Episode 75「燃える羊毛」
まさかLRアイテムが近所の少年が持ってるようなカードだったとは思わなかったよ。
まあ、よく見れば効果は超強いんだけど……。
でも、こんなに強い効果が出たのって、LUKが高いからなのかな?
それとも、LRだから強い能力しか出ないのかな。
どっちにしろ、私にとっては強い能力しか出ないってことになるけど。
と、そんなことを考えていたら使用から1分が経ったらしく、カードの能力変更が可能になった。
もし、これがさっきみたいな強すぎる効果ばっかり出てくるのだとしたら、1分毎ごとにそれを連発できるってことだよね?
それに、使えない能力になったとしても、結局1分待てば能力を切り替えれるんだから。
あ。そう考えるとこれ、結構ヤバいかも。
……………………。
超強力なアイテムを入手したってことで。
それじゃあ、あと三回くらいは試しておこうかな。
これも、もっと強くなって、もっとゲームを楽しむため。
て言っても、この段階でも充分楽しいんだけど。
そんなゲームを生み出してくれたことには、金津子にも感謝だね。
それでも、私の中の金津子さんに対する好感度は低いけど……。
◇
――――――――
『神聖なる光』
・HP・MP・SPを全回復する
・このカードの効果が切れるまで、全ステータスが1.2倍になる
・このカードの効果が切れるまで、あらゆる属性や状態異常などに耐性を得る
――――――――
――――――――
『天獄の天秤』
①相手のHPを全て減らす
②自分のHPを全て回復する
・①か②の内、一つ選んでこのカードを使用できる
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――――――――
『獄炎羊』
・コスト:SP100
・モンスター
・火属性攻撃を一切受け付けない
・羊毛を刈り取ることが可能
――――――――
カードを何度か使ってみてわかったこと。
・カードは、使用したうえでもう一度使用しないと効果が発動することはない。
・効果が持続するカードは、1日経つか、1分経ってカードを再使用しない限り、効果が失われることはない。ただし、スキルや装備の影響で例外はあるかもしれない。
・カードを使うために、コストがある場合は払わなければいけない。
・モンスターと書かれているカードを使うと、カード名にあるモンスターを召喚する。
・モンスターは、カードの効果が切れるか、HPが0になるまでい続けられる。
・モンスターと書かれたカードの、その下記にある効果は、モンスター自体に与えられた能力。
・召喚されたモンスターはこのカードの効果が切れるまでは従魔扱いとなる。
流石にヘルプは無かったから、全部独学だけど……まあ、こんなところかな。
ちなみに私は今、実験として獄炎羊を召喚して、火の羊毛(もはや羊毛とは言えない……?)を短剣で刈り取っている。
『羊毛が刈り取ることが可能』なんて書いてあったら、そりゃ試したくもなる。
試した結果、本当に刈り取れて、『獄炎羊の羊毛』と言う素材アイテムとしてちゃんとインベントリに送られたんだから驚いた。
しかもこの羊毛、いくら刈っても生えてくる。
実際には、私が羊毛を刈ることによって、獄炎羊のHPが減少、そのHPをポーションを使うことによって回復。すると、羊毛も回復。
なんと便利な。
しかもしかも、メールでフレアさんに訊いてみれば、
『このアイテムで超レア装備が作れるレシピはあるけれど、実際に作ったプレイヤーはまだ存在してないと思うわ。それくらい、素材がレアなのよ』だそう。
これは期待できる。
っと。いつの間にかカードじゃなくて獄炎羊の説明になっちゃった。
まあ、これ以上説明することも無いから、もう少し羊毛を刈った後は、一層に戻るとする。
それにしてもこの羊毛、燃えているのに灰にならない……本当に不思議。
◇ ◇ ◇
◇フレファーの街◇
「『ラッキールーレット』」
スキルを使用しても、イベントの方からやって来てくれるわけではないみたい。
とは言え、一層のこの街にはNPCが少なく、お店の商品を売る店員さんはイベントを発生させる可能性がほとんど無い。
それを踏まえると、それに当てはまらない、この街にいる十数人のNPCを対象に探すのが手っ取り早そう。
とは言っても、そういう人たちが、イベントを発生させたことで別のポイントで活動しているという場合だってあるらしい。
それに、必ずしも元からいるNPCが起こすとは限らない。寧ろ、そっちの方が少ないかも。
行商人や旅人として街に訪れたという設定のNPCで、急に現れて、イベントを解決したらいつの間にか去っているみたいなケースもあるっぽいし。
まあ気長にやろうと思う。
街の散策ついでに、改めて観光でもできそうだし。
こういう、ゆっくりとした気分の時にこそ、新しい発見があるかもしれないしね。
その通りに、私は緩い気持ちで街を歩いた。
時折、ギルドの勧誘をされたり、フレンドの申請をされたり、神聖視されたり。
ああ、もうどうしようもないことなんだろうけど、それでも願わずにはいられない。どうか私に、緩やかな日常をください、と。
なんて言っても、その日常を壊してるのは私なんだから本当にどうしようもない。
いえ、わざとじゃないんですよ。あ、いや、最近は割と吹っ切れて、わざとの場合も増えてる気がするようなしないような……?
それでも、最初の頃はわざとじゃなかったんですよ。嘘じゃないです。
そんなことを、延々と繰り返すのかっていうくらいに続けながら、そしてパーティーを組もうと言う勧誘を断りながら、街を一周してギルドホームも近くなっていた職人街を歩いていた。
すると、どこからかすすり泣く声が聞こえる。
男の人の、悲しそうな声。
「アレン。お前は俺が助けてやるからな。もうちょっと頑張ってくれよ」
その声の場所を探す。
すぐに見つかった。
屋台と武器店の間にある路地。
その奥に、石造りの古く小さな家が一軒建っていた。
なぜかはわからない。
だけど私は、気が付いた時にはイベントのことなんか忘れて、歩き出していた。
暗い路地に向かって。
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