第25話 放課後の勉強会
そして、放課後。
修也と勉強をするため俺は図書室に向かった。
図書室に入ると、いつものように貸し出しカウンターには恵が座っていた。
俺は見上げた恵は優しく微笑んだ。
「宗一君。いらっしゃい」
「恵。ごめん。気づかなくて」
「いえ、謝らないでください。私も何も言いませんでしたから。その、私の方こそごめんなさい」
そう言って、恵はテーブルに頭をつけた。
「私はいつも柏君に助けてもらってばっかりですね」
「そんなことないって」
「私は宗一君にたくさん助けてもらってます。それなのに、一歩的に別れを告げるようなことをして申し訳ありませんでした。それに避けるような態度も」
「それ、ずっと気になってたんだけど、俺、恵に嫌われるようなことした?それなら、謝る。ごめん」
「宗一君は何も悪くありません」
「じゃあ、何で・・・・・・」
「それは、自分に自信が持てなかったからですかね」
「え?」
「ずっと、思ってました。私みたいな人が宗一君の隣にいてもいいのだろうかって。私なんかよりも、もっと素敵な人が宗一君の隣にはいるべきだって。だから・・・・・・別れようって思ったんです。でも、今はそれを後悔してます」
「え、それって・・・・・・?」
「離れて気がつくことってありますよね?」
恵は目に涙を浮かべて微笑んだ。
それって・・・・・・。
どういった真意で恵がその言葉を言ったのか正確には分からないが、つまりはそういうことだと思うのは自惚なのだろうか。
「しんみりしちゃいましたね。ところで今日はどうしてこちらへ?」
涙を拭った恵にそう言われて図書室に来た本来の目的を思い出した。
「ああ、そうだった。修也に勉強を教えてもらおうと思ってな」
「そういうことでしたか。来週にはテストがありませもんね」
「恵も頭いいもんな」
「そういえば、宗一君は頭の方はそんなにでしたね」
そう言って恵はクスクスと笑った。
「バカにしてるだろ?」
「してませんよ」
「いや、絶対にしてる」
「してませんってば!」
「ふっ、なんだか懐かしいなこのやりとり」
「ですね。昔、よくやりましたね」
「恵とまたこうして笑い合える日が来るとは思ってなかったよ」
「これからは今まで通り宗一君と話しますね」
「個人的にはもう少し感情を表に出してほしい、とか思ってたりして・・・・・・」
「が、頑張ります」
恵がボソッとそう呟いたのを俺は聞き逃さなかった。
「ほら、待たせてるんでしょ。早く行ったほうがいいんじゃないですか?」
「ああ、そうだな。それじゃあ、またな」
「はい。また」
可愛らしく手を振る恵に手を振りかえし、俺は修也の待つテーブルに向かった。
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