第11話 JK×創造×最強 ①
「すみません、張り切り過ぎて魔力込めすぎちゃいました……」
ロクロック鳥らの魔石を回収しながらマリィはそう呟いた。
「全然大丈夫だよ。マリィの方こそ疲れてない?」
「はいです! マリィも全然大丈夫なのです!」
まだまだ元気一杯だと言わんばかりに杖を掲げるマリィ。
周囲一帯を黒焦げにする程の魔法を使ってもマリィの魔力消費量は多くないようだ。
「それにしても不思議です」
「ん?」
「ロクロック鳥なんですが、本来はもう少し奥に生息している魔物なのです」
「その魔物がこの辺りに出てきたのが不思議ってこと?」
「はいです」
「えぇ……それもうフラグじゃん……」
「ふらぐ?」と首をかしげるマリィだったが次の瞬間、エルフ耳がピンと立ち上がり表情が険しくなる。
「この大きな魔力……」
「ど、どうし……」
──ズシィ……ン、ズシィィ……ン
森の奥から音が響く。雪奈はマリィに手を引かれて物陰に隠れ息を潜める。
どんどん足音が二人のいる場所に近づいてくる。
次第に音がする度に地面の振動が大きくなり、その発生源が二人の前に姿を現す。
その姿はかつて地球に存在した生物、ティラノザウルスのような魔物であった。
【名 称】無し
【種 族】ギガレックス
【L v】87
【生命力】68000/68000
【魔 力】570/600
【物 理】537
【魔 法】112
【防 御】729
【俊 敏】314
【特 性】魔法耐性:大、嗅覚強化
「……っ!?」
レベルはマリィをも超え87。ステータス軒並み高く特に防御が相当高い。
体格はティラノザウルスと同等といったところだろうか。しかしその体は全身鎧のような外皮に覆われ、鼻先には顔と同等サイズの大きな角が一本生えている。
ギガレックスは鼻をフンフンと鳴らしながら周囲を調べている。
二人は物陰で身を潜めながらその様子を見ている。
「セツナさま、マリィが気を引きますのでその間に逃げてください」
「え、逃げるって……」
「あの魔物は鼻が利きます。すぐに見つかってしまいますし相性の悪いマリィでは倒せません。ですが時間稼ぎくらいはできます」
「で、でも……!!」
『ガギャァァァァァァァァァ!!』
ギガレックスが雪奈達を発見し、巨大な角を突き出し猛烈な勢いで駆け出してきた。
「『氷盾』!!」
ロクロック鳥の時にも使用した氷魔法を唱え、氷の盾が現れる。それと同時に激突するギガレックスの巨大な角。ロクロック鳥相手にビクともしなかった氷の盾が一撃で全体に亀裂が入る。
ギガレックスは氷の盾を破ろうと巨大な角による突撃や強靭な顎による噛み付きを繰り返し放つ。その度に亀裂が深くなるがマリィは両手に握る杖を力いっぱい前に押し出し耐える。
「ひっ!」
「今のっ、うちです…!」
「で、でもマリィが……」
「大丈夫ですっ! セツナさまが離れたのを確認したら、マリィも逃げるのです!」
「あ、う……わ、わかった……!」
雪奈はマリィを背にして走り出す。
──雪奈は走る。
少しでも遠くに、マリィが早く逃げ出せるように必死に足を回転させる。
元々運動神経は悪いわけではないが、この世界において雪奈の運動能力は低い。
慣れない森の道を全速力で走っているため木の根に足を取られ転倒してしまう。
雪奈が逃げてきた方向からは激しい戦闘の音が未だ鳴り響いている。
まだマリィが戦い続けている証拠だ。
(早く……マリィも逃げれるように遠くに逃げないと……)
──だが本当にマリィは逃げ出せるのだろうか。
──ふと頭によぎってしまう。
逃げ出せず魔物に吹き飛ばされるマリィの姿を。
「……っ! 何をやってんだ私は……!」
立ち上がろうと地面に着いた手で地面を掻きむしるように握り締める。
「マリィに一人ぼっちにしないって言ったじゃない……! 必ず守るってチヒロさんに誓ったじゃん!」
雪奈は勢いよく立ち上がると音の響く方角へ駆け出す。
逃げる時は違いしっかりと地面を蹴り、腕を振り、マリィの元へ一秒でも早く戻れるように。
走りながらも雪奈は考える。
ただ戻るだけでは駄目だ、と。
雪奈が現状戦闘で役立てる事が出来そうな魔法は検証している時に覚えた、指定した範囲・対象の時間経過を遅らせる時空属性魔法の『
『転移』はまだまともに発動できず、逃走の手段には使えない。
残された手はただ一つ。
「【創造】しかない……!」
一定以上のイメージにより物体を創り出す固有魔法【創造】はこの世界に来て最も使用している魔法でもある。
はじめは実在した物のみだと考えていたいたが【賢者の叡智】を得て、詳細を確認出来るようになった事で現実に存在しない物も創り出せる事が分かった。
マリィに渡したピアスがそれだ。魔石を使用することで【賢者の叡智】を付与したオリジナルの魔道具。
謂わば架空の魔道具だ。
雪奈のイメージ次第で何でも創れるという事の証明である。
イメージとはすなわち想像力。
だからこそ創り出せる筈だ。
雪奈が考えいた、雪奈の望む、『最強の装備』を。
「オタクの想像力、舐めないでよね──!」
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