第39話 林間学校1日目②

 部屋でまったりと過ごしていた俺は暇になり集合時間20分前にもかかわらずエントランスに移動した。

 さすがにそんなに早くから待っている生徒はおらず、エントランス設置されているソファーに座り、生徒たちが集まるのを待つことにした。


「あれ?柏君」

「く、九条さん・・・・・・どうしたの?」

「部屋にいても暇だったから来たの。そしたら、柏君がいた」


 どうやら、響も俺と同じ理由でエントランスに来たらしい。


「そうなんだ。友達と話さなかったの?」

「みんな寝てる」

「え、それ大丈夫なの?」

「たぶん、大丈夫なんじゃない?一応、アラームセットしてたし。そんなことより、これからカレーライス作りだね!」

「そうだな」

「一緒の班だよね!」

「たしかそうだったな」

「林間学校に来ても柏君の料理を食べれるの嬉しいな〜」

「九条さんは包丁使うの禁止ね」

「えー。大丈夫だよー」

「絶対にダメだ」


 いつだったか、響が一緒に料理をしたいと言い出したことがあった。

 その時に当然包丁を使ったのだが、危なっかしくて見ているこっちがヒヤヒヤさせられっぱなしだった。

 その日以来、響に包丁を握らせることはしてない。


「とにかくダメだからな。俺と二人の時ならまだしも今日は他にも人がいるんだから」

「分かった・・・・・・」


 しゅん、と落ち込んだ顔をしてみせる響。

 そんな顔をされてもここでは触らせることはできない。怪我でもしたらせっかくの楽しい林間学校が台無しになってしまうからな。


「その代わり、帰ったら包丁の使い方教えてあげるから」

「え!?本当に!?なら、我慢する!」


 俺がそう言うと、さっきまでしゅんとしていた顔はキラキラと輝き始めた。


「楽しみだな〜。柏君のカレーライス!」

「俺だけで作るわけじゃないけどな。美味しいのができるように頑張るよ」

「うん。楽しもうね〜」


 いつの間にか響と普通に喋れるように戻っていた。

 それは、たぶん響がいつも通りに俺に接してくれているからであり、響と一緒にいることが心地いいからだろうな。


「夜にはキャンプファイヤーもあるし、温泉もあるし、楽しみがたくさんだ〜!」


 俺が「そうだな」と頷いたところで、他の生徒たちもぼちぼちとエントランスに集まり始めていた。

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