Episode 24「赤い蜂」
あの後、数分歩いた先に扉はあった。
「ここがボス部屋かな」
「の、ようね」
二人とも、なんでそんなにキリッとしていられるんだろう?
私なんて、普段は運動なんかしないせいで、もうヘトヘト。
でもここまで来て、やっと終わったー! とはならない。
この大きな、木そのもののような扉を開けてからが本番なのだから。
という風に、私たちはボス戦の毎に意気込んでいるけど、結局死なないのだから、それこそ気を張るだけ。
そう理解していても、
「じゃあ、開けるわよ」
大きくて威圧的なボスの姿を見るたびに怯んでしまう。
「『アローレイン』!」
「『ファイヤーボール』!」
「グオ!」
レイミーの先制攻撃を華麗に避けるが、無数に降る矢の雨は流石に避けきれずにダメージを受けるボスモンスター。
それでも、当たったのはたかが数本、それでは威力は少なすぎる。
――【レッドクイーンビー】――
HP「6970/7000」
MP「4000/4000」
SP「8000/8000」
――――――――
ボスモンスターは名前からもわかる通り、赤い蜂の姿をしている。
ボスなのだから、当然のように大きい。飛んでいるから正確にはわからないけど、私の三倍くらいはありそう。
そして、この数分で私は、今までの戦ってきたボスで一番厄介だと踏んだ。
ステータス的にもだけど、そう思う理由は能力の部分。
気味の悪い羽音は勿論、それを発しながら飛ぶ速度はクロに匹敵する。いや、この場所ではクロは飛べないし、蜂の方が速いとも言える。
そして何より、針が面倒くさい。
もっと言えば、お尻? お腹? が、とても厄介。
何故かって言うと、それが三つもあるから。
しかもお尻の針はミサイルのように遠距離からの射撃が可能で、本来の蜂は針を失えば死んでしまう的なことを聞いたことがあるけど、こいつは違う。
針を一本失ったところで、HPが0なるわけはないし、ダメージさえくらわない。
じゃあとりあえず相手の針を先に消費させようと、距離をとろうとしたら、一本目の針が生えて、また撃ってきた。
再び生え変わるには、100程度のSPと30秒程の時間を必要とするけど、三本もあれば大して状況は変わらない。
唯一安堵できたのは、その針攻撃の威力はさほど高くないということ。
当然、私は即死だったけど、二人に当たってもHPの二割を削られるぐらい。
◇
――【レッドクイーンビー】――
HP「4150/7000」
MP「4000/4000」
SP「6220/8000」
『麻痺』『混乱』
――――――――
戦闘が始まってから既に10分以上が経過している。
それでも、蜂のHPは未だ半分を切っていない。
麻痺や混乱の効果が効いているおかげで、少しずつだけど着実にダメージは与えてる。
流石蜂というだけあって毒は効かないけど。
「『ストライクファイヤーアロー』!」
「『ファイヤートルネイド』!」
相手は虫で、弱点は火だと判明した。
最初は、体の色から水が弱点なのかも? という疑惑もあったけど、赤いのは色だけのようで、火属性っぽい魔法を使ったり、火に耐性があったりするわけではないらしく、それを知れたのはダメージを与えるという点でとても良かったと思う。
それでも、的確に命中させることを必要とされる杖や弓では、飛行速度の速い蜂に対して当てることは難しそうで、ほとんど外している。
麻痺の効果で動きが鈍くなればとも思ったけど、麻痺に対しても耐性は少しあるらしく、効き目と言えば急に止まったりするぐらい。
その回数は多いけど、逆にそれがあだとなってしまっている。
二人が、蜂の動きを先読みして攻撃を当てようにも、急に止まったかと思えばすぐに動き出す。寧ろ、麻痺のせいで当たりづらくなったと断言できるくらい。
そう言う私は、蜂に追われながら『エクスプロージョン』の待機時間を稼いでいるだけ。
ほんと悲しいよ。
◇
――【レッドクイーンビー】――
HP「3085/7000」
MP「4000/4000」
SP「5160/8000」
『麻痺』『混乱』
――――――――
蜂のHPが半分を切った頃、もしかしたらと思っていたことが起こった。
多分、怒っている様子で、空中を何回転もする。今までにない速度で。その際に、針がこれまた在り得ない速度で飛んできて、私はまたも簡単に死ぬ。勿論生き返るけど……。
「第二形態ってとこかしら……!」
「絶対に倒すよ!」
「う、うん……」
二人とも、気合入り過ぎじゃない?
「『ストライクファイヤーアロー』!」
フレアさんは炎を纏った矢を勢いよく放ち、見事命中する。
「『ファイヤーボルト』!」
今度はレイミーが、雷と炎が集まり融合した球を飛ばし、これも命中する。
そして私も、タイミング良く発動可能になった、これで何度目かの『エクスプロージョン』を、蜂に近づき発動させる。
大爆発が起こり、それでも尽きず赤く光るHPバーを見ながら、私は続けて叫んだ。
「クロ、『ダークブレス』!」
「グオォォォォオオッッ!」
黒い光線に続き、赤い球や光を纏う矢までもが私の真横を過ぎ、煙が舞う中で、蜂のHPは完全に0になった。
《プレイヤー『ツユ』がレベル20からレベル22になりました》
《従魔『クロ』がレベル9から14になりました》
《ステータスポイント10を獲得しました》
《『1ゴールド、82シルバー』を獲得しました》
《『レッドクイーンビーの眼』を獲得しました》
《宝箱『大樹の宝箱☆3』が出現しました》
《宝箱『大樹の宝箱☆3』が出現しました》
《宝箱『木の宝箱☆3』が出現しました》
「お、終わったあぁぁ~……!」
「意外としぶとかったわね」
「疲れたぁ……」
相変わらず、
それにしても、確かに今回の相手はしぶとかったと思う。
動きが速かったり、行動が読めないと、私たちがてこずってしまうことを知れたから、良い経験だったのかもしれないけどね。
さて、宝箱を開けますか。
――【成功報酬(大成功)】――
・『86シルバー』
・『(SR)スキル巻物〈猛毒付与〉』
・『(SR)スキル巻物〈高速移動〉』
・『(SR)スキル巻物〈再生〉』
――――――――
――【成功報酬(???)】――
………
……
…
――【成功報酬(3倍)】――
・『3ゴールド・24シルバー』
・『(UR)女王赤蜂の羽』×3
――――――――
――【成功報酬(大成功)】――
・『1ゴールド・76シルバー』
・『(SSR)収納ボックス』
・『(SSR)持ち運びキッチン』
・『(SSR)転移魔法陣』
――――――――
「なんか……レア度もそうなんだけど、変なアイテムも出てくるようになったわね……」
「ですね……」
「『収納ボックス』と『持ち運びキッチン』って……100均とかに売ってそうな名前だね……」
「「確かに……」」
「グオ?」
――【ツユ】――
・LV「22」
▷MONEY「2,112,980」
――【STATUS】――
・POINT「0」
・HP「220/220」(300)
・MP「220/220」(200)
・SP「220/220」(200)
▷STR「151」(80)
▷VIT「151」(-4359)
▷INT「151」(20)
▷DEX「151」(20)
▷AGI「181」(120)
▷LUK「5683」(50)
――――――――
――【クロ】――
・個体名「ブラックアーマードラゴン」
・LV「14」
――【STATUS】――
・HP「700/700」
・MP「700/700」
・SP「700/700」
・STR「522」
・VIT「522」
・INT「522」
・DEX「522」
・AGI「522」
・LUK「522」
――――――――
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