Episode 36「とある深夜配信」

「はあぁぁ~……」


 

 めっちゃ疲れたあぁ~。


 逃げるようにしてギルドハウスに帰ると、どこからかカジノの情報を仕入れたレイミーとフレアさんにお説教されてしまった。


 そして30分後、やっと解放された私はすぐさまログアウトして、今、ベッドの上で横たわっている。


 

 スマホを確認。


 時刻は18時3分。まだ6時になったばかり。


 家に帰ったのが16時30分頃だから、約1時間30分もの間、ゲームをプレイしていたことになる。


 向こうでは5時間以上過ごしているけど、……やっぱり不思議だよ。


 脳の思考を加速できたり、NPCと呼ばれるAIは人と全く同じ思考をしたり。


 最近の科学は本当に凄いなぁ。



「ねぇー、お姉ちゃん。土曜日ひまー?」


「うえッ!? い、いい、いつからそこに居たの!?」


「お姉ちゃんが起きる10秒前くらいからかな?」


「なんで私がゲームしてる時に入ってくるの。ノックしてっていつも言ってるでしょ?」


「ノックしたよ? けど、返事が無かったから入った」


「いやいや、返事が無かったら入らないでしょ、普通」



 はぁ、我が妹ながら呆れる……。


 ん?



「なんでにやけてるの?」


「んー? お姉ちゃん、変わったなーと思って」


「そお? 至って普通だと思うけど……」


「うん、今は普通だよ。今までが異常だったの」



 妹よ、実の姉に対して異常とな?



「で、なんの用?」


「土曜日空いてる? 暇なら一緒にゲームしようと思って。最近、ずっとやってるみたいだし?」



 と言うことは、FLOのことかな。


 というかなんで、ずっとやってることを知ってるんだろう。



「まさか、毎日部屋に入ってきたりしてないよね?」


「べ、べべっ、べっつにー」



 こいつ……。


 

「はぁぁ……、まあいいや。――多分暇だしね、別に良いよ」


「むふふ~」



 ?



「陽音、最近は機嫌が良いよね。なんか良いことでもあったの?」


「んー? 何にも無いよ~」


 

 絶対何かありそうだけど……教えてくれそうもないし、あまり詮索するのはやめておこう。




 暫くは私の部屋で話し込んだ。


 途中、謎の不死身プレイヤーがランキング1位を取った話とか、謎の黒い鎧を纏ったプレイヤーがカジノに来て1日で1千万ポイントをたたき出した話とか、初心者の私には難しい話ばかりしてたなぁ~…………。



 これ、土曜日にバレるんじゃないかな? そんな不安だけを残したまま、晩御飯を食べて、勉強と課題をして、お風呂に入って、眠りについた。




◇ ◇ ◇




◇カジノ◇




「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待ってえぇぇええ!」



――【コメント欄】――

「どしたの」

「うるせえ。だが許す」

「あれだしょ? カジノ10万P事件」

「カジノってなんぞや?」

――――――――



「なんで、なんで私の……1ヶ月間ついやした50万の記録が……」



――――――――

「5万の記録が、ぽっと出の女なんかに! むっきいいぃ!」

「これ、チートではないらしい。運営コールしてもBANされなかったとか」

「ツユだろ? 俺知ってる」

「カジノってなんぞや?」

――――――――



「しかも……二十倍……」



――――――――

「アリスちゃん、カジノ配信とかしてたくらい、賭け事大好きだもんなあ」

「酒もな」

「上級者向けのギャップ」

「アリアリ、かわいそう……」

――――――――



「いいもん! それなら取り返すだけだもん!」



――――――――

「親御さん方、ここから先は子供の教育によろしくない為、電源をお切りください」

「ぼく、わるいこ」

「アリアリ、お金はあるの?」

「今夜も寝れねえ夜になりそうだぜ」

――――――――



「お金は……28ゴールドあるから、とりあえずスロット回すよお!」



――――――――

「明日会社です。無断欠勤になりそうです」

「ソロで28万も稼げるんだから、ギャンブルなんてしなくても……」

「アリスちゃんは肩書きが大好物だからな」

「《10,000》ギャンブルは控えめに……」

――――――――



「スパチャありがとぅ~。だがやめえええん!」



――――――――

「今夜もお酒は回っているようです」

「アリスちゃんがんば!」

「明日、所持金が無くなっているのに気がついて泣く姿が浮かんでくる」

「飲酒はほどほどに」

――――――――



「んわかってるう~! みんな、アリアリ~」



――――――――

「……心配だ」

「……見てられない。だが見る」

「……神のご加護がなんとやら」

「…………」

――――――――




◇ ◇ ◇







「な、なん……で……?」



――――――――

「おはよ~」

「アリアリおはよう」

「あら、いつの間にか所持金が0に……」

「アリスちゃん、飲酒はほどほどに」

――――――――



「き、昨日までは……28万あったはずじゃ……。はッ、もしかしてバグ!?」



――――――――

「アメリカンジョーク」

「でも大丈夫! 50万Pから150万Pになったよ!」

「1日で100万……凄過ぎる、けど、ツユには敵わなかった」

「ツユって何者?」

――――――――



「え……? みんな、何を言ってるの? 私昨日は…………何してたっけ」



――――――――

「アリアリ、昨日は凄かったよ」

「何十時間もスロットマシンに居座ってた」

「ボス周回、またやらないとね」

「お酒怖い」

――――――――



「そ、そんな……私、また、やっちゃったの……?」



――――――――

「Yes」

「残念です」

「次があるさ」

「初見です」

――――――――



「いぃぃ~やぁぁ~だぁぁ~! わたじの゛にじゅう゛はぢゴールドお゛ぉぉおお゛~!」



――――――――

「俺、28ゴールドを一晩で使うプレイヤー、初めて見た」

「ツユってさ、全部777か剣を出してたんだろ?」

「マジ化け物」

「《50,000》アリスちゃん、元気出して!」

――――――――



「あ゛りがどお゛ぉぉお゛お゛!」



――――――――

「おっと、会社に行かなければ」

「アリアリ、失敗を成功に繋げていくんだよ」

「頑張って……」

「がんば……」

――――――――

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