第2話 JK×ステータス×隠し

「……えっと、急に変な声出してごめんね?」


「い、いえ! こちらこそ一人ではしゃいでしまってすみませんです……」



 大声をあげた雪奈とお尻丸出しで跳ねまわっていた幼女は落ち着きを取り戻し、部屋の中にある小さな机に向き合って座っている。


 互いに恥ずかしいのか二人の視線は部屋の中を彷徨っている。


 窓は開けられており森に降り注ぐ暖かな光が部屋の中を照らしている。



「あのさ、さっきあなたが言ってたことなんだけど……異世界人って。それって、ここは私が住んでた世界じゃないってこと?」



 見たところ年上である自分が声をかけるべきだろう……そう思い口を開く雪奈。



「は、はい! そうなのです! "マリィ"が召喚魔法を使って召喚しましま!」



 「噛んでしまいました……」と顔を伏せる。手を胸に当てながら喋っていたのでおそらく≪マリィ≫というのが彼女の名前なのであろう。



(うわぁ、マジかぁ……ラノベ読んだ後とかはそんな妄想するけど、実際に体験する事になるなんて……)



 窓から外を見る。木、木、草、木、草……




(こういうのってお城とか教会とかで、お姫様とか聖女様みたいな美少女が呼び出すものなんじゃないの? いやいや、それよりロリっ娘の女神様であるべきじゃない!? 勿論全裸で!!)



 ラノベの定番や雪奈の願望と違い雪奈の前にいるのはボサボサ髪の幼女だ。



 ──幼女という点だけで言えばあってるんたけど……そう呟きつつ前を向くといつの間にかマリィは部屋の奥でゴソゴソと何かを漁っている。お尻丸出しで。



「な、何してんの?」


「えっとですね……これなのです!」



 ──パパーン! という効果音が聞こえてきそうな動きで何かを掲げる。


 マリィが持ってきたのは銀色に光る板状の道具。



「これは【鑑定】の魔道具なのです!」


「っ! 【鑑定】……!」


「はい。これで異世界人さんの能力を確認出来るのです」



 これぞ異世界召喚ともいえる【鑑定】の言葉に高揚感が湧き上がる。

 先程のマリィの言葉からもこの世界には魔法というものがある事がわかる。自分もアニメのキャラのように魔法が使えるのでは……と期待が膨らむ。



「えっと、お師匠様がおっしゃるには、異世界人さまが召喚陣を通る際にこの世界に合わせて能力が数値化されるとの事なのです。それと異世界には魔法がない世界もあると聞いてるんですが異世界人さまの世界もですか?」



 うんうん。と首肯で答える。その顔はほんのり赤みを帯びている。



「それではこの板に手を置いてください。あとは魔道具が自動でやってくれるのです」



 言われたとおりに手を置く。期待でただでさえ豊満な胸を膨らませる雪奈。



(ドキドキ……やっぱり異世界といえばチート能力! いやでも私としてはロリっ娘に好かれるスキルとかベッドで最強になれるスキルとかが欲しい!)

 


 板が淡く光を放つとそこにはゲームでいうステータスが表示されていた。





 【名 称】南部 雪奈

 【年 齢】16

 【種 族】人間

 【L v】1

 【職 業】JK


 【生命力】100/100

 【魔 力】100000/100000

 【物 理】10

 【魔 法】10

 【防 御】10

 【俊 敏】10

 【技 量】100

 【器 用】200

  ・

  ・

  ・





 ━━しょっぼ! 自らのステータスを上から見ていった雪奈の感想である。



(別に私TUEEEがしたい訳じゃないけど、ステータス低すぎない? 器用とかめっちゃ高いっぽいけど……それに職業JKって……いや間違えてはないけど……)


「す、すごいのですっ!!」


「え?」



 不満げな雪奈とは対象的に机に身を乗り出すほど興奮するマリィ。



(睫毛なが……瞳もキレイな翠色……)



 マリィの瞳を見て惚ける雪奈。そのまま「な、何が?」と聞き返すのがやっとだ。



「魔力です! 普通の魔法使いの魔力が500程度だとお師匠様から聞いていたのですが、この数値は文字通り桁違いなのです!!」



 確かに普通の魔法使いの魔力値からすると雪奈の一〇万という数字は常軌を逸している。



「希少属性の時空属性に固有魔法まで……すごいです! その……すっごいのです!!」



 興奮し過ぎてすごい以外の感想が出てこないマリィ。

 【鑑定】の魔道具を再度確認してみると、どうやら最後の方を見落としていたようだ。



  ・

  ・

  ・

 【属性】時空

 【固有】創造魔法


 【称号】異世界人




                      ↓



「時空属性魔法は転移や収納といった時間と空間を操る魔法なのです!」



 翡翠色の瞳をキラキラと輝かせながら雪奈を見つめる。ここまで純粋に褒められた経験のない雪奈は照れくさくなり、自らのステータスを表記する魔道具に視線を落とす。



「……これ何だろ?」



 ステータスの最下部に小さく表示された矢印。スマホを扱う感覚でなんとなく矢印をタップしてみると新たな画面が表示された。




 ↑


 ※隠しステータスにつき本人のみ視認可能


 【経 験】0人(処女)

 【対 象】幼女、少女、女性

 【スキル】肉体改変




「……」



 矢印と同じく要領で表示された文字をタップしてみる。



 【肉体改変】

 自身又は他者の肉体構造や感度を改造・変更する。




「……台無しだよぉぉおお!!」



 言葉とは裏腹に天に向け親指を突き立てる雪奈。

 マリィはそれを不思議そうな目で見つめていた……。

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