第20話 恵の悩み
昼休憩、読み終えた本を返すために俺は図書室に向かっていた。
図書室に入り、真っ先に貸し出しカウンターに向かうと浮かない顔の恵が座っていた。
「どうした?そんな浮かない顔して」
「あ、宗一君・・・・・・」
俺を見上げた恵の瞳はどこか虚な感じだった。
普段あまり感情を表に出さない恵がこんな顔をしているのは珍しいな。
少なくとも俺と付き合っていた時には見たことのない表情だった。
「何か悩み事か?」
「あ、いえ、そういうわけでは・・・・・・」
そう言って恵は左斜め下を見た。
まったく、俺の元カノたちは揃いも揃って嘘をつくのが下手なんだよな。
あまり感情を表に出さない恵が嘘をついてる時の仕草がそれだった。
「何か悩みがあるんだろ。言ってみな。ほら、仮にも俺たち付き合ってたわけだし、元カノのとはいえ、悩んでることがあるなら助けたい」
俺がそう言うと恵は目をパチパチとさせて、「ふふ」と小さく笑みをこぼした。
「相変わらずの世話焼きさんなんですね。宗一君は。あの頃と変わってなくて安心しました。ですが、これは私の問題ですので・・・・・・」
「そっか。恵も変わってないな。そうやって何でも1人で問題を解決しようとするところ。少しは俺を頼ってくれてもよくない?」
俺が苦笑いを浮かべてそう言うと、恵は「ごめんなさい」と下を向いてしまった。
「謝らないで。俺はただ恵の力になりたいだけだから。言いたくないって言うなら無理に言う必要はないけど、本当に無理になったらちゃんと誰かに助けを求めろよ?1人で解決するには難しいことだってあるだろ?」
「そう、ですね・・・・・・。もし、そうなった時はお願いするかもしれません」
だから、分かりやすいんだって。
俺から本を受け取った恵は左斜め下を向いていた。
その後、俺は先日恵がオススメしてくれた別の小説を借りると図書室を後にした。
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