第26話 テスト週間の休日

 気持ちのいい天気の午前中。

 テスト期間中の休日。

 今日は家で1人黙々と勉強をする。

 そう思っていたはずなのに・・・・・・。


「恵さん?今日はどうしたの?」

「もちろん。一緒に勉強をしようと思ってやって来ました」


 そう言った恵は俺の家にやって来ていた。 

 ここはリビング。

 その目的は一緒に勉強をするためらしい。

 恵はテーブルを挟んで俺の前にちょこんと座っている。

 てか、何で恵は俺の家を知ってるんだ?

 俺は高校生になってから一人暮らしを始めていた。そして、 その場所を知っているのは、俺と俺の両親、そして・・・・・・。


「もしかして、渉か?」

「実は、聞いちゃいました。すみません。どうしても宗一君と一緒に勉強をしたかったので」

「いや、まぁいいんだけどね。事前に言ってくれたら、ちゃんと家の場所教えたのに」

「それは、ほら。サプライズです」


 恵は少し照れ臭そうに言った。

 付き合っていた時にそんなサプライズは一度もされてことのなかった俺はこの状況に驚いていた。

 何にって、恵がそんなサプライズを考えてついたことにだ。

 一体誰の入れ知恵だと勘繰ってしまう。


「と、とりあえず、お茶でも持ってくるよ」

「ありがとうございます」


 俺はキッチンに向かって冷蔵庫からお茶を取り出して2人分淹れると、恵の元に戻った。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


 恵は俺から受け取ったお茶に口をつけた。

 相変わらず、綺麗な姿勢。 

 お茶を飲む仕草一つとっても美しい。

 思わず見惚れてしまいそうになる。てか、よく考えたら、恵と家で二人っきりって初めてだ。

 そう思ったら、急に緊張してきた。

 そんな俺とは違って恵は冷静な感じだった。


「それじゃあ、勉強しましょうか?」

「そ、そうだな」

「順調ですか?」

「まぁ、ぼちぼちかな。毎日修也に放課後付き合ってもらってるから。それなりにって感じ」

「毎日頑張ってるの見てましたよ」

「毎日図書室でやってるもんな」

「ところで、どうしてそんなに頑張ってるんですか?」

「ああ、実はな・・・・・・」


 俺は響とテスト勝負をすることになったことを恵に伝えた。


「なるほど。それ、私も参加したいって言ったらどうしますか?」

「本気で言ってる?」

「本気だって言ったらどうしますか?」

 

 そう言って恵は今までに見たこともない顔をしていた。

 それはまるで何かを企んでいるような顔だった。


「別にいいとは思うけど・・・・・・何のために?」

「それは、もちろん、宗一君にお願いしたいことがあるからですよ」


 少し恥ずかしそうにそう言った恵は顔を赤くしていた。

 なんか、キャラ変わりすぎじゃないですかね。

 恵ってこんなに積極的だったっけ・・・・・・。


「てことは、今から敵同士になるけどいいか?」

「あ、確かに・・・・・・せっかく、勉強を教えてあげるために宗一君のいえに押しかけたのに、敵同士になるってことは教えれませんね。でも・・・・・・背に腹は変えられません。私は宗一君の敵になります」


 どうやら、よほど俺にお願いしたいことがあるらしい。

 恵の決意は固そうだった。


「分かった。じゃあ、別々に勉強するか」

「そうですね。でも、分からないことがあったら教えますから。遠慮せずに聞いてください」


 敵同士と言ったものの、俺が分からないと俺分からないところがあれば恵は丁寧に分かりやすく教えてくれた。

 さすがは響と修也に次いで頭がよかっただけはあるなと俺は感心してしまった。

 それから、俺たちはお昼になるまで真面目に勉強をした。

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