Episode 18「第一回イベント結果」

「もうすぐでイベントは終了ドラよ! そして最後にサプライズ! ゲーム内時間で今から6 時間、上位100名のプレイヤーの位置はマップに表示され、その人たちを倒せば、倒した相手が所持するポイントの二割を奪うことができるドラー! ――――残り873人! みんな、頑張ってねー!」




◇ ◇ ◇




「うわぁ……この森の近くにプレイヤーが集まってるよ……」


「おそらく、ツユちゃんの噂を聞きつけたプレイヤーが、この辺りにある目印のどれかがツユちゃんのものだと思って、駆けつけてきたんでしょうね」


「ポイントは表示されてないから、そこだけ安心。――――えっと、473の二割だから…………100くらいかな?」



 レイミー、今絶対、計算するのを諦めたでしょ。


 まあ、大して間違ってはいないんだけど。



「100も失っちゃったら、10位にランクインするのは難しくなりそうだね……」


「「それはない」」



 え、あ、そうですか。


 というか、このイベントで二人のハモり具合が格段にレベルアップした気がする。うん。


 そんな無駄なことを考えていると、


 

「ここにもマークがあるな。――って、なんだこれ!? 天井が崩壊してないか!?」



 あ、バレた。


 暫く飛んだ私たちは、クロを休ませる為、再びここの洞窟に戻って来ていた。


 流石に入り口があのありさまじゃあ、プレイヤーが興味本位で入って来ることが多くて多くて。


 そっか、マップに目印が現れたことで、入って来るプレイヤーが増えるかもしれないのかぁ……。


 それは申し訳ないなぁ……。



「お! 中に入れそうだ」

「誰かいるぞ!」

「攻撃開始だ!」



 しょうがないか。



「それじゃあクロ、またお願いできる?」


「グァッ!」



 頷き、クロは口を開く。


 私たちがクロの背中に隠れると、相手プレイヤ―の驚いた表情がチラリと見えた。


 でも叫ぶ。



「『ダークブレス』!」



 クロの開いた口からは黒いエネルギーの塊が出現し、稲妻いなずままとう。


 洞窟内は黒い光で照らされ、ブレスはついに放たれる。



 相手は叫ぶ暇もなくやられ、洞窟のありさまはもっと酷くなる。



「グァッ、ガァァ!」



 反対に、ご機嫌なクロをご褒美に撫でてあげると、嬉しそうに頬をなすりつけてくれる。


 それを見た二人も背中や翼を撫でると余計愛らしく鳴くクロ。可愛い。


 何度でも言う、めちゃくちゃ可愛い。


 でもこの後、この騒ぎを聞きつけて集まって来たプレイヤーを一掃する姿は、あの可愛さからは想像もできないくらいかっこよくて。


 それも含めてこの子のことが可愛くて好き。


 加減というものを覚えさせないといけないけれど……まあ、ゲームだしね。


 いや、クロは襲ってくる方が悪いって言ってる。多分。



 

 その後、クロに乗って飛び立ち、私たちはオレンジ色の日の出を見ながら、第一回イベントは幕を閉じていった。


 私、400人以上のプレイヤーを…………なんて一瞬考えちゃったけど、クロが地上に放ったブレスのおかげで500人を超えたので、考えるのをやめた。


 そうでもしないと、中々の絶景が楽しめないからね。




◇ ◇ ◇




 私たちは広場に戻っていた。


 クロのも一緒に、だけど。


 私としては嬉しいかったけど、周りからは鋭い視線と運営コールが……。



「これにて、第一回イベントは終了ドラ~! みんな、楽しめたかな? それじゃあ、待ちに待ったランキング発表&報酬の時間ドラ! 覚悟は良いドラね? ――――デデンッ!」



 そこには、叫ぶ人、悔しがる人、満足する人、様々な感情が入り混じっている。私を睨む人や、クロに興味を示す人も。


 大きな噴水の目の前に、ランキングと表されたスクリーンが出現することによって、その感情の変化はさらに激しくなる。


 ついでに、うるさい。



――【第一回イベント・ランキング】――

1位:

2位:

3位:

4位:

5位:

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

――――――――



 ドラコちゃんが、でれれれれれ……とドラムロールをしている中、下から順に、プレイヤーの名前が表示されていく。


 もっとも、そのスピードは速すぎて、読めたものじゃないけど。


 ただそれは、上がっていくにつれてだんだんとゆっくりになっていき、100位まで表示されると、みっつにひとつくらいは目で追えるようになってきた。



 90位。


 80位。


 70位。



 段々と順位が上がるともに、周りにプレイヤーは息を呑む人もいれば、終わったー、とか、惜しかったー、といった声も増えてくる。



 60位。


 50位。


 40位。



 私たちの名前はまだ出てこない。


 10位以内は確実なんだろうけど、こうもらされちゃうとやっぱり緊張しちゃうなあ。


 残り30位を切ると、広場にさっきまでの喧噪けんそうはもう無くなっていた。



 25位。


 20位。


 15位。



 数字はゆっくりと減る。


 まだ私たちの名前は出てこない。


 広場にはもう、30人程度しか残っていない。


 そして、10位を切る。


 と、見知った人の名前が出てきた。



『9位:「ヘッド」(128)』



 凄い!


 ヘッドさん、ソロ参加なのに9位にランクインしてる! しかも一人で128ポイントも集めてる……!


 上位プレイヤーっていうのは、本当だったんだ……。


 べ、別に疑ってたわけじゃないからね? 違うからね? 本当だよ?



『8位:「アキ」「ナツ」(133)』



『7位:「ラーク」「清水きよみずさん」「エピック」(154)』



『6位:「Rei」「悪」「タナカ」(178)』



 ひとつの順位が出てくるだけで、十秒くらい掛かってきた。


 そして次は、いよいよ5位。


 残りは全て同じ報酬だったはずだけど、思ったより上位にいけたんだから、できるだけ上のランクであることを祈る。



『5位:「魔法少女ロッドちゃん」(198)』



 え……!


 な、名前も凄いけど、ソロ参加で5位…………ヘッドさんもだけど、この人も凄い……。



『4位:「ピイマン」「ジニ」(258)』


 

 ……名前が面白い人、多い気がする。寧ろこれが普通なの?


 ――っと、ここまで、私たちの名前はまだ出てきていない。


 まさか、100位よりも上だったりしないよね?


 と、思ったけど、隣の二人を見てみたらめっちゃ自信満々な顔だったから、多分大丈夫だね。


 ポイントだって、500超えてたし。



『3位:「アリス・レイナ」(274)』



 こ、この人も一人!?


 名前からして、外国人かな……?


 にしても驚いたなぁ……。


 ゲームにはこんな凄い人たちがたくさん居るんだ。


 でも、私だって自身はある!


 殆ど、二人やクロのおかげだけど!


 


 残りふた枠。


 そして、三十秒以上のドラムロールの効果音の中、ついに2位が発表された。



『2位:「フロード」「マリン」「村人A」(429)』



 他のパーティーとはポイント数が桁違いだ。


 最後の人の名前だけ気になるけど……。


 でもこれって、残るは――


 

『1位:「ツユ」「レイミー」「フレアラ」(507)』



「や、やった……」


「ツユ、フレアさん、一位だよ一位! ――――絶対こうなるとは思ってたけど」


「そうね、やったわね! ――――ある程度予想はできていたけれど」



 これも、クロとレイミーとフレアさんの――――え、レイミー? フレアさん? 今何か言いました?


 

「そしてイベントに参加してくれたみんなには、それぞれの報酬を差し上げるドラ!」



 ドラコちゃんが空を飛び回りながら楽し気にそう言うと、視界の右端にある手紙のマークに、赤い字で(2)と付く。


 メッセージを開くと、『第一回イベント報酬』と表示されている。


 インベントリにも余裕があるので、触れてみると、ドラコちゃんがイベント開始前に説明していたアイテムが報酬として入手される。


 そしてもうひとつのメッセージに、私は全く覚えがなかった。



――【運営からのお詫び】――

 ツユ様に対するこのたびの非礼を、関係者一同、深くお詫び申し上げます。

 バグの内容に関しては、原因ともに現在詳しく調査、修正中ですので、また後日に当ゲームのメッセージ機能を通してご連絡させていただきます。

 そしてどうか、このことは内密に。

 最後になりましたが、第一回イベントでの好成績、おめでとうございます。今後のご活躍にも期待しております。


・『絆の指輪』


《FLO公式》

――――――――



 お詫び? バグ? 修正? えっと、どういうこと?



「あの……レイミー、フレアさん、これってどういう…………あッ!」


「何かわからないことでもあったのかしら?」

「どうしたの、変な声出して」



 文章に「内密に」って書いてあるじゃん!



「えっと、その……なんでもないです、ごめんなさい」


「「?」」



「あ、明日からも一緒にプレイしましょう!」

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