Episode 7「フレアさん」

◇フレア工房◇




 こっちの世界での昼間にヘッドさんと別れた後、私たち三人は、街の中央の近くにあるフレアさんのお店、フレア工房に訪れていた。


 フレアさんは、主に織物をしているらしく、そこには、布の服やローブや、ぬいぐるみなんかもある。どれもこれも、とても可愛い!


 

「狭くてごめんね?」


「いえ、お気になさらず」



 確かに、ヘッドさんのお店と比べたら、ちょっと狭い。それでも、お店を持ってるだけ十分じゅうぶん凄いと思うな。



「特に用事も無いんだけど、布制の装備を主に扱ってるから、困ったらいつでも顔を見せに来て」


「ありがとうございます。――ヘッドさんみたいに、装備を売ってくれとかは無いんですか?」


「うふふ、それは私だってレアな装備は欲しいわよ? でもここは工房。自分で作って、それを売る場所。だから商売として買ったりはしない。一個人いちこじんとしては別だけど、ね」



 あんまり違いがわからないけど、それなら忙しくならなそうで安心した。



「話は逸れるんだけど、ひとつ提案してもいいかしら」


「どうぞ……?」



 フレアさんは少し苦笑いした後、私の呪われたようなローブを指差して、



「そのローブ、染めてみない?」


「え?」



 売ってみない? ではなく、染めてみない?


 染めるとは?


 しかし、その提案に大賛成な人も一人……



「良いね! 白、白が似合うと思う!」


「そうね! それなら天使のわっかと羽とも相性バツグンね」


「えーっと? 何を言って……?」


「さあ、ツユちゃん、それを脱ぎなさい」

「脱いで脱いで!」


「はい?」



 そうして私は、無理矢理に脱がされた『生死彷徨ウ魂ノローブ』を手渡した。


 どうなるんだか。







 返すと言われて貰ったローブに視線を向けると、それは間違いなく、あの禍々しいはずのローブだった。


 色は黒を基調とし、死神のイメージがあったそれは、もう過去の記憶。


 それは、白を基調とし、袖には金色の糸で細いラインが施された、天使をイメージさせてくれるローブだった。


 ついでにフードなんかも付け足されてるけど……実用性も兼ね添えてるのかな……?



「どう? どう? 私的には今まで一番の仕上がりなんじゃないかって思うんだけど、どう?」



 めっちゃ、どう? って訊いてきますね。



「まあ、可愛いですけど――本当に、あのローブですか?」


「だねー、影も形も無い……」



 だけども、説明を見てみると、やっぱり『生死彷徨ウ魂ノローブ』なんだよね。



「でも、ありがとうございます」



 流行とかには一切触れたことはないけど、この服の良さには、私だって感激する。


 当然、以前の死神ローブと天使シリーズが壊滅的に合っていないことだってわかってた。だから素直に嬉しい。


 何気に付け足されてるポケットやフードも、センスが良いしね。



「喜んでもらえたなら、私も嬉しいわ」


「あの、代金は――」


「そんなのいいわよ? 私が好きでやったことなんだから。それに、対した費用も掛かってないしね。だから、遠慮しないで?」



 や、優しい……。


 これはいつか、恩返ししないと。そう心に留めておく。



「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。本当にありがとうございます」


「いえいえ、こちらこそ。これからもよろしくね、ツユちゃん、レイミーちゃんも」


「はい!」

「よろしくおねがいします!」




「――そうだ! せっかくなんだし、今から一緒に行動しない?」




◇ ◇ ◇




◇フレファー西平原◇




――【素朴な木箱☆3】――

・成功率100% 大成功率55%

▶開錠しますか? ▷YES

         ▷NO

――――――――


――【成功報酬】――

・『10シルバー』

・『スキル巻物〈水泳〉』

・『スキル巻物〈歩行〉』

・『スキル巻物〈走行〉』

――――――――



「う~ん、大成功出ませんでした……」


「えっと……? 『スキル巻物』が一気にみっつも出たんだけど……」


「ほんと凄いよ、ツユ。とうとう大成功率が半分50になってる……。二回に一回の確率で大成功だよ……」


「大丈夫? なんかレイミ―もフレアさんも元気がないよ?」



――【成功報酬】――

・『12シルバー』

・『(SR)灼熱剣』

――――――――



「そう言えば、天使装備の効果でSPが増えるんでしょ? それなら『ラッキーダイス』使えるんじゃない?」


「あ、確かに! レイミ―、ありがとう!」


「レイミーちゃんも、もはやレアアイテムが出るのが当然のように思ってきてない? これも一応、超レアアイテムなんだからさ、こう、もっと驚こうよ!」



《スキル『ラッキーダイス』を使用しました――『3』》



「3だったー」


「あはは……チート並なんだけど、数字的には微妙だね。……これ、反応に困る」


「ねえ、なんのこと? チート並? また何か悪いことするの?」



――【成功報酬(大成功)】――

・『21シルバー』

・『(SSR)精霊樹の種』(×3)

――――――――



「えっと、『ラッキーダイス』はランダムで出た数字の分、入手したアイテムを倍増してくれるんですよ。それで、3が出たんです」


「はい? え、じ、じゃあ、このSSRアイテムを、みっつ手に入れたってこと?」


「そうです」


「ぁ…………?」


「フレアさん、気を確かに!」



――【成功報酬(大成功)】――

・『33シルバー』

・『(SSR)病原のお香』(×3)

――――――――



「使いたくない名前だなぁ……」


「ぁあ……SSRがひとつ……SSRがふたつ……SSRがみっつ……」


「フレアさん! 目を覚まして!」



――【成功報酬(大成功)】――

・『53シルバー』

・『(UR)経験のお守り』(×3)

――――――――



《スキル『ラッキーダイス』の効果が終了しました》



「あ、効果切れちゃった。あとひとつ残ってたのに」


「SSRがむっつ……SSRが――ぇ……? さ、さっきのスキル、一回だけじゃないの?」


「いえ、一分間です」


「こらっ、ツユ! なんてことを言うの!」


「一分間…………ぁあ。ぁは、はは……」




――【成功報酬】――

・『12シルバー』

・『(SR)聖なる毛糸玉』

――――――――



「ん? これは……」



――『聖なる毛糸玉』――

・天使の羽で作られたとされる毛糸

――【STATUS】――

・DEX=70

――【EFFECT】――

・品質上昇率が20%上昇する

・このアイテムで生産したアイテムに『HP=30』『MP=30』『SP=30』の補正が付与される

――――――――



「おおっ、やっぱり」


「URがふたつ……URがみっつ……一分間持続……」


「フレアさんっ! ちょっとツユも手伝って!」


「え、どうしたの?」


「どうしたのじゃないよ! もうっ、ツユのせいでおかしくなっちゃったんだからね」


「えぇっ!? なんで私!? ……で、でも、それなら――――フレアさん!」


「あら、ツユ、ちゃん……どうした、の? 良い物、出た?」


「は、はい、出ました! これ、どうぞ! ――というか大丈夫ですか?」


「これ……は……?」


「ツユ、これは?」


「最後の木箱から出たんだけど、フレアさんにピッタリで――――」


「うぉえぇぇぇぇぇええ!?」



 っ!? び、ビックリしたぁ……女性がはしたない声を……。



「こ、ここっ、ここここれ……」



 にわとり



「も、貰っていいの? 生産職――主に織物を中心にする人たちの間では、じ、10ゴールド以上で取引される代物よ?」



 そう言いながらも、目が輝いてるその姿を見て、返せなんて言えるはずもない。


 それにもとから、タダであげるつもりだし。



「どうぞ、貰ってください! さっきのお礼ですので!」


「ツユ、ほんと凄いね。運も器も」


「ふふ、そうね。でも本当に良いの? さっきのお礼は要らないし、後から見返りを要求されても―――」


「しませんよ! フレアさんこそ、遠慮しないでください」



『だから、遠慮しないで?』


 ついさっき、工房でフレアさんに言われたこと。


 私だって、お礼とかはしたいタイプだけど、私だけ遠慮しないのもなんか嫌。


 だからそのお返し。



「それに、よくわからないですけど、これってSRだから、レア度は低い方だと思いますよ?」




「「…………………………………………」」






――【ツユ】――

・LV「8」

▷MONEY「764,000」

――【STATUS】――

・POINT「0」――当然LUKに全振り――

・HP「80/80」(200)

・MP「80/80」(200)

・SP「80/80」(200)

▷STR「14」(60)

▷VIT「14」(-4434)

▷INT「14」

▷DEX「14」

▷AGI「16」(100)

▷LUK「425」(50)

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