第12話 JK×創造×最強 ②




 ──バキィィィン!



「あぐっ!」



 複数枚展開していた『氷盾』の最後の一枚がギガレックスの尾による薙ぎ払いで破壊され、その余波で吹き飛ばされるマリィ。


 この流れはすでに数回繰り返されており、マリィの体力は限界を迎えていた。



「う、ぐぅ……!」



 吹き飛ばされた勢いで背中から木に打ち付けてられ倒れ込む。


 ここまで氷盾で耐えるだけではなく、様々な攻撃魔法も放っていたが防御力700超えに加え【魔法耐性:大】を持っている為、大きなダメージを与えることが出来てない。


 全ての氷盾を壊し終えたギガレックスはゆっくりとした足取りでマリィに近寄っていく。



「セツナ、さま、逃げきれたかな……」



 絶体絶命の中、マリィは雪奈の身を心配する。


 マリィが孤独に耐えきれず勝手に喚び出してしまったのにも関わらず、優しくマリィに接してくれた雪奈。


 一緒にご飯を食べて、髪を洗ってくれて、服を作ってくれて、優しく抱きしめてくれて、一緒にいると言ってくれた雪奈。



 マリィにとって雪奈は何よりも大切な存在になった。



 もっと一緒いたい。



 もっと話をしたい。



 もっともっと雪奈の事を知りたい。



 そんな思いがどんどんと大きくなる。



「まだ……死にたく、ないのです……!」


『ゴギャアァァァァァァァァ!!』



 再び立ち上がり折れた杖を構える。


 ギガレックスはマリィにトドメを刺すために大角を前方に突き出し駆け出す。



「……っ」



 魔法を唱えようするが打ち付けた背中に痛みが走り、口を噤んでしまった。



 大角がマリィに届く瞬間、ギガレックスの胴体に真横から何かが激突し、その巨体を突き飛ばした。



「な、にが……?」



 マリィが上を見るとギガレックスに激突した物体は鳥の様な大きな翼を持っていた。しかしその翼は鉄のように硬く足先と思わしき箇所から青白い炎を吹き出しながら上空を旋回している。




「──マリィ!?」




 名前を呼ばれ後ろを振り向くと、そこには逃げたはずの雪奈がいた。


 雪奈は全力で走って来たため、大量の汗を流し、肩で息をしている。羽織っているカーディガンも枝に引っ掛けてほつれていたり泥で汚れている。




「セツナさま……どう、して」


「マリィ、ごめんね。私の為にこんな無理させちゃって……」



 マリィは雪奈以上にボロボロの状態になっていた。白を基調としたセーラー服には血が滲み、いたる所が裂け白い肌が見えている。


 その姿を見た雪奈は、逃げ出した自分を責めたくなるのを抑え、この状況を作った魔物を見据える。


 倒れ込んだギガレックスは横っ腹の装甲部分が砕け血を流しながらも血走った目は雪奈を睨みつけている。



「私が言えた立場じゃないけど、あんたは許さないわよ」


『ガァァァァァァァ!!』



 血を吐きながら起き上がり、再び突進するギガレックス。その瞳は怒りに満ちており、本能なのか傷を負わせた相手が雪奈だと判断し最大の武器である大角を向ける。



「駄目なの、です! セツナさま逃げて!」


「私はもう逃げないよ。見せてあげる、私の『最強』を!」



 雪奈の左手には【創造】で創り出したスマホ型の魔道具を持っていた。それを右側にクロスさせ二つのアプリ、【月光変身】と【機神合体】を起動する。



 スマホから光が放たれ、目が眩んだギガレックスは突撃を停止させる。



 放たれた光は雪奈と上空を旋回する『戦闘支援機ルナセイバー』を覆う。



 光の中で【月光変身】により『変身』し、【機神合体】で二つの光球が合わさり『ルナセイバー』と『合体』を行う。





 光が弾け飛び、その場所には戦闘スーツに身を包み、漆黒の装甲と背中に大型ウイングブースターを装備した雪奈が姿を現した。




 ──月に祝福された聖なる剣を手に、悪と戦う美少女剣士のように、可憐で美しい戦闘スーツ。



 ──異次元より現れた侵略者と戦う鋼の超者のように、雄々しく気高い鋼鉄の鎧。




「これが私の最強の形! その名も『月光機神ジェイカイザー』!!」





 父と共に見て真似をした変身ヒーロー。



 兄と共に見て憧れた合体ロボット。



 母と共に見て恋い焦がれた戦うヒロイン。




 それらすべての要素を組み合わせ【創造魔法】で創り出した最強の姿。





 それこそが『月光機神ジェカイザー』である!



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