Episode 38「二大勢力(?)」

 二人の紹介が終わって、レイミーとフレアさんは昨日と同じくプレイスキル上げ。


 ヘッドさんはお店に戻って武器を製作するとか。


 残ったのは、私とスノウちゃん、美香(プレイヤー名は〝ミカ〟)と美月(プレイヤー名は〝mizuki〟)の四人。


 そのメンバーで、今から何をしようかとテーブルの上で駄弁ってたら、ミズキが変なことを言い出した。



「え、じゃあさ、アリスを泣かしたのは、ツユってこと?」


「……? アリスって誰……? それに、泣かしたってどういうこと?」


「――先輩。昨日のカジノでのこと、覚えてますか?」


「え? う、うん、覚えてるけど……」


「あれのおかげで、現カジノマスターは確実にカジノマスターではなくなります」


「確かにそんな話もしたけど」


「そのアリスというのが、一代目カジノマスターです」


「それで、そのアリスさんが、泣いてしまったと」


「そうです。が、問題なのはここからです」



 スノウちゃんがそこまで話すと、今度はミズキが続きを話し始めた。



「ねぇ、アリス・レイアって知ってる」


「あー、うん、配信者さんのことでしょ? 私も最近、たまにだけど見てるよ」



 え、なんで今、そんな話を? そう疑問を持つ前に、頭の中で答えが出る。



「も、もしかして、そのアリスさんって……!」


「そ。アリス・レイア、本人」


「先輩はそんな有名人を図らずも泣かしてしまったとかで、SNSでトレンドになってますよ。流石です、先輩!」



 いやいや、何も流石じゃないから!


 それって、私がアリスさんを泣かしたから、ネットで叩かれてるってことでしょ? ヤバイ、本格的にヤバイよ!


 謝りに行った方が良いかな? せめてメッセージだけでも送った方が良い?



「そこで先輩、提案があります!」


「て、提案……?」


 

 もしかして、この状況を打破する解決策が? それは助かる!



「先輩がカジノマスターになることはほぼ確定していますが、追い抜かれる可能性はまだあります。相手は昨日も、たった一夜で100万ポイントも稼いだ猛者ですから」



 ようするに、このまま何もしなければ、アリスさんは私のポイントを追い越して、カジノマスターの座は守られる! うん、これで――



「なので、今からポイントを稼ぎに行きましょう!」


「お、良いねぇ~」

「私賛成!」

「は?」



 …………は?



「え、ちょっと待って? なんで稼ぎに行くの? というか、なんで二人も協力的なの!?」



 私は予想していなかった答えに驚いたけど、二人は何故か乗り気。


 わけがわからない。



「有名人に喧嘩を売ってるようなものだよねぇ!?」


「だって、面白そうじゃ~ん」

「私、動画とかあんまり見ないから、Vtubarもあんまり興味ないし。だからなんでもオーケー」



 いや、実行する本人である私からすれば、全く良くないんですけど!?


 

「まぁまぁ、行こうよ~」

「そうそう。派手に荒らそう!」

「そうですよ、先輩。――大体、先輩はアリスに直接手を出しているわけじゃないんですよ? ゲームをしているだけで……それなのに叩かれるのはおかしいです! 目に物見せてやりましょう!」


「えぇー……」



 というか二人はまだしも、スノウちゃん、アリスさんに対して当たり強くないかな?


 なんて思っても、押しに弱い私はなすすべ無くカジノに連行された。







「はあぁ~……。ねぇ、これでもう良い?」



 プレイヤーの所持するポイントが映し出されている黒いボードには、一番上に金色の文字でこう書かれている。



『1位:「ツユ」(30,000,000)』



 その次に、



『2位:「アリス・レイナ」(1,505,500)』



 あ、アリスさん、ご、ごめんなさい、許してください。


 違うんです、これは、その……友達に押し切られてしまったせいであって……。


 う、ギャラリーの皆さん、「アリアリに謝れー!」とか「アリスちゃんが可哀想だぞー!」とか言わないでください。


 

「あ? ツユはふっつぅーにゲームをプレイしてるだけだっつうの!」

「そうだそうだ~」

「先輩は何も悪くないです! 悔しかったら勝ってみろってんだ!」



 おぉっと何をしているのかな?


 特にスノウちゃん、キャラ変わってるよ?



 私は三人を連れて、カジノから出ようとする。


 その瞬間、別の喧噪が起こり出した。



「そうだぞ! ツユ様は何も悪くないッ!」

「ツユ様に近寄るんじゃないッ!」



 現れた救世主さんは、杖を持ったお兄さんと、後ろは短剣を腰に収めてるお兄さん。正直言って、救世主どころか、危ない人にしか見えない。


 どちらも、サラリーマンくらいの年齢……なんだけど、それに加わって騒ぎ始める人も多数。


 カジノには、「ツユ様ッ!」「アリアリッ!」と重なった声が聞こえ始める。


 いやツユ様って何!? なんで様付け!?


 そして暫くの間、正確には1時間程にわたって、ふたつの名前の叫び合いは行われた。


 最終的には、私側とアリスさん側のリーダーが、お互いの雄姿を認め合い握手を交わし、同盟…………うん、意味不明な結果になった。


 かくいう私は、三人もその喧噪に混じってしまった為暇になってしまったので、スロットマシンを作業みたいに動かしていました。



 あっ! 暇潰しのつもりでやってたら、いつの間にか4千万ポイントに!



 え、ちょ、本当? 


 あ、でも、結託(?)してたからもう大丈夫だね。



 ……………………。



 ……多分。……そうであってほしい。






――【ツユ】――

・LV「26」

▷MONEY「980,380」

▷CASINO「40,000,000」

――【STATUS】――

・POINT「15」

・HP「260/260」

・MP「260/260」

・SP「260/260」(100)

(全ステータス20%上昇)

▷STR「312」(200)

▷VIT「312」(740)

▷INT「312」(20)

▷DEX「312」(20)

▷AGI「374」(520)

▷LUK「11790」(50)

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