Episode 30「ファンクラブ」
今日も学校から家に帰り、FLOを開始する。
昨日辿り着いた二層で目覚める。
すると、メッセージが届いてることに私は気づいた。
次に、その量に驚いた。
赤い文字で(7)とあったから。
――【メッセージ(7)】――
・『第二回イベント告知:FLO公式』
・『ツユ様、例の件について:FLO公式』
・『フレンドになりたいです!:miori』
・『改造よこせ:カイト様』
・『頑張ってください!:ピーナッ』
・『至急ギルドハウスに来て!:フレアラ』
・『ギルドハウスに来い!:ヘッド』
――――――――
えっと……どういうこと?
上のふたつはわかる。後で確認するとして、第二回の告知と後日連絡するって言ってた私宛てのメールだと思う。
下のふたつも、フレアさんとヘッドさんからのメールだと理解できる。二人からメールが来ることなんて無かったから、よっぽどの事情があるんだろうけど。
特にフレアさんのメール。題を見ただけでも、急いだ方が良いとわかる。
だけど他のみっつはなんだろう……? 知らない人からだけど……。
――【フレンドになりたいです!】――
第一回イベントでファンになって、ファンクラブの会員にもなりました!
良ければフレンドになりたいです!
・『(R)スキル巻物』
《miori》
――――――――
――【改造よこせ】――
改造よこさないと運営に通報するぞ
《カイト様》
――――――――
――【頑張ってください!】――
第一回イベントの活躍を見てファンクラブの会員になりました!
これからも応援しています、頑張ってください!
・『プレゼントボックス』
《ピーナッ》
――――――――
うん、ますますよくわからないや。
まず、ファンクラブって何!?
私、そんなものを創った記憶無いんだけど。
ま、まぁ、mioriさんとピーナッさんは応援してくれてるんだよね?
なんでかはわからないけど気持ちだけは受け取っておくとして、カイトとかいう人の文章が気になる。
気になるというか……意味がわからないというか。
別に運営側に通報されたってやましいことは一切無いから構わないんだけど、なんか脅しみたいで怖い。
そもそも、改造ってなんだろう……?
――【至急ギルドハウスに来て!】――
なるべく早く! 帰宅システムで来て!
《フレアラ》
――――――――
他のメッセージに気を取られてる場合じゃないかも。
今はとりあえず、早く帰らないと!
私はギルド情報を開き、帰宅と書かれたボタンを押す。
帰宅システムとは、町等のモンスターが現れないフィールドで使えて、すぐに拠点に戻れるというもの。使うのはこれで初めてだけど、とても便利な機能だそう。
そして私は光に包まれ、ギルドハウスにワープした。
◇
◇『不死竜』ギルドハウス◇
ギルドハウスの1階では、木製のテーブルを囲んだ三人が深刻な表情で何かを話し合っていた。
「こんにちは。……あの、どうしたんですか?」
「あぁ、ツユちゃん! 良かった、何か変なことは無かった?」
「え? いえ、特には何も。知らない人からメッセージが届いてたくらいですかね」
「そのメッセージ、全部で何件あった?」
レイミーも珍しく怖い顔になっている。本当にどうしたんだろう。
「3件だけど」
「はぁ、それは良かった。意外と少なかったな」
ヘッドさんが安堵して、二人は頷く。
その光景に首を傾げていると、フレアさんが説明してくれた。
始めに「落ち着いて聞いてね」と言ってから。
「ツユちゃんのファンクラブができたの」
…………やっぱりね。
「すみません、なんとなくわかってました。3件の内2件が、ファンクラブに入ったとか言ってましたから……」
「そうだったのね」
「でもなんで? 私、何かしましたっけ?」
私がそう言うと、口々に溜息をつく三人。いや、本当にわからないんですけど。
「あのねぇ……ツユちゃんは第一回イベントで1位を取った。しかも、不死身という能力もあって、顔も良い。これだけの要素があれば、ファンクラブくらいできても文句は言えないわ」
そんなぁ……。
「ほら、俺にだって二つ名が付いてるだろ? そんな感じだ」
「いずれツユにも、二つ名が付けられるかもね」
「でもね、ツユちゃんを疎む人も少なからず居るはずよ。もしくは、ツユちゃんの持ってる武器を改造だと思い込んで、貰おうとしてくるプレイヤーとか」
確かにそんなメッセージもあった。
その改造の意味がわからないんだけどね。
「似たようなメッセージも送られてきたんですけど、その改造ってどういう意味なんですか?」
あ、ちょっとヘッドさん! 呆れたような顔しないで!
二人は……もう慣れたみたいな顔してる。それはそれで悲しいんだけど。
「改造っていうのはチートみたいなものだよ。簡単に言うと、ゲームシステムを改造して作った武器のことかな」
なるほど。そりゃ疑われるのも納得はできるけど……改造とかしてないから、私にはどうしようもできないなぁ。
「それと、PKをしてくるやつらも増えてくるだろうよ。ま、死なないって噂が流れてるんだ、相当なバカじゃなきゃ来やしないだろうが」
「まあ、PKのことは覚悟してますけど……ファンクラブに入ったって言ってくる人で、フレンドになりたいってメッセージが届いたんですけど、これって――」
「拒否しろ」
「拒否しなさい」
「拒否だね」
「あ、はい、わかりました」
この人たちもちょっとだけ怖い。
「それと、アイテムも一緒に送られてるんですけど、これは送り返した方が良いですか?」
「それは難しいところね……」
「受け取って良いと思うぜ? 俺もたまに送られてくるしよ」
「私も貰っちゃって良いと思う。ほら、芸能人だって事務所にプレゼントが送られてくるらしいじゃん?」
「そうだわ! それならいっそ事務所を創って、そこに送ってもらうのよ。そうしたら、わざわざメッセージに返信しなくて済むでしょう?」
「それ良いかも!」
「なら、新しい家を買って、そこを事務所代わりにするのはどうだ?」
「良いわねぇ」
「賛成!」
……ふふふ、また勝手に話が進んでるよ。
別に良いんだよ? 怒ったりしてないからね?
それよりも、私の事務所なんて創っちゃったら、私、痛い人認定されない?
…………はぁ~。
どうやら、事務所用の家を買うことが決まったらしいので、今からお金を集めに行きます。
昨日買ったスキルのおかげでお金集めは
精神以外には、ね。
◇ ◇ ◇
◇『TFP』ギルドチャット◇
底辺
『お疲れさん』
剣士
『まさか本当にギルドを創るとは』
魔法少女ロッドちゃん
『ほんとにねぇ~』
魔法少女ロッドちゃん
『ですね』
no name
『ですね、の意味がわからん』
ポリさん
『まあまあ、変態同士で喧嘩しない』
トット
『このギルドに居る以上、お前も変態だからな。お巡りさん」
Re
『確かにw』
底辺
『名無しと杖使いに提案された時は驚いたが、まさかロッドちゃんと弓道部まで来るとは思わなかった』
剣士
『しかも、弓道部までランク上位者だったとは』
Re
『ツユ 様 には敵わないけどね』
トット
『それで良い』
名無し
『それで良い』
ターフ
『なあ、正直誰が誰だかわからんのだが(一部を除いて)』
剣士
『ギルドハウスにボードがあるから、そこに名前を書いとけ、って名無しが言ってた』
no name
『よろしく』
トット
『そう言えば斧使い居なくね?』
魔法少女ロッドちゃん
『別ギルドに行くって言ってたわよぉ』
魔法少女ロッドちゃんの下部
『ですね』
底辺
『別に大して残念ではないが、残念だ』
Re
『どっちw』
ターフ
『書いといたから、後で確認ヨロ』
no name
『thank you』
トット
『んじゃ改めて、ギルドTFPへようこそ、変態ども!』
◇
――――――――
《TFP(ツユ様ファンクラブ創設メンバーパーティー)へようこそ!》
・長すぎだろ↑
・それな
・なんか変態みたいで嫌なんだけど
・私もぉ
・ですね
《名前書け!》
・名無し=no name
・魔法少女ロッドちゃん
・魔法少女ロッドちゃんの下部
・杖使い=トット
・剣士
・弓道部=Re
・犬のお巡りさん=ポリさん
・底辺
・盾で無双したい=ターフ
――――――――
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