第4話 JK×シャンプー×○○○

 マリィの家に戻った雪奈を出迎えたのは色とりどりのフルーツであった。


 その形状は雪奈の知るフルーツとは幾分違っているが。


 スイカのように大きなリンゴ、先端が蛇のような形をしたバナナ、人の顔のような柄のブドウなどなど。



 「さぁ、どうぞです!」とすすめるマリィに対し顔を引つらせながらバナナ(のような物)を手に取る。

 皮を向くと心なしか蛇の顔が歪んだような気がする。



「あ、ちゃんとバナナの味。美味しい」


「よかったです!」



 そう言った彼女は真っ赤な果汁を服に零しながら、こぶし大の大きさの苺(のような物)をかぶりつきながら食べていた。



「あぁ〜あ、零しすぎでしょ」



 先程、検証の為に創り出したコスメ入れバッグからウェットティッシュを取り出し、マリィの口周りについた果汁を拭き取る。



「ほら、キレイになった」


「ありがとうございます!」



 椅子に戻り食事を続けるマリィを見る。


 ボサボサに伸びたくすんだ金色の髪。穴が空いたりほつれのあるボロボロの貫頭衣のような服。


 よくよく考えたら何故このような小さな女の子が森の中の家に一人っきりなのだろうか……そんなことを考えながら雪奈はある提案をする。



「ご飯食べ終わったら髪の毛整えようか」


「髪の毛……ですか?」



 雪奈は創造魔法でカット用のハサミや櫛、そして現代の洗髪セットを創り出した。



「今のがセツナさまの固有魔法なのですか!?」


「うん。色々試してみてちょっとは使えるようになったからね」


「わぁ、わぁ! すごいです! すごいです!!」



 この子の癖なのだろう。出会ったときと同じようにぴょんぴょんも跳ねるマリィ。

 そこで雪奈はある事を思いつく。



「ついでに新しい服も創っちゃおうか。どんな服が欲しい?」



 マリィのボロボロのがどうしても気になり、そう提案する雪奈。

 机の上を片付けながらノートを広げペンを握る。マリィの希望を聞きながらデザインを描くようだ。



「セツナさまは絵を描けるのですか?」


「うん。これでも結構人気な同人作家なんだよ?」



 「まぁエロだけど」とマリィには聞こえないように呟く。マリィは同人という聞き慣れない言葉に首を傾げている。


 日本にて雪奈は百合エロ作家とし活動していた。絵柄は可愛く、とてもピュアな関係でありながら内容はごりごりのハードエロという作風でロリ好きのお兄さんだけでなく多くの諸兄達から人気を獲得しているのだ。


 余談だが元々母がエロ同人作家として活躍しており、それに影響された形である。


 ノートにざっと人の形を描きマリィを見てもう一度問いかけるとマリィは口を開く。

 


「えっと、そのですね……」


「うん?」


「セツナさまの着ているような服を……着てみたいのです」


「セーラー服ってこと?」



 自分のセーラー服を指で摘みながらマリィに確認を取る。


 マリィは手をモジモジさせながら、こくんと頷く。



「OK。ただ、まんまだと面白くないから色々手を加えてみようか」



 まるで周りに華が咲いたかのような笑顔になるマリィ。二人は暫しノートにあれだこれだと意見を出し合うのだった。










「さてまずはシャンプーしよっか」


「しゃんぷうですか?」



 二人は小屋の外に出ていた。外には雪奈の創り出した椅子や桶、洗髪に使うシャンプー、コンディショナーなど一通り準備していた。


 マリィ椅子座らせるとちょうど雪奈の胸の前に頭がくる形になる。近くでみると相当汚れているようだ。



「それじゃあ、始めるね」


「わぷぷぷー」



 マリィにお湯をたっぷりかける。ちなみにこのお湯はマリィが魔法で作った物だ。


 水魔法で生み出した綺麗な水を風魔法で空中に浮かべて水球を作り、火魔法で温めたものだ。


 マリィは希少属性を含む七つの適性を持っていてそれを同時に複数発動させることが出来るそうだ。



「わ、わ、わ! 泡がすごいのです!」


「こらこら、暴れないの」



 シャンプーをしっかりと泡立てながら汚れを落としていく。ところどころ絡まっているところは丁寧に手櫛で解す。


 わしゃわしゃと洗っていく毎に汚れが落ちお湯で洗い流すと、くすんだ色をしていた髪は陽の光を反射するほど綺麗になっている。



「ん?」



 側頭部あたりを濯ぐ雪奈の手に何かがちょこちょこと当たる感触がある。

 その辺りの髪をかきわけるとピョコピョコと動く物体が現れた。



「マリィ……この耳は……?」


「耳ですか?」



 ━━ゴクリと大きく唾を飲み込む。雪奈の目に映り込むその耳は自分の丸い耳と比べると横に長くピンと尖っている。それは雪奈のもっとも愛する空想上の種族の特徴と一致する。その種族の名は……



「エルフ……?」


「はい、マリィは『ハイエルフ』なのです!」



 ──ズゥンガラビシャァァァァァン!!!!



 返事をする為に後ろを振り向いたマリィ。それを見た雪奈は特大の雷に打たれるだけでは済まない衝撃を受けた。 



 汚れを落とした事で一本一本が金糸のように煌めく黄金の髪。水気を帯び、幼い見た目にはそぐわない艶やかさがある。

 前髪はかき上げて現れている翡翠色の大きな瞳は神々しさに溢れ、まるで天上の女神のようだ。



「ロリっ娘エルフキタァァァコッレェェ!!!!」

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