Episode 66「二号」
カジキさんの言った、『従魔を召喚不可能に』という言葉が、そのままの意味だとしたら、
『従魔を召喚する』のは不可能だとしても、『スキルで、従魔ではない植物を呼び出す』ことは可能なのでは? という憶測に辿り着いた。
それは、私の陰から生えてきた二本の太い茎を見れば、失敗はしていないと言える。
ただ、まだ成功とは言えない。何故なら、目の前にいる茎は従魔ではなく、私が意識しなければ動かせない、私の体の一部なのだから。
なら、どうすれば成功なのか。
それを今から試す。
「『ライフギフト』!」
『スキルで、従魔ではない植物を呼び出す』ことは可能。それなら、その植物を従魔にすることは、果たして可能なのか。私はそう考えて、今に至る。
そしてその結果は、
《個体名『プラントフィーラ』が従魔になりました》
「せ、成功した!」
私は左手にガッツポーズをつくり、右手は、新たに現れた茎を撫でる。
「君の名前は…………決めるのはこれが終わってからで良いかな?」
もうしわけないけど……すぐには思い浮かばなかったから……。
それに、今って一応は決闘中だし。
それを理解してくれているようで、了承の意なのか、プラフィー二号(仮)はプルプルと可愛らしく震えている。
その光景を目の当たりにしたカジキさんは驚きの表情をしている。
「ああん? なんだそいつ。なんかの触手か?」
「そうですね。そんなところです」
カジキさんの質問に適当に返事をしつつ、インベントリからアイテムを取り出し、即座に二号に使う。
「二号、『大地の恵み』、『ソーラービーム』」
「…………!」
今二号に使ったのは、『大地の恵み』と『ソーラービーム』のスキル巻物。
それを即座に使わせる。
――『ソーラービーム』――
・使用中HP消費
――【EFFECT】――
・HPを消費し続ける間、ビームを撃つ
――――――――
二号は、指示通りに二つのスキルを発動させる。
触手の先端から緑色のビームを放ち、1レベルだからただでさえ少ない二号のHPは徐々に減っていく。
それでも、40しかないHPが、『使用中HP消費』という代償を払わなければ使えないスキルを使って、少しだけのダメージで済ませていられるのは、今覚えさせた『大地の恵み』と、私のパッシブスキルの『可愛がり』、この二つの能力のおかげ。
――『大地の恵み』――
・パッシブスキル
――【EFFECT】――
・体に太陽の光を浴びている間、HP・SPを少しずつ回復する
――――――――
――『可愛がり』――
・パッシブスキル
――【EFFECT】――
・従魔に触れている間、触れている従魔のHP・MP・SPが徐々に回復する
――――――――
それでも、『ソーラービーム』によるHPの素の減りがとても多いため、HPは少しずつ減っていくんだけど、HPの少ない二号にとってはその少しずつが命取りになる。
だから私は、常にHPポーションを二号に使うことを忘れない。
幸い、数に余裕はあるからね。
さてと。後はこの攻撃を二号にさせ続ければ、私はこの闘いを勝利で収めることができるんだけど……
ビームに呑まれたカジキさんの影を捉え、ステータスを確認する。
――【カジキ】――
HP:「760/790」
MP:「790/790」
SP:「790/790」
――――――――
ですよねぇー……。
◇
「おうおう、やってくれたなぁ!」
あれをまともに受けても、HPは30しか減っていない。
スキル『王者の佇まい』でVITに1.5倍の補正があろうと、あれほどまでの防御力はありえない。
となると、他にも防御力が上がるスキルを重ね掛けしているか、今の攻撃は無敵系のスキルで防いだものか……。
前者の場合は、『王者の佇まい』と同威力、もしくはそれ以上の効果を持つスキルを、他にもたくさん獲得している必要がある。だから、可能性は低い。
私にとっては、後者であることを願いたいんだけどね。
何故なら、私が取得している『完全防御』のようなものは、一日一回という使用制限があるから。
たとえ、これと同じようなスキルを複数取得していようと、数回で全ての回数制限が尽きてしまうだろうし。
それはそれで、デメリットもちゃんとあるんだけどね……。
「二号。続けて撃って!」
「……!」
再度スキルを使用する二号。私はすかさず、ポーションを二号に使う。
私も参戦できれば良いんだけど……何せ、遠距離攻撃が無いし……
「ぐッ! お前、中々やるなぁ。それでもまだ余裕だとは……舐めてやがるな?」
未だにビームを受けて苦い顔をするカジキさんが、不意にそんなことを言い出した。
な、舐めてる?
「私が、カジキさんをですか?」
「あ? だってそうだろ。本気の時は爆破攻撃を使うって聞いたぜ」
爆破攻撃……『エクスプロージョン』のこと……か?
あれ? そう言えばなんで、私ってば『エクスプロージョン』を使ってないんだろう……?
……………………。
わ、忘れてた……!
スキルの確認をして。
従魔が増えたり、バグが起きたり。
私が竜になったり。
そんな驚きの連続を体験したせいで、まさか、私の定石である『エクスプロージョン』を忘れていた……!?
そ、そそ、そんな……ま、まさか……
や、やっちゃったよぉー……。
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