第7話 JK×凶器×食

 ──翌朝。


 雪奈が二度寝から目を覚ますと金髪翠眼の幼女に雪奈の胸元付近から視線を感じ目線を落とすと、すでに起きていたマリィからジィ〜っと見つめられていた。



「……どしたの?」


「あ、あの……」


「??」


「……おはよ、ございますです」


「!!!!!!」



 一気に目が冴えた雪奈。


 当たり前だ。キラッキラッでくりっくりっな大きな瞳が上目遣いで見つめていたのだ。まるで雪奈をキュン死にさせるが為にやったのではないかと邪推してしまうほどの可憐さだ。



「えへへ……ぎゅ〜〜〜」


「!!?!!!!!?!?!」



 追撃の手を緩めない。

 頬を染めながらのハニカミからの雪奈に抱きつくマリィ。


 起きた時に隣に人がいる安心感を一〇〇年ぶりに感じたマリィ。それを確かめるように雪奈の豊満な胸に顔を埋める。



(あ、あぁ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)



 声にならない声を内で上げ、雪奈は小一時間程放心したのだった。




 その最中、再びチヒロに会った気がするのは雪奈の気のせいであろう。



 ……多分。

 







 何とか生還を果たした雪奈は、至福の時間を放心していたせいで堪能出来なかった事を後悔しつつ、昨日同様マリィの準備した奇っ怪な果物で朝食を取る。


 ちなみに今食べているのは毒キノコのような柄をした果物で味は梨だった。



(あ〜、しょっぱいの食べたい)



 見た目はあれだがすべてちゃんとした果物で美味しい。美味しいのだが食の飽和した世界で生きてきた雪奈は二日目にして果物に飽きてしまっていた。



「ね、マリィはいつも果物食べてるの?」


「むえ、はむむはひほひはあ……」


「飲み込んでからでいいよ」



 口一杯にためていた果物をしっかりと咀嚼して飲み込み答える。



「いつもは木の実とかお庭で育てているお芋を食べてるです。果物は特別な時の為にとっておいたのです」



 マリィの小屋にはチヒロによって【時間停止】と【収納拡張】が付与された魔法の袋があり、それにちょっとずつ貯めていたとの事だ。

 チヒロは雪奈と同じく時空属性を持っていたようだ。


 マリィは料理が焼くくらいの事しか出来ないらしい。動物や魔物を狩ったとしても上手く解体も出来ない為にとてつもなく不味くて食べなくなったそうだ。



「ふむ……ねぇ、そのお芋と魔法の袋見せてもらってもいい?」


「? いいですよ」



 雪奈の意図が掴めていないようだが、快く了承するマリィ。


 朝食を終えた雪奈は早速、芋と袋の中身を確認する。

 魔法袋を【賢者の叡智】で鑑定すると入ってる物のリストが表示された。


 中には杖などの武器や防具、魔物の素材など様々な物が入っているようだ。


 この魔法の袋から欲しい物を取り出すにはその物を頭に思い浮かべながら手を入れると取り出せるらしい。

 おそらくマリィは中に何が入ってるか分からなかった為、自分が入れた物を出す事しか出来なかったのだろう。



「どうですか?」


「フッフッフッ……マリィ、まだお腹に余裕はある?」


「?? はい、まだ食べられますよ」


「OK。ちょっと待っててね」



 雪奈の望んでいたものが魔法袋の中にあった。マリィに頼んで持ってきてもらった芋も同様に望んでいた種類の物のようだ。


 雪奈は【創造魔法】を発動。

 創り出したのはまな板、包丁、ピーラー、穴開きおたま、金属のトレー、そして揚げ物用の鍋だ。


 【創造魔法】だが、使用する時に雪奈は【時空魔法】の『時間操作』も同時に使用いる。雪奈の周りのみ時間経過を早めてているのでそばで見ているマリィにはそこそこ早く創造したように感じているだろう。


 【創造魔法】自体、使えば使うほど創り出す時間は若干だが早くなっている。



(後で【賢者の叡智】で鑑定して確かめてみるか)



 チヒロから昨夜与えられた固有魔法【賢者の叡智】は鑑定の上位版だ。鑑定の魔道具より詳細が表示されるので色々と知ることができそうだ。



(さっきの魔法袋を見て試したいことも出来たしね)



 そんな事を考えながらも調理は進めていたので芋の作業は終わった。

 キレイに洗った芋──鑑定してみたところジャイガ芋というらしい──をスティック状に二種類と皮が残るようにくし切りにした物の計三種類に切る。


 そしても望んだもの一つ、それは油だ。


 魔法袋にオリオリブ油と表示されていたものを鍋にたっぷりと入れマリィが出した火球で熱していた。


 そこに用意した芋を投入。



「うわ〜、すごいパチパチして──あつっ!」


「火傷しちゃうから気をつけてね?」



 結構近くで鍋を見ていたため油が跳ねてびっくりするマリィを微笑ましく見ながらどんどんと揚げる続ける。



「よし、最後にお塩をかけて……フライドポテト完成!」



 もう一つ望んでいた塩を揚げ上がった芋に振りかけてフライドポテトの三種盛りが出来上がった。



「こ、これ食べてもいいのですか?」


「勿論。熱いから気をつけてね」



 早速細いタイプのポテトを手に取り一口。



「あつ、ハフハフ……〜〜〜っ美味しいです!!」


「それじゃ私も、ふーふー……う〜ん! やっぱりジャンクフード最高♪」



 朝起きてすぐだが二人は揚げたてをパクパク食べていく。

 雪奈は細い方が好みなのだがマリィは皮付きが好みのようだ。


 結構な量を作っていたはずだがまたたく間に無くなってしまった。



「ご馳走さまでした! すごく美味しかったです!」


「それはよかった。また作ってあげるね」



 恒例のピョンピョンをしながら喜ぶマリィ。

 雪奈は大好物の縞パンというデザートに更にお腹一杯になるのであった。

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