Episode 37「美香と美月」

「露音ぇ、ハグして~」

「私もぉ~」


「いやしないから」



 7月16日、金曜日。お昼休み。



「よしよししてぇ~」

「私もぉ~」



 彼女らは、〝大城おおしろ美香みか〟と〝園野えんの美月みづき〟。


 いっつもこうして甘えてくる。


 しなかったらしなかったで、そっけない露音ちゃんも良き、とか言い出すから、軽くて大して恥ずかしくもないことならしてあげている。



「あふん」

「うふん」


「変な声出すな」



 ほんと、何が嬉しくて、撫でられたいとか思うんだろう……?



「そう言えば露音、FLO始めたんでしょ?」

「そうなん――でゅえっ!?」



 い、今の声何?



「つつ、つ、つつつ露音が!? ゲームを!? しかも最新の!?」


「ちょ、うるさいって」


「し、信じらんない。変なもの食べてないよね……?」


「そんなわけあるか!」


「美月、驚く気持ちはわかるよ。私も最初知った時は、どの病院を勧めるか考えてたもんね」


「何してんの。――というか、どうやって知ったの? 美玲から?」


「ん? 違うよ? イベントの結果発表の時だよ」


「――ッ!?」


「なんか黒い竜を連れてて、凄いなぁと思ったから近づいてみたら、プレイヤーの顔がまんま露音だった」


「へ、へぇ~。ひひ、人違いだと思うよ?」


「あ、そうなんだぁ~。ツユって名前だったから、絶対露音だと思ってたんだけどなぁ~」



 えっと、何? なんでそんなににやけてんの?


 私知ってるよ、みたいな顔ですね。



「え? 露音って、あの不死身のツユなの? もしかして凄い人なの?」


「さ、さぁ? どうだろうね……」


「え、何その反応……」



「……………………」



 無言の私。



「……………………」



 無言の美月。



「……………………」



 にやける美香。



「ごめん、ちょっとお手洗いに――」

「まっっじでええぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!?」




◇ ◇ ◇




「ほ、ほんとだ……! 露音って、ツユだったんだ……! ヤバイ、なんかヤバイ!」



 この調子でずっとヤバイヤバイ言ってる美月。


 私たちは一層の噴水前で待ち合わせて、私は暫く無言である。



 はぁ、ついにバレてしまった。しかも、友達に。


 

「ツユ~、ゲームは苦手だったんじゃないの~?」



 美香の、〝ツユ〟の言い方。あれは、煽ってる時の使い方だ。


 別に良いんだけど! 寧ろ、こっちではそう呼んでほしんでけどね!



「今もゲームは苦手だよ。なんかたまたま、こうなちゃっただけ」


「たまたまって……。ツユのプレイ時間、たったの20時間じゃん。それで、たまたま、イベント1位を取れるもんなの?」


「寧ろ、偶然じゃなきゃ、この短時間で、この私が、1位を取れるはずないよ」


「それは確かに……」



 ぐっ、それで納得されるのも嫌なんだけど……今はこう言うしかない。


 というか、事実だし。



「でも、そんなに強かったら、ギルドの勧誘とか沢山きてるでしょ」


「? そういうのは無いかな」


「え? いやいや、それは無いでしょ。――あ、もしかして、もうギルドに入ってる感じ?」


「うん、入ってるね」


「あぁ、そっかー。それは残念」


「……残念?」


「私たち、この前さ、もしもツユがFLOやってたら、一緒にギルド創りたいなぁって話してたんだよね~」


「そうなんだ。……てことは、まだ創ってないの?」


「え? あ、うん。まだだね」


「それなら、私のギルドに入る? ギルドメンバーのみんな、優しいし、多分大丈夫だと思うよ。それに今、ギルドメンバー募集中だから」


「マジで!? 入りたいかも!」


「わかった。仲間に連絡してみるね」


「ありがと~! ほら美月、いい加減目を覚ます!」



 この二人も、実力はかなりのものだと思う。だってなんか、装備が光ってるし。


 しかも友達。


 そんな二人がギルドに加入してくれたら、私も嬉しいしね。



――『ギルドメンバー捕まえました』――

 リアルの友達で、二人います。ギルドメンバーに誘っても良いですか?


《ツユ》

――――――――


――『助かるわ!』――

 ギルドマスターはツユちゃんだから、好きに決めて良いのよ。三人には、私から伝えておくから


《フレアラ》

――――――――


――『ありがとうございます』――

 早速ギルドに連れてきますね


《ツユ》

――――――――



 よし、これで良いかな。


 フレアさんにはお世話になりっぱなしだけど、今は甘えておこう。



「二人とも。オッケーだってさ」


「やったねぇ~!」

「え、何? どいうこと? どういう状況?」







◇『不死竜』ギルドハウス◇




「ツユが紹介したい新メンバーって、美香と美月だったんだ」


「うん、これからよろしく~」

「なんか変な感じだね」


「あら、レイミーちゃんとも知り合いだったの?」


「これからよろしくな」


「先輩のお友達なら、仲良くしたいです!」



 各々が自己紹介をする。


 そして何故か、私の話になった後は、装備の話。


 それで二人が、なかなかの上級者ということがわかった。


 そして、余ってるアイテムを渡して、この家にもうひとつ、部屋を追加した。


 

 これから、楽しくなりそうだなぁ。


 ただ、二人にも私が冷たい目で見られないか、それだけが心配だよ。






――【ツユ】――

・LV「26」

▷MONEY「780,380」

▷CASINO「10,000,000」

――【STATUS】――

・POINT「15」

・HP「260/260」

・MP「260/260」

・SP「260/260」(100)

(全ステータス20%上昇)

▷STR「312」(200)

▷VIT「312」(740)

▷INT「312」(20)

▷DEX「312」(20)

▷AGI「374」(520)

▷LUK「11790」(50)

――――――――

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