Episode 23「ボーナス部屋」
さっきのボスモンスターを倒しただけじゃ、このダンジョンは攻略したことにはならないらしい。
この前のダンジョンでは、キメラを倒した部屋の奥に、文字が書かれた紋が現れて、二人がそれに乗ってと言うから言われた通りにしてみたら、元のフィールドに戻っていた。
だから、部屋で待ち構えるボスを見つけて倒さないといけないのかもしれない。
そこら辺のことは二人がちゃんと理解してくれているだろうから、私にはあまり関係ないんだけど。
二人には本当に助かってる。
で、そのお礼も兼ねて『緑の聖珠』を二人に渡したら、苦笑いで「ツユだから仕方ないか」「ツユちゃんだからね」と言ってから受け取ってくれた。まるで物の価値感がわかっていない子供を見るような目で。
……そりゃ、ほんの少しくらいはそうなんだろうな、っていう自覚はあるけどさあ。
そんな愚痴を心の中で吐きつつ、歩くこと約3分。
未だ扉は見つかってない。
見かけるのは、手足が生えた木と、同じく手足が生えた花が十匹くらい。
いずれを倒しても、宝箱は無し、レベルも上がっていない。
ただ、クロのレベルはふたつ上がった。
まだレベルが低めだから、というのが理由のひとつでもあるんだろうけど、『経験のお守り』の効果もあって、通常の従魔が貰える経験値よりかは大分高い。
――【クロ】――
・個体名「ブラックアーマードラゴン」
・LV「9」
――【STATUS】――
・HP「450/450」
・MP「450/450」
・SP「450/450」
・STR「211 」
・VIT「211」
・INT「211」
・DEX「211」
・AGI「211」
・LUK「211」
――――――――
そして、ステータスはもっと高い。
レベル9でHP・MP・SP以外、オール211。
それに比べて、
――【ツユ】――
・LV「20」
▷MONEY「1,169,530」
――【STATUS】――
・POINT「0」
・HP「200/200」(300)
・MP「200/200」(200)
・SP「200/200」(200)
▷STR「105」(80)
▷VIT「105」(-4359)
▷INT「105」(20)
▷DEX「105」(20)
▷AGI「126」(120)
▷LUK「3940」(50)
――――――――
装備分の数字を含めなかったら、私はLUK以外のステータスで負けていることになる。
しかも、クロよりもレベルが11も高いのにだよ?
ま、強くて悪いことなんてひとつもないんだけどね、なんか申し訳なくなる。
「ここ、お宝部屋じゃない?」
レイミーが何か見つけたらしい。
今はダンジョンに集中しよう。
◇
レイミーがお宝部屋と呼んだところは、確かにそんな雰囲気があった。
木に守られるようにして囲まれたこの空間には、金の装飾が施された、今まで見た宝箱の中で一番豪華な宝箱が、真ん中にみっつ並べられていた。
宝箱に視線を合わせると、
――【豪華な金の宝箱】――
・成功率100%
・大成功率100%
・???23%
▶開錠しますか? ▷YES
▷NO
――――――――
「☆が付いてないですね」
いつもは、名前の横に☆3とか☆1とかがあるのに。
「そうね。ダンジョンのボーナス部屋の宝箱には、☆は付いていないし、それに――」
そこまで言うと、フレアさんは自分で宝箱に触れて、現れた画面を私に見せてくれる。
――【豪華な金の宝箱】――
・成功率100%
▶開錠しますか? ▷YES
▷NO
――――――――
これ…………
「大成功率が表示されていない……」
「あ、うん、それはほとんどのプレイヤーがそうだから。――じゃなくて、成功率が100%でしょ?」
あぁ、そっか。
LUKを高くしていないと私みたいなパーセンテージになることはまずないんだった。
ということは、LUKに一切振っていないフレアさんが100%なのはおかしい……。
「これが、ボーナス部屋の宝箱の仕様ってことですか?」
「そうよ! やればできるじゃない!」
む。なんか悔しい。
「まぁ、大成功率までは変化しないから、結局ツユちゃんに任せちゃうんだけど……いいかしら?」
「はい。というか、それしかやることが無いですし」
自分で言ってて
「それじゃあ、よろしくね?」
「ツユ―、ガンバー!」
「わかりました」
――【成功報酬(大成功)】――
・『76シルバー』
・『(SR)金の釣り竿』
・『(SR)金の虫網』
・『(SR)金のつるはし』
――――――――
「今のところ、使い道は無いわねぇ……」
「でも、息抜きの時に使えるかも!」
――【成功報酬(大成功)】――
・『82シルバー』
・『(SSR)金の斧』
・『(SSR)銀の斧』
――――――――
「報酬の結果に、運営側の悪意を感じるわ」
「だね……」
と、これが最後だね。
――【成功報酬(???)】――
「あら」
「お!」
「これは……」
これは、初めての演出……。
???の文字が淡く点滅する。
私たちが見守る中、やがて消え、代わりに別の文字が現れる。
――【成功報酬(UR確定)】――
・『3ゴールド・8シルバー』
・『(UR)黄金のハンティングトロフィー』
・『(UR)黄金のミシン』
・『(UR)黄金のガシャポン』
――――――――
「「「おぉっ! ………………」」」
三人の驚きが重なる。
そして、冷静になった後の沈黙も。
「ねえ、レイミーちゃん、ツユちゃん、このゲームの世界にミシンやガシャポンってあると思う?」
「このゲームの世界観自体、あまりよくわかっていませんが、間違いなく無いと思います」
「だね……。ミシンに関しては、そもそも電気が無いから使えないと思うんだけど……」
そこはあれでしょ?
レイミーが、最近よく私に言ってくる、ご都合展開やら主義やらで、動いたりするんでしょ?
「と、とりあえず…………今は先に進みましょうか…………」
「ですね……」
「うん……」
私はアイテムをインベントリに仕舞って、二人の後に続く。
流石にこれには、得意になってきた切り替えも通用しなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます