第22話 恵の悩み解決?
あれから、一週間が経った。
恵と友達になる宣言をした響はというと、今日も今日とて恵の教室に行って一緒にご飯を食べてるようだった。
「そんなに気になるなら様子見に行ってきたらどうだ?」
俺がそわそわしていると、渉がニヤッと笑って言う。
「うっせぇ、トイレに行きたいだけだ」
「なら、なおさら行ってこいよ」
大爆笑してる渉を横目に俺は先から立ち上がり教室を後にした。
もちろん、向かう先はトイレ、ではなく恵の教室だった。
恵のいる教室に到着して、中の様子を伺った。
「ふふふ、そんなことがあったんですか?」
「そうなんだよ〜。柏君って意外とうぶだよね〜」
「そういえば、宗一君に『あ〜ん』をやったことはなかったかもしれません」
おいおい!?
どんな話をしているかと思って聞き耳を立ててみれば、めちゃくちゃ恥ずかしいこと言われてるじゃねぇか!?
響のやつ何話してんだよ・・・・・・。
「えー、そうなんだ〜。今度やってみれば?」
「む、無理ですよ。恥ずかしいです・・・・・・それに私にはもうそんな資格ないですから」
「資格なんて柏君を好きっていう気持ちがあればそれで十分じゃない?恵ちゃん、まだ柏君のこと好きなんでしょ?」
「そ、それは・・・・・・」
恵は言葉に詰まり、徐々に顔が赤くなっていった。
「もう、その顔が物語ってるよね〜」
「も、もぅ、からかわないでください・・・・・・」
「ここにもライバルがいたか〜。負けないよ?」
「だから、私は・・・・・・」
俺は何だか聞いてはいけないものを聞いたような気がする。
それにしても恵のやつ。変わったな。
昔のいつも無表情だった恵は今は見る影もなくなっていた。
可愛らしい笑顔を見せたり、頬を赤くして恥じらったり、いろんな表情をコロコロと変えて見せていた。
結果的に、響に任せて正解だったみたいだな。
それが、分かって俺は安心すると自分の教室に戻ることにした。
「どうだった?」
「何のことだ?」
教室に戻ると渉がニヤニヤと笑いながら近づいてきた。
「またまた〜。見に行ってきたんだろう」
全て分かっている上で、からかうように言う渉に俺は開き直った。
「そうだよ。悪いかよ」
「い〜や。悪くねぇよ。で、どうだったんだ?」
「ああ、仲良さそうだったよ」
「九条さんに任せて正解だったみたいだな」
「そうだな。後で、お礼言っとくよ」
「お礼なら、ラブコメの新刊でいいわよ?」
「く、九条さん。いつの間に・・・・・・」
後ろを振り向くと笑顔の響が俺を見下ろしていた。
「じゃあ、後は2人でどうぞ〜」と言うと渉は自分の席に戻っていってしまった。
「それでいつ買いに行く?」
「何を?」
「ラブコメの新刊に決まってるじゃん!」
「まずは、お礼を言わせてくれ」
「いいよ〜。私がやりたくてやったことだし。恵ちゃんとも友達になれたし」
「楽しそうに話してたもんな」
そう言って、俺はしまったと思った。
しかし、時すでに遅し。
響はニヤーっと笑って俺をからかう体制に入った。
「あれ〜?私と恵ちゃんが仲良くなったっていったっけ?」
「そ、それは・・・・・・」
「もしかして〜?覗き見してた?」
「・・・・・・」
「あはは、バレてないと思ってたの?」
「え?」
「柏君がいるの分かってたよ」
「本当に?」
「うん。まぁ、気づいてたのは私だけだろうけどね〜」
まさか響に気づかれていたと・・・・・・。
ますます恥ずかしくなる俺。
そんな俺をよそに響はラブコメんの新刊本のことを考えているようだった。
「それでいつ行く〜?」
「いつでもいいよ」
「じゃあ、明日の放課後に行こうよ!明日欲しいラブコメの新刊が出るんだよね〜!」
「分かったよ。それよりも、ありがとうな。恵と友達になってくれて。あんなに楽しそうに笑ってるの初めて見た」
「これで柏君に借りが一個返せたかな?」
「借り?」
「何でもない〜!じゃあ、明日の放課後デートね!」
「一緒に本を買いに行くだけな」
「それでも好きな人と行くんだからデートなんだよ!じゃあ、明日楽しみにしてるね〜!」
響は嬉しそうにそう言うと自分の席に戻って行った。
というわけで、恵の件はこれで一件落着かな。
俺はとりあえずホッとした。
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