超ゲーム初心者のVRMMO！

Episode 56「人形」

「ガゴちゃん？」

　右手を差し出す。

「それともガゴ君？」

　左手を差し出す。

「ガガ」

　私の左手に、ゴーレムもといガゴ君（ガンセキとゴーレムの頭を取った）のゴツゴツした岩の手が置かれる。

「なるほど。男子だったか……」

　凄い！　ゴーレムとも意思疎通ができた！

　これで可愛さ五割増しだね。

　というか、ゴーレムに性別があること自体、割と衝撃的。

「えっと、それじゃあ私は、スキル確認の続きをするから、クロと一緒に遊んでてね」

　私は『絆の指輪』からクロを召喚する。

　仲良くしてくれると良いなぁ……そんな心配も杞憂だったようで、いきなりじゃれ合ってる。

　従魔のコミュ力、恐るべし。

　そんな二人を後目に、私はもう一度スキルを確認する。

――『ライフギフト』――

・相性の良い食料を大量に消費

・なんらかの生物を模（かたど）った人形を対象にして使用可能

――【EFFECT】――

・対象に自我が芽生える

――――――――

　ガゴ君の衝撃で、このスキルでもう一つ試したいことがあったのを忘れていたよ。

　『なんらかの生物を模った人形を対象にして使用可能』ということは？

　その人形は、人型でも、小動物型でも、巨大生物型でも良いってことだよね？

　そして、その人形というのは何を指すのか。

　ゴーレム？　マネキン？　ぬいぐるみ？　はたまたその全部？

　ゴーレムは実験済み。見事に大成功。

　私が思いついたもう一つ。それは、

《個体名『ドラコ』が従魔になりました》

　せ、成功した！　やった、やったよぉぉお！

◇

　ふぅ、やっと落ち着いた。

「大丈夫ドラ？」

　か、可愛いすぎる……！

　翼をパタパタと動かして宙に浮く、小さくて赤いドラゴン。

　そのドラゴンとは、FLOマスコットキャラクターのドラコちゃん。

　そう、あのドラコちゃんだよ！

　第一回イベントの開始直前と終了直後に、色々と説明してくれたドラコちゃん！

　目の前で見るとより一層可愛いね。

　で、どうやって従魔にしたかと言うと。

　『なんらかの生物を模った人形』が対象なら、ドラゴンを模った『ドラコ人形』は完全に対象内だと思ったんだよ。

　こういう使い方で合ってるのかはわからないけど……可愛いから許す！　というか許してください！

　ほら、私って半分は運営側の人間じゃん？　だから、FLOのマスコットキャラであるドラコちゃんを連れているのは、非常に宣伝としても効果がある。と思うんですよ。

　今度、金津子さんを説得しよう。

「や、やめるドラ。恥ずかしいから、そんなまじまじとみないでほしいドラ」

　……………………。

　レイミーやミカとミズキの気持ちが、ちょっとだけわかった気がする。

「えーっと、ドラコちゃん、で良いんだよね？」

「そうだよ！　ボクの名前はドラコドラ！　これからよろしくドラ～」

「うん、よろしくね」　

　この際、ちゃん付けか君付けかは迷わない。ちゃん付けなら、男の子でも女の子でも、この容姿に当てはまるからね。

　うん、可愛い。可愛いよ！

「どうしたドラ？」

　ハッ！？　いけない、いけない。

「私はスキルの確認があるから、向こうにいるクロとガゴ君と一緒に、遊んでいてもらえるかな？」

「わかった！　任せるドラ！」

「仲良くね？」

「ドラドラ～」

　なんだろう、この幸福感。

　まるで天国にいるような……も、もしかして、これがハーレム！？

　レイミーがハーレムについて熱く語っているのを呆れた目で見ていた私が？　ハーレム？

　そ、それはそれで……。

　そ、そうだ、スキル確認の続きをしないと！

◇

――『ポイズンブレス』――

・使用中MP・SP消費

――【EFFECT】――

・MP・SPを消費し続ける間、毒が付与されたブレスを放つ

――――――――

　これ、威力はめっちゃ高いと思う。しかも毒付与。

　でもさぁ……使用すると、口から出るんだよね。ブレスが。

　いやまぁ、当然っちゃ当然なんだけど。だってブレスなんだからね。

　でも、ねぇ？　やっぱり、ほら。

　クロが放つブレスと、私が放つブレス。見比べて――

　あ、ごめんなさい、やっぱり見比べないで。というか想像しないで。

　あ、あと幾つか、スキル巻物が残ってたから、クロに覚えさせよう。

　なので私は封印！

　次！

――『ソーラービーム』――

・使用中HP消費

――【EFFECT】――

・HPを消費し続ける間、ビームを放つ

――――――――

　まさかさぁ、これも口から放たれるなんて思わなくて……。

　だってビームだよ？　ビームって普通、指先から出すんじゃないの？　知らないけど。

　……………………。

　これも封印！

　次！

――『プラントフィーラ』――

・LV有り

・残りHPの半分を消費

――【EFFECT】――

・植物の触手を個体として出現させる

――――――――

　『プラントフィーラ』。これも気になってたスキルの一つなんだよね。

　LV有り？　植物の触手を個体として出現？　どういうこと？

　とまあ、色々考えたわけだけど、結局は百聞は一見に如かずということで。

「『プラントフィーラ』！」

　……おぉ！？

　目の前の地面から、いつか戦ったあの食人植物の茎が二本、ニョキニョキっと。

　なるほど。これが植物の触手ね。

　――ん？　ステータスはちゃんとあるみたい。

　――【プラントフィーラ】――

・個体名「プラントフィーラ」

・LV「1」

――【STATUS】――

・HP「40/40」

・MP「40/40」

・SP「40/40」

・STR「10」

・VIT「10」

・INT「10」

・DEX「0」

・AGI「10」

・LUK「0」

――――――――

　こ、これまたお強いことで……。

　DEXとLUKが0だけど、それ以外はクロと同等。

　HP・MP・SPに関しては、クロ以上の数値。

　強さは申し分ない。ただ、問題点が一つ。

　この触手、私が操作しないとダメなやつだった……！

　無理！　戦いながら二本の触手操作するとか人間にできることじゃない！

　ちょこっと動かしたり、命令すると勝手に動いたりとか、そういうのじゃないんだよね。

　本当に、自分の手足ように扱わないといけない。そんなの無理だよぉ。

　……ん？　ちょっと待って？

　命令すると勝手に動く。これイコール、自我があるってことだよね？　そうだよ。なら、自我を与えれば良いのでは？

　そう思った私は『ライフギフト』を即刻使用する。

　人形じゃないから流石に無理かな？

　まあ今回は、ガゴ君とドラコちゃんが従魔になっただけでも充分――

《個体名『プラントフィーラ』が従魔になりました》

　あ、できた。

　まさか植物相手を人形と判定するとは……なんか凄い。もう、なんにでも使えそう。

　しかも、プラントフィーラが勝手に動き出して……めっちゃフルフルしてる。ちょっと可愛いかも。

　触手と言っても、タコみたいなのじゃなくて、ちょっと太めの植物の茎かな。

　それと、命が芽生えたんだから、名前は付けないとね。

　さて、どうしよう。

　プラントフィーラ……プラントフィーラ……。

　プラ……は良くないね。捨てられちゃいそう。

　フィーラ……は多分、一つの単語だから、名前には合わない。

　じゃあ、合わせて……プラフィー……うん、プラフィー！　良いね！

「じゃあ、……君？は今日から、プラフィーだよ」

「…………」

　お、おぉ。

　喋れないからか、全力で茎を振り回してる。

　これ、嬉しいってことで良いんだよね？

「それで、質問なんだけど……」

「……？」

「女子？　男子？」

　右手を女子、左手を男子として、目の前に見せる。

　対するプラフィーは、首を傾げるならぬ、茎を傾げている。……か、可愛い。

　でも、そっか。性別は無いらしい。もしくは、言葉の意味が理解できていないだけか。

　多分、前者だと思うけど。

「…………」

　二本の茎がめっちゃフリフリフルフルしてる。ずっと見ていられそ……う？

　二本の茎が、フリフリ……そうだ、茎は二本ある。

　ということは……まさか兄弟！？　それとも姉妹！？　もしくは親子！？

　こ、これは訊いてみないと。

「えっと、もしかして兄弟？」

「…………」

　首……じゃなくて茎を横に振っている。これはノーだね。

「じゃあ、姉妹？」

「…………」

　これもノー。

　よく考えてもみたら、性別が無いなら、兄弟でも姉妹でも変わらないよね。

「ということは、親子？」

「…………」

　あれ？　これもノーだ。

「もしかして、二つで一人？　というか一匹？」

　植物の数ってなんて言うの？　プラフィーは生きてるから、一匹で合ってるのかな？　多分間違ってるね、うん。

「…………！」

　お、どうやら正解だったみたい。

　へー。茎は二本あるけど、それはどっちも同じ個体、ということらしい。

　ガゴ君、ドラコちゃん、プラフィーが新しく仲間になって、一気に賑やかになった。

　――のは良いんだけど、傍から見たら、凄くカオスな状況になってる。

　ドラゴン、ゴーレム、マスコットキャラクター、茎。

　傍から見なくても、冷静になれば普通にカオスだった。

――【ツユ】――

・LV「28」☆

▷MONEY「23,943,380」

▷CASINO「40,000,000」

――【STATUS】――

・POINT「0」

・HP「780/780」

・MP「780/780」

・SP「780/780」

（全ステータス30％上昇）

▷STR「234」（760）

▷VIT「234」（1160）

▷INT「234」（160）

▷DEX「234」（350）

▷AGI「1014」（530）

▷LUK「2330」（50）

――【WEAPON】――

▷両手「白龍鱗のショットガン」

▷右手「道化師のナイフ」（納刀中）

▷左手「道化師のナイフ」（納刀中）

――【ARMOR】――

▷頭「毒龍のヘルム」

▶手

　▷右「毒龍のガントレット」

　▷左「毒龍のガントレット」

▷胸「毒龍のアーマー」

▷腰「毒龍のスカート」

▷足「毒龍のブーツ」　

▷その他

　「毒龍のマント」

　「毒龍の心臓」

――――――――

――【クロ】――

・個体名「ブラックアーマードラゴン」

・LV「24」☆

――【STATUS】――

・HP「2220/2220」

・MP「2220/2220」

・SP「2220/2220」

・STR「740」

・VIT「740」

・INT「740」

・DEX「740」

・AGI「740」

・LUK「740」

――――――――

――【ガゴ】――

・個体名「岩石ゴーレム」

・LV「1」

――【STATUS】――

・HP「40/40」

・MP「20/20」

・SP「40/40」

・STR「15」

・VIT「15」

・INT「5」

・DEX「5」

・AGI「10」

・LUK「10」

――――――――

――【ドラコ】――

・個体名「ドラコ」

――【STATUS】――

・Object

――――――――

――【プラフィー】――

・個体名「プラントフィーラ」

・LV「1」

――【STATUS】――

・HP「40/40」

・MP「40/40」

・SP「40/40」

・STR「10」

・VIT「10」

・INT「10」

・DEX「0」

・AGI「10」

・LUK「0」

――――――――