Episode 20「日常」

「ツユ…ね…、おはよー」


 

 今、絶対ツユって言い掛けた。


 

「おはよ、美玲。ゲームしてばかりだけど、課題はちゃんとしたの?」


「え、してないけど」


「……………………」



 なんでそう、胸を張って言えるかなあ?


 

「もうっ、ゲームばっかりして成績落ちても知らないよ?」


「私は良いんだよ。ゲームしなくても成績悪いから」



 わからない、どこが良いんだろう?



「そんなに言うなら、露音はどうなの? そっちこそ成績落ちても知らないよ?」



 勉強は好きじゃないけど嫌いでもないし、時間があればやるくらい。


 だけど、先生の話を聞いていれば、何も難しいことでは無いのに。


 

「む。今、私のことバカだって思ったでしょ」



 思っていない。とも言い切れない。ごめん。



「良いよ良いよ、それなら今日の6限目の小テストで勝負だから! ついでに来週の期末テストも!」


「えぇー、なんでそうなるの……」



 いやまあ、勝負って言っても点数見せ合うだけだし、別に良いんだけどね。


 負けたら何かあるってわけでもなさそうだし。


 

「フッフッフ、私の一夜漬け、とくと見るがよい!」


「昨日あれだけにゲームしたうえ、一夜漬けまでしたの!? ……目、大丈夫?」



 

◇ 




 放課後、午後3時50分。

 

 只今、返されたプリントの点数を見比べ中。


 というより、一瞬見ただけで決着がついてしまった。



「ひゃく……てん……」



 対する美玲は……15点。


 

「ダメだよっ!」



 うわぁ……ビックリしたぁ……。



「ゲームもできて、勉強もできて、それは良くない! 天は二物を与えず!」


「理不尽……」



 ゲームは……結果だけ見れば、まあ好成績なんだろうけど、昨日アリスさんの動画を見て思ったんだよ。私のプレイスタイルは運だ、ってね。だから、これはゲームができるとは言わないと思うの。


 勉強は、完全に美玲が悪い。


 だって、できるできない依然に、テスト中に寝てたじゃん。


 本人は頑張ったと自負してるようだから言わないけど。


 せめて、空欄は埋めてから寝よ? そうしよう?







 自宅、午後4時20分。


 学校であんなことがあったのに、それでも今日もゲームをしようと誘ってくる美玲、恐ろしい。



「来週期末テストだよ? 赤点取っても知らないよ?」


『大丈夫大丈夫! その時はその時だよ』



 赤点を取って補修になったら、余計にゲームができなくなると思うんだけど。


 そうなったら元も子もないのに。


 

「言ったからね? 後でどうなっても知らないよ?」


『大丈夫だって。私、やればできる子だから!』



 それ、やらなければできない子ってことじゃん。


 はあ、もういいや。もしそうなったら、夏休みは私とフレアさんだけで楽しむもんね。



「……はぁ、わかった。じゃあ、集合は噴水前で良い?」


『うん! それじゃぁ……』



「『ゲームスタート!』」







「で、お前ら、なんで俺の店に集まってんだ?」



 なんでって言われても……



「お茶が出るし……」

「お菓子があるし……」



 あ、二人とも、言っちゃうんだ……。



「あのなぁ、そんなことでうちに来られても邪魔になるだけでなぁ――――」



 と、ヘッドさんが愚痴ったその時、



「お、あいつツユじゃね!?」

「本当だ! パーティーメンバーの二人もいるぞ!」

「そんな三人がここに来るってことは、この武器屋、良いもん売ってんじゃね?」



 レイミーとフレアさんが、ヘッドさんに、「何か言った?」みたいな顔してる。


 そうだよ、そもそもヘッドさんが私と取引したのって、自分のお店を宣伝するためでしたよね?


 それより、初対面なのに、あいつとか、呼び捨ては、良くないと思いますよ?


 だからと言って揉めるわけにもいかないし。


 しょうがなく私たちはお店を後にしようとすると、



「おいツユ、今週もSR忘れんなよ?」



 あ、忘れてた。


 一応思い出したので、「わかってますよ」と答えて、今度こそ後にした。


 そう言えば、いつの間にかインベントリからSRの武器が消えてたんだよね。


 今装備してる武器や防具は大丈夫なんだけど。なんでだったんだろう……。


 ま、考えても仕方ないか。



「それじゃあ、冒険に行きましょうか」


「はいっ!」

「おーっ!」







◇フレファーの森◇




 今日の目標は、『フレファー西平原』を進んだ先にある、『フレファーの森』の探索。もっと言えば、攻略をするらしい。


 森の奥へ奥へと進む道中、とても暇だったそうにしていたレイミーがこんな話題を提示した。



「森と言えばエルフだよね!」



 エルフ、というのはよくわからなかったけど、ファンタジーの世界にいる種族らしい。



「そうね。そう言えば、FLOにもエルフはいるらしいわよ?」


「マジ!?」



 終始、話についていけなかった。


 疎外感を感じて、ついつい「エルフってなんですか? 食べ物ですか?」なんて質問してみたらあら不思議、ドン引きされました。そしてそのあと爆笑されました。



 ……………………ぐすん。



「エルフっていうのは、物語上では主に森に住んでいる種族なの」


「耳が長いから、別名、耳長族とも言われてる」


「こよなく緑を愛する人、みたいな感じかしらね?」



 なんて、よくわからない説明もされた。


 森に住んで、耳が長くて、緑が好きな人。


 

 ……………………。



 やっぱり想像できないや。


 うん、もう諦めよう。


 そんな時、フレアさんが私たちを呼ぶ声が聞こえて、そっちの方向を見ると。


 そこにあったのは、以前見つけたダンジョンと、とても似た入り口の洞窟だった。


 色や装飾品(?)は、周りと同じなんだけど、なんというか――その場所に新しく付け足されたみたいな形をしている。実際、そうなんだと思うけど。


 前のダンジョンと違ったところと言えば、きのここけが生えていて、洞窟というより山のように見えたことぐらいだった。



 ごめんなさい、似ても似つかなかったです。

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