第21話 恵の悩みの原因

「で、どうだ?分かったか?」

「当たり前だろ。俺を誰だと思ってるんだ?」

「学校一の情報屋だ」

「そういうこと!」


 本を借りて教室に帰ってきた俺は、渉に事情を話して、恵のことを調べてもらった。

 そして、放課後。

 渉が午後の間に調べてくれたことを報告してくれることになっていた。

 短時間で情報を集めるあたり、さすが渉といったところだ。


「結論から言うと、西野さんはクラスメイトから避けられてるみたいだね」


 そう言って渉がスマホを見せてきた。

 そこには恵がクラスメイトからどう思われているのかが書いてあった。


『西野?ああ、あのいつも無表情の西野かー。あんまりよく知らねぇわ』

『無口美人のことでしょ?何考えてるかよく分かんなくて印象かな〜』

『よく知らないし、興味ない。話しても面白くないんだもん』


 恵のことを何一つ分かってないクラスメイトに腹が立って、恵のことを分かってあげれていない自分自身が情けなくて、俺は机を思いっきり叩いた。


「宗一が怒りたくなる気持ちは分かるけど、場所を考えろよ」


 渉に言われて教室を見渡すと、残っていた生徒がみんな俺のことを見ていた。


「悪い。みんな、何でもないから気にしないでくれ」


 渉はクラスメイトたちにそう呼びかけて、その場を収めてくれた。

 

「九条さんがいなくてよかったな。いたら大騒ぎだったぞ」

「私がどうしたって?」

「九条さん・・・・・・」


 先生に呼ばれて職員最に行っていた九条さんがいつの間にか教室に戻ってきていた。


「まったく、自分を大事にしないとダメだよ?柏君」


 そう言って響は机を叩いた方の俺の手を両手で優しく包み込んだ。そして、撫でるように触ってくる。


「それで、何があったの?」

「九条さんには、関係ないよ・・・・・・」

「それを決めるのは私。まぁ、柏君が苦しんでる時点で私に関係あるんだけどね」

「なんで・・・・・・?」

「なんで? 言わなきゃ分かんない? そんなの柏君のことが好きだからに決まってるじゃん。好きな人が困ってたら助ける。好きな人が苦しんでたら手を差し伸べる。柏君だってそうでしょ?」

「それは・・・・・・」


 響にそう言われて、言い返せなかった。

 なぜなら、響の言った通りだったから。


「だから、話して。私に協力できることだったら何でもするから」


 そう宣言した響の目は真剣そのものだった。

 まったく、この人はどこまで俺のことを好きなんだよ・・・・・・。

 それが少しむず痒くて、何だか嬉しかった。


「分かったよ。話すよ」


 俺は観念して響に恵のことを伝えた。俺の元カノだということも含めて。

 話し終えると響はその目に涙を浮かべていた。


「その子、きっと辛い思いをしてるわね」

「そう、だね」

「ねぇ、今回は私に任せてくれない?」

「え?」

「ダメかな?」

「でも・・・・・・」


 響に見つめられ、迷っていると俺たちのやりとりを静かに聞いていた渉が言った。


「いいんじゃないか。任せても。九条さんに何か考えがあるようだし。それにこういうのは、女同士の方がいいだろ」

「そうよ!星君の言う通りよ!だから、私に任せてくれない?」

「分かった。でも、そのかわり九条さんの考えっていうのを教えてもらうからね」


 響は「もちろんだよ」と頷くと高らかに宣言した。


「それはね、私が恵ちゃんと友達になる、だよ!」

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