Episode 31「ゴーレム」

 ギルド、スキル、家、その他色々。今後の活動資金を稼ぐ為、あわよくばレアアイテムを手に入れる為、今から4人で宝箱集めをすることになった。


 これだけ聞くと子供の遊びみたいだけど、主にフィールドボスを周回するらしい。


 周回ってなんだろう? と疑問を抱いていると、あることを思い出した私は三人に先に目的の場所に行ってもらった。



――【メッセージ(2)】――

・『第二回イベント告知:FLO公式』

・『ツユ様、例の件について:FLO公式』

――――――――



 運営さんからの連絡をすっかり忘れてた。


 辺りに誰も居ないことを確認して、メッセージを開く。



――『第二回イベント告知』――

 早くもFLO第二回イベントがもうすぐ開催されます!

 7/25(日) 13:00~16:00

 参加資格:ギルドに加入していること

 詳しい情報は、イベント開催の前日にメッセージ機能でお伝えします!


《FLO公式》

――――――――



 今日が14日の水曜日だから……11日後の日曜日。


 しかも夏休みだし、用事は無いから参加できるね。多分。


 で、問題はもうひとつの方なんだけど……



――『ツユ様、例の件について』――

 急で申し訳ありませんが、込み入ったお話しをしたいと思っておりますので、ツユ様のお時間がよろしい時に、Fantasia・Land・Online運営にお問い合わせください。

 受け付けにはプレイヤー名を言ってもらえれば、対応させるようにしております。

 080-××××-×××× お問合わせ・9:00~21:00(土日祝含む)


・『ドラコ人形』


《FLO公式》

――――――――


 

 えぇ……なんか深刻そうなんだけど……。


 それに、今回もアイテムが同封(?)されているせいで、なんか闇取引してるみたい……。



 そう言えば、この前貰った『絆の指輪』っていうアイテムなんだけど、これがもうお役立ち過ぎてありがたい。


 いやもう本当に。



――『絆の指輪』――

・従魔との絆が深まる指輪

――【EFFECT】――

・従魔を指輪の中に移動させることが可能

――――――――



 多分、クロのことを知ったうえでこのアイテムを送ってくれたんだと思う。


 これのおかげで、移動中、特に街中では、この前のように注目されることは無くなったしね。


 でもこれのこともあって、やっぱり悪いことをしてる気分になっちゃうんだよねぇ……。


 そ、それはそれとして、今日の夜にでも連絡しようかな。


 ご丁寧に受け付け時間まで書いてあるから、8時には連絡しよう。



 一応、「わかりました、今夜8時頃に連絡します」と返信する。


 よし、ひとまずこれでオッケーだね。


 急いで三人のもとに行くとしよう。



 そう言えば『女王赤蜂の羽』を着ているのに、まだ一度も飛んだことなかったなぁ。


 よし、飛んで行こう、その方が速そうだしね。――飛び方わかんないけど。







 クロに乗って移動するのも良かったんだけど、一度くらいは試してみたかったし。


 で、飛んでみた感想なんだけど――――めっちゃ気持ち良いの!


 やっぱり怖さもあるんだけど、風が音をたててじかに体に当たるのが爽快で、普通に楽しいし最高!


 飛び方は――飛ぶぞ! って念じながら、斜め上にジャンプすれば飛べた。超簡単。


 でも、どこまでも上に行けるわけだはないし、スピードを出した分SPも消費するけど、それ以上の体験はできるかな。



 

 数十秒程、二層名物の山々の上空でニヤニヤしていると、間も無く三人が見えてきた。



 岩山のふもと、事前に知らされていた場所の上まで辿りつくと、ゆっくり降下する。



「おまたせー」


「あら、意外と速かったわねぇ…………?」

「ねえツユ、今、どこから出てきた?」


「? 空から……かな?」



 あ、ちょっと! 「ツユだから」とか「ツユちゃんなら」とか言ってるし!


 あ、でも、ヘッドさんは言葉を失ってる。なんか新鮮。


 でもいつかは、二人と同じ反応になって、冷たい目をされるんだろうなぁ…………悲しぃ。



 切り替えだ、切り替え!



「この辺りにボスが居るんですよね? さっさと倒して帰りましょう!」



 ハッとするヘッドさん。


 そうだ、早くボスを倒して、家を買うんだよ!


 余計なことは気にしない気にしない。悲しくなんてならないもんっ。



 ……………………。







 二層は、東側を岩山に、西側を海に囲まれている国を拠点として攻略していく。


 その岩山の山道、または岩山を繋いで造られたという設定の洞窟、このどちらかを通ってとある村まで行き、そこの村長のクエストを達成すると、第三層へと続くイベントダンジョンへの道が開かれるらしい。


 それはまた今度として、私たちは今、洞窟からずっと北にある、岩山の一帯が不自然に平らになっている場所に来ていた。


 この辺りには、山を吹き飛ばす力を持つゴーレムが住んでいるらしい。


 で、そいつが今目の前にいます、はい。私、何も知らせてもらってないですね。


 え、だって、ようはこの辺りを吹き飛ばした犯人が、目の前の、黒い岩の塊みたいなゴーレムってことなんでしょ?



「さあっ、いくわよ!」

「いつもと違って私たちは死んじゃうから気を付けて」

「そういや、なんか装備が変わってるよな、ツユ」



 この人たち、特にレイミーとヘッドさん呑気すぎない?


 あ、やばい! ゴーレムの宝石みたいな赤い眼が光った。ってことは、起きちゃったんだ。


 ふうぅぅ……落ち着け私。


 よしっ、もう大丈夫!







「『ストライクウォーターアロー』!」

「『ライジングストーム』!」


 

 こういう体が堅そうな相手には、どこか弱点があるか、物理攻撃じゃなく魔法攻撃が効く。当然、二人に教えてもらった情報だけどね。


 

「『ストライクアクス』!」



 青を纏った弓、荒く轟音を鳴らす雷、斧のフルスイング。


 この内、素の威力的には、『ストライクウォーターアロー』<『ライジングストーム』<『ストライクアクス』なんだけど、今の三人の攻撃の瞬間、相手のHPを見ていた結果、


『ストライクウォーターアロー』が240ダメージ。

『ライジングストーム』が325ダメージ。

『ストライクアクス』が80ダメージ。


 と、こんな風になる。

 

 どうやらゴーレムの物理攻撃耐性は、思っていたよりも相当なもののよう。


 私は今の結果を三人に伝えつつも、『エクスプロージョン』を使用する。


 発動可能時間まで残り60秒。……55秒。


 それまでの間、私はゴーレムを引き付けるおとり役に徹する。


 攻撃も加えながら、三人が技や魔法を発動させるタイミングでゴーレムのHPを確認し、それがどれくらいの威力で、どの攻撃技を使えばより多くのダメージを与えられるのか分析する。



「『ライジングアクス』!」



 ヘッドさんの、雷を纏った斧のスイングがゴーレムの足に命中し、ゴーレムはよろける。


 すかさずHPを確認。



――【岩石ゴーレム】――

・HP『9230/12000』

・MP『8000/8000』

・SP『8000/8000』

――――――――



 ダメージは305。



「魔法付与がされた技は有効です! 次は水属性を!」



 偏見だけど、今のところ有効と判断している属性はよっつ。


 光、闇、水、雷。


 闇に関しては習得するのが難しいらしく、この場に使える人はいない。


 光はSP・MPの消費が大きくて、あまり使いたくない。らしい。


 後は水と雷なんだけど……。



「おうっ、サンキュー! 『ウォーターアクス』!」



 ダメージは――



――【岩石ゴーレム】――

・HP「8930/12000」

・MP「8000/8000」

・SP「8000/8000」

――――――――



 ――300!



「レイミーとフレアさんは水属性で! ヘッドさんは『ライジングアクス』をお願いします!」


「わかったわ!」

「ありがとう!」

「ッしゃあ!」



 ヘッドさんが使った『〇〇アクス』という技は、雷属性と水属性では同じ種類の攻撃技でもダメージに差がある。


 普通は雷属性の方が威力が高い。


 だけど、ダメージ差が普段は30程あるらしいのに対して、5しかなかった。


 それは水属性の方がダメージが通るということ。


 だから、威力自体にあまり差が出ない魔法や弓には水属性魔法を。


 それでも雷属性の威力が少しだけでも高かった斧には、『ライジングアクス』を使ってもらう。



 私、ちょっと賢くない?



 と、『エクスプロージョン』の待機時間が無くなり、使用可能という文字が浮かび上がる。


 

「『エクスプロージョン』使うから離れて!」



 ゴーレムの、私に向けられたパンチを横に跳んで避ける。


 片方の腕からも繰り出されたけど、今度はそれを受ける。しかしダメージは一切くらわない。


 ゴーレムの腕は弾かれ、反動で仰向けになりながら倒れる。


 チラッと三人の方を見る。

 

 距離は充分にある。大丈夫そう。


 ヘッドさんだけは、私が今から何をするのか知らないから、不思議そうに見てる。



 私はゴーレムの上に乗り、唱える。



「『エクスプロージョン』!」



 突如私の体は大爆破する。が、私に傷はひとつも無い。


 ゴーレムはと言うと……まだ動けるみたい。



――【岩石ゴーレム】――

・HP「5390/12000」

・MP「8000/8000」

・SP「8000/8000」

――――――――



 爆破攻撃は物理でも素の威力が高すぎるせいか、3000以上のダメージを与えられた。


 すかさずもう一度使用する。


 

「こらっ、ヘッド! よそ見しないの!」



 呆気に取られたヘッドさんに、母親のようなフレアさんの声。


 ……ヘッドさん、ごめんなさい……。



 

 それからは同じことの繰り返し。


 

 三人がダメージを与えまくってくれたおかげで、二度目の『エクスプロージョン』でゴーレムを倒せた。




《プレイヤー『ツユ』がレベル23からレベル26になりました》

《従魔『クロ』がレベル17から21になりました》

《ステータスポイント15を獲得しました》

《『1ゴールド・93シルバー』を獲得しました》

《『岩石の瞳』を獲得しました》

《宝箱『豪華な岩石の宝箱☆3』が出現しました》

《宝箱『豪華な岩石の宝箱☆3』が出現しました》

《宝箱『石の宝箱☆3』が出現しました》






――【ツユ】――

・LV「26」

▷MONEY「706,380」

――【STATUS】――

・POINT「15」

・HP「260/260」

・MP「260/260」

・SP「260/260」(100)

(全ステータス20%上昇)

▷STR「312」(200)

▷VIT「312」(740)

▷INT「312」(20)

▷DEX「312」(20)

▷AGI「374」(520)

▷LUK「11790」(50)

――――――――


――【クロ】――

・個体名「ブラックアーマードラゴン」

・LV「21」

――【STATUS】――

・HP「1050/1050」

・MP「1050/1050」

・SP「1050/1050」

・STR「1867」

・VIT「1867」

・INT「1867」

・DEX「1867」

・AGI「1867」

・LUK「1867」

――――――――

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