Episode 35「カジノ」
か、カジノだ……!
スロットマシンやトランプ、他にも娯楽程度のゲームをしている人も居たりと、中々に賑わっている。
「この世界、電気って無いんだよね? スロットマシンは動いてるけど……」
「それはあれですよ。気にしたら負けってやつです」
何に負けるのかはわかんないけど、確かにこれは、気にしない方が良さそう。
「じゃあ私、お金をコインに変えてきますね」
「う、うん」
ゲームで遊んでる人たちの中には、プレイヤー以外にNPCも楽しそうに遊んでいる。
プレイヤーを含めて、泣いている人も沢山いるけど……負けちゃったのかな……。
わ、私はあぁいう人みたいにはなりたくないなぁ……。
「先輩っ、どれか面白そうなのは見つけました?」
不安になってる私に、数えきれない程のコインが入った大きめのコップのような入れ物を、ふたつも抱えて戻って来たフレアちゃん。
誰がどう見ても、ギャンブル用のコインだ。
「わ、私はやらなくていいかなぁ……。負けちゃったら嫌だし……」
「えぇー。そんなこと言わずに、一回だけでも! 私のコイン上げますから! お願いします、先輩なら大当たり引きますよ!」
ぐ、圧が強い……!
「わかった、わかったから」
「本当ですか!」
「えっと、それで何をすれば良いの?」
「うーん、完全に運ゲーが良いと思うんですよねぇ。それに、運任せでもカードはダメです、あれはNPCが切るから、システムに依存できない。それだと、機械系が良いと思います。手動で動かさず、全てをシステムに任せれるもの」
ごめんなさい、何を言ってるのか理解できないよ。
「ゲームを自動で行ってくれる、ビデオ式のリールスロットが良さそうですね。掛け金は他のと比べると少ないけど、最大掛け金額で最高結果を出すと50ゴールド分。次がURの武器。試しにやってみる価値はありそうですね」
「えっと……これをやれば良いんだね。それだけはわかったよ」
「じゃあ、これを使ってください」
「うん、わかった。――うん?」
使ってください。そう言って機械にコインを投入していくスノウちゃん。それは全部で、1ゴールド分の10万ポイント。
間違いなく、試しで出す額じゃない。
「ちょっと、それは流石に入れ過ぎじゃ……」
「大丈夫ですって。先輩ならいけます! 頑張ってください!」
頑張ってって言われても、この機会はボタンを押せば自動で動く仕組みだし……。
だからといって、他人の大金をこの指で失うっていうのはちょっと。
「大丈夫です! 無くなっても怒ったりしませんから! それで負けても、まだ4ゴールドありますし!」
え、手持ちの5分の1もこの中に入れたの!?
「本当に、本当に良いんだね!? 無くなっても知らないよ!?」
「もう無くなってますよ! 後はボタンをポチるだけです!」
か、軽く言うなぁ。
もう知らないから! お望み通りポチるから!
「おお!」
「……」
ポチッちゃった。
デレレレレと音を流して回るみっつの絵柄。
スノウちゃんは何に期待をしているのか目を輝かせ、私はお腹が痛い。
そして早くも、結果が出てしまった。
左が7。
真ん中も7。
最後に右が――
――スライムの絵。
ハズレだった。
「もー、だから言ったのに――」
「待ってください!」
私の言葉を制止するスノウちゃん。
ビクッと驚きで体が震える。何事か、そう思った時、機械がガチャンと音を立てた。
画面を見る。
さっきまで不揃いだった絵柄は、『777』と見事揃っていた。
「へ?」
機械に書かれた報酬の表を見る。
――――――――
最高投入額……5万ポイント
最低投入額……1千ポイント
777……10倍
剣×3……投入額1万ポイント以上で『(UR)インビシブルソード』
投入額1万ポイント未満で『(SR)財宝剣』
竜×3……5倍
宝箱×3……3倍
宝箱×2……1.5倍
金貨×3……1ゴールド
スライム×3……2倍
ドクロ×3……-1万ポイント
――――――——
画面を見る。
――【777】――
・『10万ポイント』
――――――――
《スキル『ラッキーセブン』を獲得しました》
「やっぱり! 私の見立て通りです!」
「み、見立て通り……?」
「はいっ! 先輩のLUKは、完全運ゲーマシンに通用するってことです!」
「それってもしかして……LUKが高ければ結果も高いってこと……?」
「そうです。試しに1ゴールドでやってみましたが、賭けは成功しましたね! 次は最高額を賭けてみたらどうですか? というか賭けてください! 私、見てみたいです!」
人が周りにわらわらと集まってきて、それどころじゃないんだけど。
というか、それが本当だったとして、この状況で二回連続大当たりを引いてしまったら、この前のイベントのような運営コールが……!
「さあっ、先輩! ここが賭け時ですよ!」
「わ、わかったからっ、あなたもっ、肩をっ、揺らすのをっ、やめてえっ!」
投入額設定の画面で、ポイント払いにする。
ポイントは、プレイヤーのデータに書き込まれるらしく、実体は無い。
だから、今さっきの報酬はもう貰ってるということ。
それを可能な限り。――5万ポイントに設定する。
『YES』を押し、『START』も押す。
私はもう、迷わない!
というか、この状況で迷ってたらなんか恥ずかしい!
絵が目まぐるしく回転する。
段々とスピードが落ち、周りのギャラリーらの騒ぎも静かになる。
何せ5ゴールドを賭けたんだもん、そりゃ私だって画面に釘付けになっちゃうこと間違いなし。というか、今なってる。
段々、段々。段々と回転速度が落ちていき、やがて、
左が止まった。
7だ。
真ん中も止まる。
これも7。
そして最後の、右が止まる。
7!
――【777】――
・『50万ポイント』
――――――――
大当たり――!
この場に居る全員が叫ぶ。
「先輩、やっぱりですよ! これでカジノマスターは先輩確定ですね!」
「カジノマスターって……なんかの称号?」
「いやいや、このカジノの所有権ですよ! その名の通り、マスターです!」
あぁ、海外ドラマで見たことあるよ。
カジノの支配権を賭けて勝負をする、みたいな。
え? 私が確定?
その前に、このゲームにカジノマスターとか言うシステムがあること自体に驚きなんですけど!
このゲーム、小学生もやったりするよね!? 教育に絶対良くないよ!
で、周りのギャラリーたちも、「新たなカジノマスターの誕生だー!」とか「こいつツユじゃね?」とか「運営コールしろよ」とか、うるさいったらしょうがない。原因は私だけどさ。
「今日が木曜日、そしてマスター更新日が土曜日の24時だから、それまでに荒らしちゃいましょー!」
この子を止めることは私にはできないと知り、それからはもう、なんと言うか……凄かった、と言うべかな。
何が凄かったって?
あの……その……いや、なんでもないです、本当に。
マスターはポイント制で決まり、毎週日曜の0時0分に更新される。
カジノマスターのメリットは、場所を移動させれる権利と、その肩書き。
前者は、そのまんまの意味。
この場所に移動できる魔法陣を、カジノマスターの好きなところに設置できる。
例えばこの酒場みたいな飲食店に移動すれば、そのお店にはお客さんの出入りが多くなること間違いなしとか、そういうこと。
スノウによれば、近々だと噂されているアプデで、カジノに関する追加要素があるかもしれないだとか。
とりあえず、これからはお金に困ることは無いかな。
……ほんとすみません。
――『ラッキーセブン』――
・パッシブスキル
――【EFFECT】――
・レアアイテムドロップ率、宝箱ドロップ率が7%上昇する
――――――――
――【ツユ】――
・LV「26」
▷MONEY「980,380」
▷CASINO「10,000,000」
――【STATUS】――
・POINT「15」
・HP「260/260」
・MP「260/260」
・SP「260/260」(100)
(全ステータス20%上昇)
▷STR「312」(200)
▷VIT「312」(740)
▷INT「312」(20)
▷DEX「312」(20)
▷AGI「374」(520)
▷LUK「11790」(50)
――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます