第28話 テスト当日

 そして、やってきたテスト当日。

 体調も気合も万全に俺は学校に向かった。

 絶対に響に負けるわけにはいかない。

 付き合ってもないのに、キス、なんかできるか!


 学校に到着し、俺は自分の席についた。


「宗一、おはよ〜」

「おはよ。渉」

「その顔を見るに戦闘態勢は万全のようだね」

「まぁな」

「でも、不戦勝に終わりそうだよ」

「え、どういうことだ?」


 俺は響の席を見た。

 いつもならもう来ているはずなのに、そこに響の姿はなかった。


「風邪ひいたみたいだよ」

「マジ?」

「らしいよ〜」


 おいおい、俺の努力は・・・・・・と言いたいところだが、風邪か。

 大丈夫だろうか?

 そういえば、昨日、咳してたような・・・・・・。

 俺はそこで今日初めてスマホを見た。


「あ、連絡来てるわ」

「なんて〜?」


 響から来たメッセージはこんな感じだった。


『柏君。ごめんなさい。風邪ひいちゃった。せっかく、柏君頑張ってくれてたのに、本当にごめんね。今回の勝負は柏くんの勝ちでいいから。本当にごめん』


 なんと弱々しいメッセージ。

 

「あちゃ〜。相当へこんでそうだね〜」


 横からスマホを覗き見た渉がそう言った。

 

「ほら、宗一。ここは腕の見せ所だよ?」

「何言ってんだよ」

「ちゃんと看病、してあげなよー」


 渉はそう言うと自分の席に戻っていった。

 看病してあげろ、って言われてもな。

 俺、響の家知らないんだよな。

 とりあえず、返信だけしとくか。


『勝負のことは気にしないで。しっかりと休んで、ちゃんと体調治して。その、看病、行った方がいいか?』


 俺がそう返信すると、数秒もしないうちに響から返信が帰ってきた。

 

『お願いしてもいいかな?』というメッセージとともに響の家と思われる住所が送られてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る