第8話 JK×叡智×お揃い
デザートまである朝食を終え、二人は外に出ていた。
そこで雪奈はまず昨夜の事をマリィに伝える。
チヒロの事だ。
彼女に会ったこと、彼女に固有魔法を貰ったこと、そして──
「マリィの事をよろしくって言われたよ」
「……ぐすっ、お師匠さまありがとうございます。マリィはセツナさまと頑張ります!」
マリィは雪奈の話を聞き、涙ぐんでいたが最後の話を聞くと涙拭い笑顔を見せる。
「セツナさまもありがとうございます。ふつつかものですがよろしくお願いします」
「マリィそれは……ゴホン! こちらこそよろしくね」
まるでプロポーズの答えのような言葉を言いながら恭しくお辞儀をするマリィ。
雪奈的にはバッチコイなので舞い上がりそうになるのを抑え込み返事をする。
「【賢者の叡智】は鑑定の上位互換らしいからもう一度色々調べてみようと思うんだけど、マリィはどうする?」
「もしお邪魔でなければマリィもお手伝いしたいです!」
「邪魔なわけないじゃん。それじゃあ手伝いよろしくね?」
「はい!」と元気いっぱいに返事をするマリィ。
雪奈は【賢者の叡智】を発動させステータスをマリィにも見えるように表示する。
【時空属性】
時と空間を操る属性。希少属性の中でも極めて珍しく適正者の数は少ない。
詳細:時間操作、転移、異空庫が使用できる。使えば使うほど効率、効果、範囲などが上昇する。時空属性を極めると時間を完全に支配し、次元を超越すると伝わっている。
【創造魔法】
一定以上、具体的にイメージした物体を創造する魔法。創り出す物により魔力消費量は異なる。生命は創り出せない。
詳細:生産系魔法の最上位魔法。素材がなくとも使用者の魔力のみで生産可能。素材を用いることでより質の高い物を創り出せる。発動は機能や構造などの具体的イメージが必要となる為、遅い部類。練度が上がるとイメージに補正が掛かるようになる。現実に存在しない物も創り出す事が出来る。また魔石を触媒にする事により魔法的特性を持たせる事も可能。
【賢者の叡智】
賢者チヒロの固有魔法【継承】によって与えられた【鑑定】の上位魔法。元の情報に賢者の知識が加わり、より詳細な情報開示が可能。
詳細:賢者チヒロの【継承】により【鑑定】が進化した魔法。発動状態を維持することで対象の弱点や体力、魔力残量が表示される。また対象の隠されたステータスを確認できる。
【異世界人】
異世界から召喚、転生した者に与えられる称号。
詳細:言語理解、成長速度上昇、精神耐性を所持。
「……すごいですね」
「うん、ヤバいくらいチートだね」
「ちーと?」
「ズルいくらい凄いってこと」
「なるほど! 確かにヤバいちーとです!」
「ふふ、そうそう」
雪奈のステータスは攻撃力などは軒並み低い代わり完全に魔法の使用する事自体に振り切っているようだ。
(でも、それだけじゃマリィを守れない……)
マリィを守るとチヒロに誓った。
まだ雪奈は見たことはないが、この世界にはラノベと同じように魔物が存在している。
マリィを守るという言葉にはそれらから物理的に守る事も含めている。
その為には力が必要だと雪奈は考えた。
【時空属性】も【創造魔法】もかなりのチートなのだが現状で攻撃性能が皆無なのだ。
【時空属性】を相当使いこなせるようになれれば時間を止めたり、それこそ異空間に敵を転移させるような事が出来るかもしれないがいつになるか分からない。
しかし【創造魔法】に希望が見えた。
それは『現実に存在しない物も創り出す事が出来る』という点だ。
雪奈は創り出せる物は現実にある物だけだと思い込んでいたが、さすがはチート魔法。
そして雪奈にはすでに一つの考えが浮かんでいた。
(これが上手くいけばマリィを守れる。その前にこっちも試してみよう)
もう一つ気になる事があった。『魔石を触媒にする事により魔法的特性を持たせる事も可能』の一文である。
魔法袋の中には様々な魔石も入っており、マリィに使用していいと言われているのでランクの高い魔石を使わせてもらい、ある物を創造する。
「……よし! マリィ、これあなたにプレゼント」
「マリィにですか!? ふわぁ、これって……」
「そ。私とお揃い」
マリィに渡したものは雪奈がつけているピアスと同じ形の物だ。もちろんただのピアスではない。
【叡智のピアス】
左耳用装備品。装備すると念じることにより装備可能で一度装備すると装備した人物専用になる。
【賢者の叡智】が付与されたお揃いのピアス。
マリィのかわいいエルフ耳に穴を開けたくないため、ゲームのように『装備』すると耳に付くようになっている。
更に高ランクの魔石を触媒にすることで【賢者の叡智】を付与しマリィにも【鑑定】が出来るようにしている。
「この魔法はマリィにも持っていて欲しいと思ってたし、【鑑定】出来たほうが何かと便利でしょ?」
「お師匠さまの魔法が……それにお揃いなのもとっても嬉しいのです! ありがとうございます!」
「どういたしまして、よかったら着けて見せてくれる?」
マリィは頷き、ピアスを装備する。
エルフ特有の長い耳に輝く空色のピアスを着けたことで大人っぽさが出てている。
「どうですか?」
「うん! めっちゃかわいいよ!」
「えへへ、嬉しいです」
可愛らしいマリィを見てホクホク顔の雪奈。
そんな雪奈の隣にマリィは移動するとゆっくりと雪奈の顔に近づいていき──
──ちゅっ
「!!?!?」
雪奈の頬に柔らかい感触がする。
「え、マ、マリィ今……キス……」
「あの……お師匠さまが、好きな人が出来たらしてあげなさいって……その、お礼です」
頬を真っ赤なに染めながら笑顔で雪奈を見つめるマリィ。
その雪奈もマリィに負けないくらい顔を真っ赤にし、まるで餌を強請る鯉のように口をパクパクさせなが「す、好き……マリィが、私の事好きって……」などと呟いている。
(チヒロさん、ごめんなさい……私がマリィを襲ってしまいそうです。でも、好き同士なら問題ないですよね? うん、問題ない! だって私はマリィの事大好きなんだから!)
マリィにとって最も頼れる存在になろうと、マリィを守れるだけ強くなろうと行動を始めた雪奈であったが、それよりも先にマリィにとって最も危険な存在なりつつある雪奈であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます