怯んでいたギガレックスだが、すぐさま体制を立て直し突撃を再開する。
その突撃は頭部のバイザーに表示されたエマージェンシー信号により捉えている。
「行くぞぉ!」
右手を前方に構える事でシーケンス起動。右手装甲のラインが発光しエネルギーを開放、音声認識により発動する。
「唸れ! ジェイ・ナァァックル!!」
青白い炎を吹き出し、撃ち出される鋼鉄の拳。
雪奈より放たれた前腕部とギガレックスの大角がぶつかり火花を散らしながら競り合う。
──バキバキ、バキィィィン!!
『グゴァァァァァ!?!?』
激しい音と共にギガレックスの大角が砕け散り、叫び声を上げながら仰け反り後退する。
「まだまだ! ジェイ・ブースター!」
右拳が戻った雪奈はその隙きを逃さず背部スラスターを噴射し一気に接近する。
雪奈の急接近に気づいたギガレックスは尻尾で薙ぎ払おうとするがそれを両手で受け止め、そのまま上空まで持ち上げて行く。
「ふんぬぅぅぅ……どりゃぁぁ!!」
上空でプロレスラー顔負けジャイアントスイングで更に高く投げ飛ばす。
「これでトドメ!」
両腕を腰溜めに構えシーケンス起動、胸部アーマーが展開し照射機構が剥き出しになる。
エネルギーが胸部に集中、中心の『JK』と刻まれたルナクリスタルが激しく発光し発動可能を知らせる。
「必殺! ジェェイ・ブラスタァァァァ!!」
胸部照射機構から極大のビームが放たれまっすぐにギガレックスを飲み込む。
『ガギャァァァァァァァァ!?!?』
──ズドォォォォォォォォォォォ!!
超高出力のエネルギーにギガレックスの硬い外皮は耐えきれず【魔力耐性:大】も【ビーム属性】には意味はなく崩れていく。雪奈のバイザーに映るギガレックスのHPがみるみる減っていき、ゼロになるとギガレックスの巨体は光の中で消滅。魔石だけが森に落ちていった。
「……やった」
魔石が落ちていくの見て雪奈は拳を握り、勝利を噛みしめる。
貧弱なステータスを補うため、【創造】と自らの『想像』で創り出した力。その力が、この世界の魔物、その中でも能力がかなり高いギガレックス相手にも通用した実感と自信を胸に抱きながら急ぎマリィのいた場所へ下降していく。
「マリィ大丈夫!? ……マリィ?」
マリィの元にたどり着いてみると、マリィはただでさえ大きな目を更に見開いて雪奈を見ていた。
その瞳はまるで星を散りばめたかのようにキラキラと輝いる。
「……いのです」
「え?」
「すごいのです!!」
ガバッと立ち上がり声を上げると瞳に宿っていた輝きがマリィの周りにまで波及し、漫画ならキラキラと描き文字が描かれているだろう。
「腕がバーンってなって! セツナさまがビューンって飛んで! 光がバビューーってなったらギガレックスがいなくなったのです!」
「ちょっ、怪我大丈夫なの!?」
怪我をしているのを忘れて先程の戦闘の感想を身振り手振りを混ぜて述べるマリィ。興奮しているせいか単純に表現が出来ないのかかなり抽象的な内容だ。
「セツナさまのお姿がカッコよくって、可愛いくって、キレイで、それにとっても強かったのです! また胸がきゅ〜〜ってなって痛みはどこか行ったのです!!」
今の雪奈の姿や戦い方はマリィにはとても珍しく、心を湧き立たせたのであろう。自分でも言っているように痛みを忘れてパンチラ跳びを繰り返している。
その姿は初めてアニメを見て興奮していた幼い頃の自分と重さなった雪奈は懐かしさと恥ずかしさを感じ苦笑いを浮かべてしまう。
「はい、ストップ」
「うきゅっ」
しかしソレはソレ、コレはコレだ。
動き回るマリィを止めそのままお姫様抱っこで抱きかかえる。装甲部分が当たらないよう腕と胸の装甲はパージしている。
「はわわわわ、せ、せちゅなしゃま!?」
雪奈に抱きかかえられ顔を真っ赤にするマリィ。雪奈の顔が目の前に来たことでたださえ早くなっていた鼓動が更に早くなるのを感じる。
「ほら、家に帰るよ。しっかり捕まっててね」
「ひゃ、ひゃい!」
マリィが首に手を回したのを確認し、ブースターを起動。戦闘時とは違いマリィに負担をかけないようにゆっくりと浮かび、マリィの家に向かって飛行を始めた。
「わぁぁ! 高いのです!」
高いところから森を見渡すのが初めてということもあり、またもや興奮しながら視線を動かすマリィ。
雪奈はそんなマリィの笑顔を眺めながら、腕に伝わる彼女の重みと暖かさを感じる事が出来る事を心から安心する。
「セツナさま」
「ん?」
「マリィ、もうダメだと思いました。でもセツナさまが来てくれて、またセツナさまと一緒にいられて、それがすごく嬉しいのです」
「マリィ……」
「だからマリィもセツナさまに置いて行かれないようにもっともっと強くなります! 次はマリィがセツナさまを守りってみせます!」
「……うん、私ももっと強くなるよ。一緒に強くなろうね」
「はいです!」
まだ雪奈には逃げたという後ろめたさというしこりが残っていた。だがマリィの前を向く言葉を聞き、笑顔を見て、その感情は霧散していった。
それは闇夜を明かす太陽のような笑顔だった。
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