Episode 102「バグ?」

 私は、三層の奥の方にある森に行った。私とジニさんの二人で。

 竜型になって空を飛びながら移動したので、道中に敵と会うことも無く、素早く移動できた。

 そして、四層へと続くダンジョンを突破した。


 そう、突破した。

 もうね、なんというか、簡単すぎて……。

 いつも通り、無敵である私が前に出てエクスプロージョンを連打するだけ。

 それだけで、なんと四層へと続く道が切り開かれてしまった。

 最近だと、爆破攻撃に耐性を持っていたり、スキル無効化のスキルを持っていたりするモンスターも発見されているらしいんだけど、最低でも七層以降にしか出現していないらしい。

 楽なのは良いんだけどね。


 その調子で五層へと続くダンジョンも楽々突破。

 今日は釣りが目的だから、四層五層の観光はまた今度、ゆっくり見て回ろうと思う。


 ちなみに、戦闘によってレベルは7アップ。クロが5アップ。

 宝箱からは、あまり強いアイテムは出なかった。既に持っているスキルとか、素材とか、そんな感じ。

 お金は、92ゴールドという相変わらず凄い量が手に入ったけど。




◇ ◇ ◇




「ここ……ですか?」

「そ。ここだよ!」


 案内されてやって来た場所は……池だった。

 意外と広めで、水がとてもきれいな池。


「意外と普通ですね。ジニさんのことだから、何か裏があるのかと思ってましたよ」

「失礼な。ボクだって釣りがしたいんだから」

「まあ、そうですよね。……それじゃあ、釣りましょうか」

「ふふ、そうだね」 


 なんとも肩透かしだけど、ここなら、わざわざ遠出して来た甲斐があったかもしれない。

 どうしても拭い切れない不安があるのは、ここに連れて来たのがジニさんだから、しょうがないとも言えるんだけど。

 ま、今回ばかりは、まったりゆったりと釣りができそうだね。

 ジニさんに感謝。


 珍しくジニさんに好印象を抱きながら、『集中』を起動して、私は池に釣り糸を垂らした。







 糸を垂らして数十秒、早速反応があった。

 昨日の水龍みたいな感じはしない。ひとまずは安心。


 私は竿を揺らしながら、徐々に引いていく。

 こういう場合、リールがあったら楽なんだろうけど、当然と言うべきかこの世界にそんなものは無い。

 いや、スロットマシンとかミシンとかガチャガチャとかがあるんだから、リール付きの釣り竿くらいあってもおかしくないけど。

 ま、無いもの無いので、文句を言っても仕方がない。

 

 糸を引いたり、竿を動かしていたりしていると、私が苦戦していると見たのか、ジニさんがアドバイスをくれた。


「これゲームだからさ、別に竿を動かしたりしなくても、引き上げるだけで釣れるよ」

「あ、そうなんですか?」

「うん。たま~に、一生懸命に竿を振った挙句に失敗してるプレイヤーとか見かけるけど、それ、意味ないからね」

「へぇ、ありがとうございます」


 なるほど、それは良い情報を聞いた。

 早速そのアドバイスの通り、竿を思いっきり引き上げる。


 そして釣れた。


 変なのが釣れた。


「うお、ツユちゃん凄ッ! 金色のマグロだよ! ゴールデンマグロだよ!」


 うん、マグロだ。大きくて金色に光るマグロだ。

 んーまあ、龍が釣れるよりかは全然マシなんだけど。

 どうしても、いくつか突っ込みたいことがある。


 まず、その色。

 金、金だよ? ゴールドだよ?

 金色の魚って言われてすぐに思いつくのは、鯛と金魚くらいだよ。

 間違っても金色のマグロなんて知らない。


 いや、うん。ここってゲームだしね。それはまだ良いんだよ。

 レアな魚ゲット! って考えれば、逆にありがたくもなる。


 でもさ、マグロは良くないよ。

 私、魚にはあんまり詳しくないけど、ここでマグロは良くないと思う。


「ジニさん、ここ、池ですよね?」

「え? うん、そうだけど」

「これ、マグロですよね?」

「う、うん。それがどうしたの?」


「いや普通、池でマグロって釣れますか?」

「あ……」


 どうやらジニさんも気がついたらしい。


 ここは池。

 釣れたのはマグロ。

 いくらゲームだからって、池でマグロは在り得ない。

 これらが行き着くのは、そう。

 バグ。


「ジニさん、これ絶対にバグですよね」

「うーん、どうなんだろ。ここって一応ファンタジーだしなぁ。…………それに魚爺も釣れたって言ってたし……」


 最後の方はよく聞こえなかったけど。

 そんなこと言ってしまったら、ファンタジー世界にマグロがいること自体おかしいと思います。


「とにかく、運営には一応連絡しておこうか」

「ですね」


 バグかもしれない。

 とは言え、以前起こったドラコちゃん騒動よりかは、全然マシなものだし。多分。

 なので、とりあえず運営さんに連絡して、私たちは釣りを開始することにした。






――【ツユ】――

・個体名「聖竜人・アメシストドラゴン」

・LV「42」☆

▷MONEY「38,706,380」

▷CASINO「0」

――【STATUS】――

・HP「7360/7360」

・MP「7360/7360」

・SP「7360/7360」

・STR「4600」(50)

・VIT「4600」(120)

・INT「4600」(50)

・DEX「4600」(1760)

・AGI「4600」(370)

・LUK「4600」(320)

――【WEAPON】――

▷両手「白龍鱗のショットガン」

▷右手「道化師のナイフ」(納刀中)

▷左手「道化師のナイフ」(納刀中)

――【ARMOR】――

▷頭「海のヘアバンド」

▶手

 ▷右「海のミサンガ」

 ▷左「海のミサンガ」

▷胸「海のセーラー服」

  「海のカーディガン」

▷腰「海のスカート」

▷足「海のブーツ」

――――――――


――【クロ】――

・個体名「聖竜人・アーマードラゴン」

・LV「35」☆

――【STATUS】――

・HP「8500/8500」

・MP「8500/8500」

・SP「8500/8500」

・STR「4250」

・VIT「5950」

・INT「4250」

・DEX「4250」

・AGI「4250」

・LUK「4250」

――――――――

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