第29話 響の看病part1
テストは修也の作ってくれた予想問題と似たような問題ばかりだったので、なんなく終えることができた。
テストは二日に分かれて行われる。
両日、午前中で学校は終わる。
「じゃあ、俺は帰るわ」
「はーい。ちゃんと看病してあげなよー」
「分かってるよ」
学校を後にした俺は帰り道にあるスーパーで食べ物と飲み物を買って響の家に向かうことにした。
☆☆☆
響の家に到着した。
呼び鈴を鳴らしてみる。
しかし、出てくる気配はなかった。
「寝てるだろうな・・・・・」
一応、ドアノブに手をかけて鍵が開いてないかを確かめる。
ガチャ。
「マジかよ・・・・・・」
鍵が開いてる。
まさか、ずっと開いてたのか?
(不用心かよ・・・・・・)
いくら風邪とはいえ、夜は鍵閉めるだろ。
入っていいのか迷う・・・・・・。
呼び鈴にも反応しなかっただろうから、メッセージを送っても返ってこないだろうけど、一応送ってみることにした。
それで、数分待って返信がなかったら、申し訳ないが中に入らせてもらう。
心配だからな。
それに、響からは一応許可はもらってるしな。
結局、数分経っても響は出てこなかったので、扉を開けて家の中に入ることにした。
「おじゃまします」
そう言って中に入っても響から返事はなかった。
やっぱり寝ているのだろうか・・・・・・。
「九条さん。柏だけど、起きてる?」
どの部屋に行けばいいのか分からず迷っていると、響から連絡が返ってきた。
『ごめん。寝てた。廊下の右側二つ目の部屋に入って』
どうやら、そこに響がいるらしい。
俺は廊下を歩いて、右側の二つ目の部屋の前着いた。扉をノックして響に声をかけた。
「九条さん。いる?」
『声出せないから入ってきて、いいよ』
「分かった。入るぞ・・・・・・」
俺はドアのぶに手をかけて扉を開けた。
部屋の中に遠慮しがちに入ると、布団を被り頭と手を出してベッドに寝ている響はニコッと笑って俺を見た。
その顔にはいつもの元気はなく、無理して笑っているといった感じだった。
「大丈夫・・・・・・そうじゃないな」
『ごめんね。こんな状態で』
「声が出ないって重症だな」
『うん。扁桃腺が腫れてるみたい。たまにあるの』
「そうなんだ」
『テスト勝負できなくて、ごめんね』
「気にしなくていいって」
『せっかくのラブコメ展開だったのに』
メッセージの最後に悔しそうな絵文字。
(あ、いつもの九条さんだわ・・・・・・)
風邪をひいていてもラブコメ脳は健在らしい。
「それだけ元気なら問題なさそうだな」
『勝負は私の負けだね』
「何言ってんだよ。戦ってすらないんだから、無効試合だよ」
『私の不戦敗でもいいのに?』
「さすがにフェアじゃないだろ」
『紳士だね〜』
微笑む響。
相変わらずその微笑みは弱々しい。
「キッチン借りてもいいか?」
『何するの?』
「キッチン借りると言ったら、ご飯作るしかにだろ。俺もまだ食べてないし」
『それって、柏君の手料理が食べれるってこと?』
「そうだけど。嫌か?」
首をブンブンと振る響。
そんな強く振って首取れませんか?
『食べたい!!!!!!!めっちゃ食べたい!!!!!!!』
「ビックリマーク多いな!?」
『それだけ食べたいってこと!風邪ひいてよかった〜!』
「ていっても、おかゆだけどな」
『それでもいいの!!!!!!!』
「だから、ビックリマーク多いな!?じゃあ、作ってくるから寝てていいよ。できたら起こしてあげるから」
『キスで?』
「そんなわけあるか!?」
『ちぇ〜』の後にぴえんの絵文字。
実際の顔も絵文字と同じような顔をしていた。
「そんな顔されてもしないからな!」
俺は部屋から出てキッチンに向かった。
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