第7話 オリンピックと宣伝
マンションの居間で寛ぐショウタとアスカ。
「マスター、オリンピック始まりましたね!」
「俺もチケットを応募していたわけでもないけれど、じかに観戦したかったな。特に今回のオリンピックはメダルラッシュだしな」
「今回メダルラッシュになっていることは何か特別な理由があるんですか?」
「もちろん選手たちの不断の努力の結果だけど、自国での開催だと、選手も頑張って力を出し切ることができるからメダルが今まで以上に期待できるんじゃないか?」
「そういうものなんですか? 海外の選手には時差があって不利なためということはないんですか?」
「いや、時差は無いに越したことはないが、かなり前から海外の選手たちは日本にやって来て調整しているみたいだから、そこまで深刻な問題じゃないだろう」
「それではどういった理由で自国開催は有利なんですか?」
「アスカはメンタル面がブレることはないから、いつもベストパフォーマンスなんだろうけれど、人間は心の持ちようでパフォーマンスが左右されるんだ。
実力がなければ話にならないが、オリンピックに出るような選手はみんな実力は保証されているから、その先のわずかな差だけで勝敗が決まる。
みんなに応援されていると思うといつも以上のパフォーマンスというか、持っている実力を100パーセント出し切ることができるようになって、その先のわずかな差を自分のものにできるんだ」
「ということは、マスターが受験勉強を励むように私が一生懸命応援すればいいってことですね!」
「受験はオリンピックほどシビヤな競争ではないと思うけどな。
ただ、ここ一番での応援が大切なんだ。国民一丸となった応援を受ければ誰だって『やってやる!』って気になるからな」
「国民一丸といえば、オリンピックの開催を反対してた人が大勢いましたが、自国の選手たちを応援しないんでしょうか?」
「さあ、普通の感覚なら、応援しないし、そもそも観戦しないんじゃないか?」
「それはそうですよね。あれ? このテレビの人、こっちの人、あれれ、あの人もこの人も先週までこの人たちオリンピックの開催を反対してましたよ。いま金メダルを取った選手の映像を流して何だか嬉しそうに喋っています」
「テレビに出ている連中も商売だからな。偉そうなことを言っても、日銭を稼いでなんぼ。ここまで来てオリンピックは無視できないんだろう。オリンピックに限らず自分が昨日喋ったことなんて気にしちゃいないよ」
「要するに、普通の感覚を持っていない人たちだということですね」
「そうだな。アスカもこんな節操のない番組を見ていると頭が混乱するから見ない方がいいぞ。昔はテレビアニメを見ると頭が悪くなるとか言われていたらしいが、いまだと特にこの時間帯のエセ情報番組を見ると頭も悪くなるし、人としておかしくなるらしいぞ」
「私はマキナドールなので頭脳が影響されることはありませんが、マスターがそういうならもうこういった番組は見ないようにします」
「それが賢い判断だ」
「そういえば、マスターは以前、日曜の朝のアッポーンSを見てましたがあの番組が終わって何を見ているんですか?」
「いまは何も面白いのがないので、あの時間でも受験勉強を真面目にやっているだろ。来月になったら面白そうなのが始まるからそれに期待しているんだ」
「なんというタイトルですか?」
「なんと、アスカと同じ名前の『
「私と同じ名前というのが気になります。私もマスターと一緒にその『ASUCAの物語』を見てもいいですか?」
「それは勝手に見ればいいじゃないか、誰も見るなという人なんかいないだろ?」
「なんだか、アニメを見ながらいらぬツッコミを入れてしまうかもしれませんがそれくらいいいですよね?」
「そのくらいの方が見てて楽しいからいいんじゃないか」
「それじゃあ楽しみにしています」
[あとがき]
本編『真・巻き込まれ召喚。~』の前日譚
『ASUCAの物語』全42話。2021年8月5日完結予定。
https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054916821848 よろしくお願いします。
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